
深刻な水不足に悩まされているのは、伊勢神宮の内宮を流れる「五十鈴川」です。地元では「神聖な川」とも呼ばれる歴史ある清流で、何が起きているのでしょうか。
【画像】地元の人たちが「神聖」と呼ぶ「五十鈴川」 一週間前の水位は?
「神聖な川」渇水に
地元の住民
「川曳とか、式年遷宮の時にして、神聖な場所」
地元の住民
「渡ることができるくらいカラカラになって。景色も変わってくるし寂しい」
地元の人たちが「神聖」と呼ぶ川が今、渇水の危機にあります。
広い川幅に水がわずかしか残っていないのは、三重県伊勢市を流れる五十鈴川です。
同じ場所で、一週間ほど前に撮影された写真です。水が確認できないほど、干上がっているのが分かります。
一級河川の五十鈴川は伊勢湾の河口までおよそ20キロ続き、その上流は伊勢神宮の内宮を通っています。
2000年以上の歴史を誇るとされる伊勢神宮。
五十鈴川は、「御裳濯川」とも呼ばれ、「倭姫命がすそを濯いだ」ことから名付けられたと伝えられます。
この清流で参拝者は手を洗い、心身を清めるのが習わしです。
渇水が起きているのは、伊勢神宮の下流側、浦田橋の辺りです。この橋からの景色を比べてみます。
3年前の2023年9月には、広い範囲で水が確認できます。ところが去年11月には水が減り、川底が目立っています。今月27日はさらに水位が下がっていて、わずかに水たまりが残っている状況です。
「神聖な川」として親しまれてきた水辺に、何が起きているのでしょうか?
五十鈴川を管理する三重県伊勢建設事務所の職員とともに、干上がった川底へ下りてみます。
三重県伊勢建設事務所
廣昌史管理課長
「このように歩けるほど水が少ない状況。本当に少ない。この辺りは常に水がある状態だが、今はここまで来られる状況。早く雨が降って、元通りの水量が復活することを願っている」
渇水の状況を上空から確認するため、取材班は27日、ドローンを飛ばして川を撮影。
水位が下がり、カラカラに干上がった川。原因は、今年に入ってからの雨不足です。
周辺では1月と2月の雨量が合わせて38.5ミリで、平年の24%しかありません。
廣管理課長
「例年、冬場は雨が少なく水位が下がるが、今年2月は過去5年の平均と比較して約3センチ水位が低い。この五十鈴川は上流にダムがないので、水量の調整できない状況。自然頼み」
桜の名所に不安
「神聖な川」の渇水は、観光への影響も懸念されています。
花見の名所としても知られる五十鈴川。春には、川沿いに色鮮やかな桜が咲き誇ります。清流を挟むように、歴史ある町並みと桜並木が続きます。
観光の繁忙期を前に、すでにこれまでと変化が…。
伊勢神宮の周辺を回る人力車。商店街を抜けて、五十鈴川沿いの景色を眺めるのが人気のコースです。ところが…。
伊勢人力車 竜笑 前田竜さん
「これが五十鈴川なんですが、見てください。どうですか、水がないんです」
人力車から川を見ると、清流の面影はありません。
これは3年前の2023年の夏の映像です。川幅いっぱいに、水が見えているのが分かります。
この清流の奥には桜並木があり、自然の風情を感じられるのが魅力でした。ところが、27日は観光客も驚きを隠せないほどの水位に。
岐阜からの観光客
「五十鈴川で清めるというイメージなので、水はいつも流れているイメージだが少ない気がする」
「こういう光景を想像していなかったので、びっくり」
車夫が感じた異変
地元出身の車夫・前田さんは、幼いころから親しんできた清流の異変を心配しています。
「これが当時の写真。式年遷宮の行事」
伊勢神宮で、20年に一度の行事「式年遷宮」で行われた「川曳」です。
「綱を引っ張って内宮まで行く『川曳』という行事。本当に歴史のある非常に重要な川だと思う」
1993年の夏には、腰が浸かるほどの水位がありました。
「(水深)1メートル弱くらいある場所もあった。それに比べて今の状況は、かなり少ないのが分かる。この風景を見ると寂しさもあって、非常に残念」
渇水が続いていることで、農業への懸念も出ています。
廣管理課長
「五十鈴川を流れる水は、下流域の田畑でも灌漑(かんがい)用水の供給源の役割を担っているので、この状態が長く続くことで影響も懸念される」
五十鈴川の下流域では、春に田植えを控える田んぼが広がっています。
コメ農家 中世古浩紀さん(63)
「こちらが預かって耕作している圃場(ほじょう)」
「コシヒカリ」や「にじのきらめき」などを育てるコメ農家の中世古さんです。
4月10日ごろから田植えを始める予定で、その際に農業用水を田んぼに引き込みます。
「12月の後半から1月2月は雨が少ないので、逆に私たちからすれば、水田をする場合に雨がないほうが圃場に入って作業がやりやすい」
今後については?
「毎年毎年違うのが現状。天気に合わせて私たちは動かせてもらう。合わせるのが農業」
(2026年2月27日放送分より)
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