
日本の伝統工芸品南部鉄器をかたった偽物とみられる商品がネットで販売される被害が相次いでいます。実在する工房の名前を使う巧妙な実態が見えてきました。
職人技が光る南部鉄器
重厚感のある佇まいに、アラレ紋様と呼ばれる特徴的な柄。熟練の職人技が光る南部鉄器です。
1500℃の溶けた鉄を型に流し込み固める鋳造(ちゅうぞう)と言われる伝統的な技法で作られています。独り立ちするには10年の修業が必要ともいわれています。
茨城県から来た夫婦
「鉄の質感は好きですね。ずっしりとした感じ」
「ビジュアルが渋くてかっこいい」
南部鉄器を名乗ることができる条件は2つ。南部鉄器の組合に所属していることと、岩手県内で製造した鉄器であることです。
この南部鉄器の偽物とみられる商品が相次いで見つかっています。
ニセ南部鉄器ネット販売か
SNSに表示された販売サイト。「99.9%高純度の鉄」というキャッチコピーが踊ります。「いくつもの工程を経て造られる南部鉄器」「170年分の職人の技と想いが詰まっています」ともうたわれています。
しかし、「フライパン」と表記すべき所が「フライべン」と怪しい表記に。価格は一つ6580円です。
実際に購入した人はこう話しました。
購入した 横川マリリンさん
「動画の中で全然焦げ付かない感じに調理されていたのと、あとはブランドが南部鉄器だったので、そこにちょっと引かれてしまった」
「中を開けて説明書に中国語しか書いてないから、素材も南部鉄器では全然ないですし、違うなと」
都内でも。
購入した 清和大学 野呂一郎教授
「こちらが鉄板フライパンですね、南部鉄器のフライパンと触れ込みの商品です」
6880円で購入したというフライパン。表面はツルツルで、南部鉄器の特徴がみられません。フライパンを持ってみると。
野呂教授
「南部鉄器ですから重いはずですよね。南部鉄器というには軽すぎるというのは持ってすぐ分かりました」
ツルツルのフライパンはおよそ670グラム。同じ大きさの南部鉄器なら2.5キロほどするはずです。
商品が入っていた段ボール箱には、「あなたを感じて 南部鉄器の魅力」という、それっぽい言葉が書かれています。しかし、箱に書かれている製造場所は、中国の浙江省。番組が調べると、実在する中国の金属加工メーカーだと分かりました。
老舗工房写真 勝手に改変
販売サイトでは“OIGEN”が製造したと書かれています。OIGENは江戸時代後期、今から174年前に創業した及源鋳造が名乗るブランド名です。
経営者とおぼしき人物が、ツルツルのフライパンと一緒に写る画像もあります。
番組は、このフライパンを借りて、南部鉄器のふるさと、岩手県奥州市に向かいました。
及源鋳造の遠藤敬蔵工場長に、このフライパンを見てもらいました。
遠藤工場長
「これを南部鉄器と言って売られること自体がちょっとびっくりですね。南部鉄器は鋳鉄が素材なので、これは鉄板ですからね。同じ鉄ですけど、全く作りが違うんです」
ツルツルしているのは鉄板をたたいてのばす鍛造(たんぞう)と呼ばれる製法の特徴です。
南部鉄器はザラザラした表面が特徴ですが、偽物と思われる商品はツルツルとした表面で光沢があります。
「(南部鉄器は)900年を超える歴史があります。南部鉄器というブランドだけをちょっと持ち出して、全く別なものにあてがうのは非常に残念なこと」
販売サイトに載っていたツルツルのフライパンのオブジェと一緒に写る人物の画像について、及源鋳造の及川久仁子社長に尋ねてみると。
及川社長
「私じゃないですか、これ」
「(Q.写真に写っているフライパンは自社製ではないんですか?)全く違う、こんなの違いますね。これは鉄鋳物じゃないので」
顔はぼかされていますが、着ている服と背丈から写っているのは自分のようだといいます。写真を撮った場所に案内してもらうと。
「ここですね。この鉄瓶がいつの間にかあの変な鍋に変わって」
そこにあったのは大きな鉄瓶のオブジェ。フライパンのオブジェではありません。偽商品のサイトに載っている写真と比べると、台座と特徴的な白い壁は一致していますが、オブジェが鉄瓶からツルツルのフライパンになっています。
「許せないし、及源鋳造のことをもうどうでもいいって。私たちのことももうないがしろにして、商いの道としてはアウトじゃないですかね」
番組が調べると、南部鉄器の偽物とみられる商品を扱っているサイトは3つありました。組合にも聞いてみると、こう答えました。
水沢鋳物工業協同組合 戸田努事務局長
「鍛造製品と鋳造製品なので、もう見る感じ南部鉄器の製法で作られたフライパンではないことは断言できます」
「南部鉄器のフライパンにはない薄さです。この該当する鉄板のような薄さまでにはできないです」
直撃に釈明「習近平といる」
番組は、ニセ南部鉄器の製造業者と2つの販売サイトに問い合わせてみました。
中国浙江省の製造メーカー
「大変申し訳ございません。ただいま電話に出ることができません」
製造メーカーに電話をかけても、「電話に出ることができません」と自動音声が流れるだけです。偽物を売る販売サイトの一つに問い合わせてみると。
番組スタッフ
「もしもし」
販売サイトA
「何の用だ」
番組スタッフ
「こんにちは。A株式会社でしょうか」
販売サイトA
「何の会社」
番組スタッフ
「A株式会社でしょうか」
販売サイトA
「お前に関係ないだろ。俺は中央政府の幹部だ」
番組スタッフ
「すみません。代表につないでいただきたいのですが」
販売サイトA
「俺は習近平と一緒にいる」
こちらの質問に答えることなく、「習近平国家主席と一緒にいる」と言い放ち、電話を切られてしまいました。
伝統刃物も被害
南部鉄器のほか、800年もの伝統を持ち、世界の三大刃物産地の一つとされる、関の刃物で有名な岐阜県関市も偽物に悩まされていました。
広告ナレーション (ニセ“関刃物”広告動画)
「3年連続で日本の包丁カテゴリーで販売数1位を誇る岐阜県“カンシ”(関市)の包丁がついに“アタイモトゲ”(値下げ)されました。研ぎ直しが不要でダイヤモンドよりも10倍鋭く、一生使ってもさびません。この包丁は700年の歴史を持つ岐阜県“カンシ”(関市)で生産され、極限の鋭さと耐久性で全国に知られています」
自動翻訳のミスなのかナレーションでは岐阜県関市(せきし)のことを“カンシ”、値下げを“アタイモトゲ”と紹介しています。
“研ぎ直し不要”という文字もありますが、関刃物の組合に問い合わせると。
岐阜県関刃物産業連合会 桜田公明事務局長
「摩耗しないということはありえない。どんな包丁も摩耗してきますので、そこを研ぎ直してまた切れ味が良くして使うという、その繰り返しで使っていきます」
関市で製造された包丁とうたっている販売サイトを見ると、刃物職人らしき人物が掲載されています。
「関の包丁メーカーの職人の顔写真をそのまま載せていて、そこの包丁メーカーに連絡したところ、びっくりしていました。もう悪質ですね」
名前を利用された組合は怒りを隠せません。
「長い年月をかけてブランドを築き上げたのを、勝手にその利益をもうけるために、その名前だけを使うことに対して、すごい憤りを感じますね」
(2026年3月6日放送分より)
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