
今年は、日本の食卓に欠かせない魚を巡って、様々な異変があった。記録的な豊漁の海産物がある一方、歴史的な不漁となったものもあった。
漁業に異変 記録的な豊漁
今年、相次いだ魚の異変。背景の一つとして注目されているのが、黒潮の大蛇行の終息だ。
黒潮大蛇行は、日本の南岸を流れる黒潮が、紀伊半島の辺りから南に蛇行する現象である。2017年に発生し、今年4月まで続いた。気象庁と海上保安庁は8月、過去最長となる7年9カ月続いた黒潮大蛇行が終息したと発表した。
大蛇行が終わるとどうなるのか。海の温度や潮の流れ、さらに漁場の位置が変わり、取れる魚にも影響が出ている可能性がある。
例えば秋の味覚のサンマ。先月30日までの全国の水揚げ量は6万1269トンで、去年に比べて約6割増となった。しかも、海流の変化で餌(えさ)のプランクトンも多くなったため、サイズが大きく、脂の乗りも良いということで、「奇跡のサンマ」と呼ばれた。
また、北海道から三陸沖では、スルメイカが記録的な豊漁となった。スルメイカは水産庁が漁獲枠を定めているが、今年の最終的な漁獲枠は2万7600トン。当初から4割多く引き上げられた。大蛇行の終息で幼いイカの生存率が上がったためとみられる。漁期の途中で漁獲枠が拡大されたのは、初めてのことだ。
さらに、ウナギの稚魚・シラスウナギも各地で豊漁となった。鹿児島県によると、去年12月から今年3月末までの漁獲量は、約2490キロ。34年ぶりに2000キロを超えた。黒潮大蛇行が終息に向かい、黒潮の流れが日本沿岸に近づいたことから、シラスウナギが接岸しやすくなったためとみられている。
カキ、ホタテ、秋サケは大打撃
豊漁に湧く港がある一方、不漁という厳しい現実に直面している現場もある。原因の一つとされているのが、日本近海の海面水温の上昇だ。
気象庁によると、2024年までの100年間で、日本近海の平均海面水温は1.33℃上昇した。この上昇率は、世界平均の2倍以上だという。
水温の上昇は、各地で深刻な影響をもたらしている。
全国の生産量の8割を占める、瀬戸内海の養殖カキは非常にダメージを受けている。広島県東広島市などの海では今年、6割~9割が大量死した。そのため、歳暮やふるさと納税の返礼品にまで影響が出ている。
また、青森県陸奥湾の養殖ホタテは、県などによると、去年生まれた新貝は9割以上、今年生まれた稚貝は8割が、水揚げ前に死んでしまったことが分かった。
そして、国内漁獲量の約9割を占める北海道の秋サケも、今年は歴史的な不漁だ。北海道によると、10日現在の今年の漁獲数は、去年の同時期に比べて6割強も減少。2003年の10分の1まで落ち込んでいるという。また、その影響でイクラも高騰している。
2026年は?分岐点の年か
では来年「ニッポンの魚」はどうなるのだろうか。
水産研究・教育機構 底魚資源部副部長の木所英昭さんは「黒潮大蛇行の終息などが、一時的な現象なのか。来年は『ニッポンの魚』を占う、分岐点の年になるだろう」と話している。
また、サンマとスルメイカは「来年も今年以上に取れる状況が続けば、今後も漁獲量が増えていく可能性が高い」としている。
一方で、今年、歴史的な不漁だった北海道の秋サケは、ここ数年、高水温が続き、稚魚の生存率が低くなっているため、今後数年で回復する見込みは低いという。
また、瀬戸内海の養殖カキや、陸奥湾の養殖ホタテも、今後も水温上昇による被害を受ける可能性が、より高くなっていると分析している。
そして、日本近海の海面水温が上昇する中、「新たな魚の産地」が生まれているともいう。
代表例として木所さんは、近年、新潟県で漁獲量が増えてきた「ワニエソ」や、富山県の「シイラ」を挙げている。これらはいずれも、これまで市場価値が低い「未利用魚」「低利用魚」とされてきたが、今後、地域の新たな特産品になる可能性もある、ということだ。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年12月26日放送分より)
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