タイでレアアース採掘の鉱害か 重金属が川に? ミャンマーと国境またいでトラブル
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 スマートフォンや自動車の製造に欠かせない重要鉱物・レアアースを巡り、世界で争奪戦が起きています。そんななか、タイではレアアースの採掘が原因とみられる深刻な鉱害被害が起きていました。

【画像】川は濁り釣った魚はコブがある奇形 因果関係は不明も

因果関係不明も奇形魚出現

「濁りが消えない」コック川
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 カメラが向かったのは、タイ北部のミャンマーとの国境に位置するタトン。この町を流れるコック川に異変が起きていました。

 おととしの9月ごろから川の濁りが消えないというのです。

地元住民
「以前は泳ぐこともできました。心配です。川の水は使わないし、地元の野菜も買わないようにしています」

タトン地区 ブンロード・コンケオ区長
「これほど濁ったことはありません。水に触れるとかゆみを訴える人が出たので、当局に水質調査を要請しました」

川で釣れたコブが見られる奇形魚
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 去年3月以降、現地当局がコック川の水質を調査したところ、基準値を超えるヒ素や鉛などの有害物質が検出されました。

 因果関係は不明ですが、川で釣れた魚にコブが見られるなど異常事態が続いているといいます。

「作物の見た目が以前ほど良くない」
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 周辺ではオクラなど農作物も栽培されていますが、農家からは生育不良を訴える声が聞かれました。

オクラ農家
「理由は分かりませんが、作物の見た目が以前ほど良くありません。水質汚染の報道があってから価格も下落しました。売り上げは3割減りました」

 住民が疑いの目を向けているのが隣国ミャンマーです。

重金属が川に?法規制訴え

タイ北部の国境から約25キロの位置に2カ所のレアアース鉱山
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 ミャンマーの人権団体によると、タイ北部の国境からおよそ25キロの位置に2カ所のレアアース鉱山があり、3年前から採掘が行われているといいます。

シャン人権基金 サイ・ハク・ジェト氏
「汚染の原因は複数考えられますが、採掘で出た廃棄物が川に流入している可能性が高いと考えられます」

 仮にレアアース鉱山の採掘が水質汚染に関係しているとしたら、どのような原因が考えられるのでしょうか?

東京大学 生産技術研究所 岡部徹教授
「レアアースの場合は、精錬手法や採掘手法によって環境被害は異なるでしょうが、このミャンマーの場合はおそらく土壌流出とか(レアアース鉱体に)酸を注入するので、それによって溶け出た重金属による汚染。そういう可能性はあるが、ケース・バイ・ケースです」

レアアースを直接抽出する方法
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 ミャンマーでは地中に打ち込んだパイプに酸性の薬剤を流し込み、レアアースを含む鉱体からレアアースを直接抽出する方法が一般的です。

 この採掘法の場合、木々とともに地表面を取り除くので、土壌そのものが流出したり、薬剤によってレアアース以外の物質が流出したりします。

 つまりレアアースそのものではなく、採掘に伴って流れ出た土壌の中にヒ素などの有害物質が含まれていた可能性があるのです。

アメリカのレアアース鉱山
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 世界中で争奪戦が繰り広げられているレアアース。各国で定められた環境基準を守りつつ、採掘や精錬をするには莫大(ばくだい)なコストがかかります。

 しかし、軍事政権下のミャンマーは環境基準が厳しくないため、レアアースが安く採掘でき、世界3位の産出国となっているのです。

 人権団体は去年8月、ミャンマーで新たに19カ所の採掘場が明らかになったと発表しています。

タイのNGO団体代表
ピアンポーン・ディーテ代表

「レアアース鉱山は急速に拡大します。研究者によれば、各鉱山の採掘可能期間はわずか3年程度と推定され、その後、別の山地へ移動するのです。重要鉱物の採取や採掘が責任ある鉱山や責任ある供給源から行われることを保証するには、地球規模の法規制が必要だと思います」

(2026年1月21日放送分より)

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