
伝統の「和」と最先端のアートが出会う時。世界のラグジュアリーブランドをも魅了した「ドライ盆栽」。生きていた盆栽の“美”をそのまま閉じ込めた、新感覚の盆栽アートの世界をのぞいてみませんか。
世界が認めた「ドライ盆栽」とは
寒い冬に咲き誇る満開の桜。美しい青色の葉が生い茂る作品に、鉢ではなく支柱に固定されて宙に浮く盆栽など。これらはすべて、ロールスロイス、そしてバーニーズニューヨークといった世界的なブランドが認めた日本の芸術。それが「ドライ盆栽」です。
フレームに宙づりにされたクロマツのドライ盆栽は、値段が110万円です。そこには、奇をてらっただけではない、本物の盆栽から引き継がれた和のエッセンスがありました。
伺ったのは千葉県にある盆栽作家・藤田茂男さんのアトリエです。藤田さんは、盆栽アーティストとして30年以上活躍し、今ドライ盆栽でバズっているんです。
藤田さん
「早速、ドライ盆栽を作ってみましょうか」
紀真耶アナウンサー
「作れるんですか?」
藤田さん
「そういう体験レッスンもやっていますので」
世界が注目するドライ盆栽。その正体を突き止めるため、アトリエを調査します。
紀アナ
「中にも立派な作品が。ものすごい数ですね」
「これはちょっと龍みたい。これも全部ドライ盆栽なんですか?」
藤田さん
「ドライ盆栽です」
紀アナ
「すごくきれいな青ですね、いろんな青が混ざっている」
鮮やかな青や暗い青といった葉が彩るクロマツの木や、春を待たずして、きれいなピンクの花を咲かせる桜。これらすべてがドライ盆栽です。
紀アナ
「大小さまざまな作品がありますけれども、これらは大体おいくらくらいで買えるんですか?」
藤田さん
「この作品は110万円になります」
これまでの盆栽とは違い、奇抜なスタイルが目を引くドライ盆栽。世界から注目されるきっかけは何だったのでしょうか。
藤田さん
「銀座のギャラリーに、ロールスロイスの関係者に来ていただいて、うちのドライ盆栽を気に入ってもらって、全国へ回りましょうという流れになりました」
「バーニーズニューヨークからもお声かけいただいて、全国5都市回らせてもらって、特別販売会などをやったりとか。最近ではイタリア・ミラノに去年の春行かせていただいて、ドライ盆栽の展示が始まっています。それと、個人のお客様だと世界各国に送っています。ヨーロッパ、アメリカ、アジア」
枯れ木がよみがえる?
いまや世界で人気となっているドライ盆栽ですが、実はリアルな盆栽で作られた美を受け継いでいるのだといいます。
藤田さん
「まず枯れてきれいに加工された木本体が必要です」
もとになるのは、実際に使われていた本物の盆栽の枯れ木です。丹精込めて仕上げた曲線を枯れた後も生かすべく、ツヤを失わせず乾燥。洗って殺菌もするので、1週間以上かかります。
藤田さん
「木を器に固定していきましょう。とめる場所が決まったら、グルーガンを持ちましょう」
紀アナ
「グルーガンって盆栽の作業の時に絶対出てこないものですよね」
乾燥させた幹は枯れてしまって根を張らないので、樹脂で固めるグルーガンを使って鉢に接着します。倒れないよう支えになる石も固定します。
藤田さん
「葉っぱが黄色、赤、緑と用意しておきました」
紀アナ
「せっかくだから混ぜたいですよね」
今回は、緑と紅葉が同時に楽しめる盆栽を作ることにしました。幹とともに、ここにも生きている時の美を保つ工夫があります。まずは美しいヒノキの仲間の葉を厳選。さらに美しい状態を長持ちさせる特殊な塗料で色付けします。
紀アナ
「これは難しい!」
藤田さん
「困ったら僕がやります」
盆栽と取り付ける枝がくっつくように押さえてその部分を接着。後は鉢にコケを敷き詰めれば完成です。
紀アナウンサーのドライ盆栽第一号が誕生しました。作品名はどうするのでしょうか。
紀アナ
「『初日の出』。おめでたい感じで。初めて作ったし、この赤い所が日が出てきている感じで」
藤田さん
「良いと思います!」
紀アナ
「盆栽というと剪定(せんてい)したりという作業がメインなのかと思ったら、ドライ盆栽は全然違いましたね!」
藤田さん
「製作キットがありますので、簡単におうちで作ることもできます」
「何千個、何万個と作ってきているんですけど、飽きない」
紀アナ
「これは同じものってないじゃないですか。だから、どんどん作りたくなる気がしますね。子どもとも家族みんなで楽しめそうで良いですね」
藤田さんが厳選した盆栽が使われているミニサイズの盆栽もあります。
藤田さん
「手のひらサイズのものは、2万円くらいからになりますね」
紀アナ
「家に置いてあるとワンポイントになりそうですね」
日本の伝統芸術である盆栽の美的感覚があってこそ、ドライ盆栽は成り立っていると藤田さんは語ります。
藤田さん
「盆栽の良さを知っていないと、ドライ盆栽も美しく仕上げきれない。これは本当に思います。例えば鉢と木のバランスですとか、葉っぱをつけるときの横の出し方とか。伝統的な盆栽を知っていないと、完成度は上げきれないですよね」
2016年に発表したドライ盆栽は、ホテルやレストランでの展示や百貨店などでの販売を経て、世界へ広がりました。長年の研究で手法も発達してきました。
藤田さん
「いろいろな手法があってプリザーブドの葉とか、ドライ化した葉とか。アーティフィシャル(造花)も使います。桜とか赤い実とかは造花を使っております」
暮らしに溶け込む新しい盆栽
生の盆栽では、海外に持って行くと枯れるトラブルなどが多かったのですが、ドライならその心配がなくなるというメリットもあります。
藤田さん
「国によっては気候がさまざまですよね。ドライ盆栽は、生きていない、育てる必要がないので、どんな環境・気候でも、フィットする。そこも人気の理由かもしれないですね」
「ドライ盆栽というのは、オブジェ、アートとして、すぐに簡単に生活に取り入れられると思います」
ドライ盆栽のある生活について、実際に購入した方にも聞きました。
神奈川県に住む大坂屋奈智子さんは、2年ほど前にドライ盆栽を購入したといいます。
大坂屋さん
「盆栽は手入れが大変ですけれども、水やりとか枝の手入れとかそういうことがなくて。飾っているだけで一年中楽しめます。長期間留守にしてもなんの心配もなく、栄養剤を指す必要もなく、四季関係なくここに飾っていると皆様にも好評です」
藤田さん
「最近では、私のところに習いにきて広めてくれている人もいますし。どんどんと、これからドライ盆栽が波及していくというのが目に見えたところですね」
(2026年1月20日放送分より)
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