
止まらない物価高の波は100円ショップにも影響が及んでいます。仕入れ値が100円を超えたため200円や300円で売られるものが増え、販売をやむなく中止した商品も出てきています。
食料品などの販売数減少 輸入物「実質的に倍」
100円ショップ ぴっくあっぷ大山店
三坂護社長
「ビニールの傘が前は100円だった。それがもう原価が100円を超えてしまって。今200円ですよ。実質倍です。これはね、1本売って10円か15円ぐらいしかもうからないです」
年末も止まらない物価高。店内の商品すべて100円という低価格で市場を広げてきた100円ショップにも、その波が押し寄せています。
「苦しいですよね。今100円じゃないものが増えてますから。このあと、100円ショップっていうのが成り立つか分かりませんよね」
こう話すのは、東京・板橋区で25年前から100円ショップとして営業をする「ぴっくあっぷ大山店」。
店内には所狭しと商品が並べられ、地元商店街唯一の100円ショップとして長年愛されてきましたが、今、経営がピンチに陥っているといいます。
「今まで例えば1万種類やっていたのが、1割ぐらい種類が減ってしまっている」
店内の商品点数はおよそ1万点からおよそ9000点に減少。さらに…。
「この辺は冷蔵庫のショーケースが4台ぐらい入っていて、飲料とかデザートとかやっていたんです。それも100円でできていたんです。できていたんですけど、商品(の仕入れ値)が100円を超える物も増えてしまったので、今は雑貨に全部変わって。そこのあめだけやっている状況」
主力商品の一つだった食料品や飲料の販売も、およそ500点からあめ類のみのおよそ20点と大幅に減少。デフレの申し子と言われた100円ショップにも、物価高の波が押し寄せています。
「値上げの案内は日常的に来るので。また上がった、また上がったっていう。下がるものがないので厳しいですね」
原因は、長引く円安による輸送費や原材料費の高騰。商品の仕入れ値が毎月のように値上がりしているといいます。
「こういう輸入物が多いんですけど、以前はこれ8本だったんですよ。今4本で100円。実質的に倍に上がっている」
「(Q.将来的には?)例えば2本になるとかね」
「買い物の楽しみと驚きがあった」が…姉妹店閉店
特に影響が大きいのは輸入品だといいます。
「ここが昔の単価、これが値上げ後の単価」
卸業者から送られてくる仕入れの伝票には、値上がりした商品がずらり。中には仕入れ値96円だったものが103円と、100円の売値を上回っているものもあります。伝票には手書きでこう書かれていました。
「原料高、運賃高、輸入品に関しましても最近の円安状況もあり、やむを得ず値上げを受け入れ、お得意先様に値上げの案内をさせていただくことになりました」
せっけんは2個で仕入れ値83円だったのが、来年3月から2個108円に。しかし、定番商品であるせっけんは客からの要望も多く、取り扱わないわけにはいきません。そのため、次の仕入れからは値上げを行う予定だといいます。
店ではここ数年、200円、300円といった100円を超える商品も増えているといいます。
「店内はほぼ100円ですけど、表の方は100円以外のものが多くて、半分ディスカウントショップ」
値上げによって圧迫される経営。利益を少しでも確保するため、日々の仕入れには頭を悩ませているといいます。
「なるべく安く仕入れることですよね。同じものでも仕入れ先が何社かあるんで、そこを細かく調べて、(安い物を)入れていく。同じ用途(の商品)でも、安いものと高いものとありますから」
さらに電気代を減らすため、3年前に照明をすべてLEDに変更。経営努力により、100円ショップを維持してきたといいます。しかし、もともと2つあった店のうちの1店舗を、経営難により今年7月に閉店させたといいます。
「姉妹店が練馬区にあったんですけど、今年の夏で閉めました」
「全部100円でやっていた店ですからね。その中に買い物の楽しみとか驚きがあったというショップだったと思う。それがすべてが100円ではないっていうふうになってるから、元に戻ることはないんでしょうけども、これ以上、上がらないようにしてほしい」
製造元「無駄な物流費用をかけない」
物価高による値上げの波、製造現場も苦しい状況だといいます。
ロケット石鹸
加藤謙太郎社長
「過去にないぐらい原材料費も上がっておりますし、人件費のほうも過去最高に今が一番上がっているんじゃないかと」
福岡県に本社を構えるロケット石鹸。主力商品は100円ショップで販売するせっけんや液体洗剤など。多くは石油から作られているため、原油価格の高騰が大きな負担になっているといいます。
「原材料費に関しては、数年前から25%ぐらいは上がっている。非常に厳しい」
小売店へは10%から15%の値上げを依頼。しかし、原材料費だけでおよそ25%高くなっているため、残りの10%を負担する形です。
「容量・形状は今まで通り変えずに。正直赤字ではあるんですけど、(洗剤以外の)他の商品を売りながら、トータルで利益が残るように。なんとかそれ以外のところを努力して頑張っています」
一方で、製造拠点が海外にある別の企業は100円の販売価格を維持するため、さまざまな企業努力が。
大手100円ショップ商品の製造元
担当者
「100円という商品を維持するという意味では、例えばごみ袋であれば、枚数を今まで15枚入っていたものを12枚にするとか。(使用感を損なわない範囲で)わずかですけど、少し厚みを減らして、枚数を維持する」
工夫は輸送面でも。
「基本的に空気を運ばないことがすごく大事。どれだけうまくぎっしり詰め込むか、無駄な物流費用をかけない。私たちの商売としては(物価高が)非常に向かい風のように感じるんですけど、自助努力でまだまだ削減できる部分がいくらでもあるので、まずそれをやることが非常に大切」
利用者「スーパー行った時の値段が段違い」
今月、帝国データバンクが発表した全国の倒産件数。それによると、物価高による倒産の11月までの累計が879件と、過去最多だった2024年を上回る見通しとなり、100円ショップの倒産事例も出ているといいます。
三坂社長
「経営ってことを考えれば厳しいですよね。もうギリギリ、ギリギリのとこです。だからやれる限りは何とかね、やっていこうと思っています」
100円ショップを直撃する物価高。地域密着を掲げているため、100円以上になったとしても、客からのリクエスト品を増やすなどして、客離れを防いでいるといいます。
「前はこういうのやっていなかったんだけど『値上がりしてもうやれないんですよ』というと、値上がりしてもいいからやってよって」
店の利用者はこのように話します。
「普通のスーパーに行った時の値段が段違いに値上がりしていますので、このお店(100円ショップ)の存在はすごくありがたいと感じてます」
「最近だとあんまり100円で買えるものが少ないので、学生の私だとすごく助かります」
三坂社長
「お店として存続していかなきゃいけないので、お客様が必要としているものは置いとかなければいけない。苦しいですよね。今後、100円ショップっていうのが成り立つかどうか分かりません」
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年12月26日放送分より)
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