
イランをめぐる情勢は一段と緊迫の度合いを増し、石油関連施設や、海水を淡水化する施設への攻撃の応酬に発展しています。原油の先物価格が急騰、日経平均株価は一時4000円を超える下げ幅となりました。こうした中、イランでは殺害されたハメネイ師の後継に、反米強硬派とされる次男が選ばれ、トランプ大統領はひと言「気に入らない」とこき下ろしました。
【画像】“株価急落”“原油急騰”インフラ攻撃の応酬…イラン攻撃“長期化”の恐れ
インフラ攻撃の応酬 原油急騰

テヘランの街は文字通り“火の海”と化しました。赤新月社などによると、イスラエルはこの週末、イラン国内の石油精製施設を含む30カ所以上を攻撃しました。一夜明けても…。

CNN プライトゲン上席特派員
「まるで黙示録のようです。昨晩に爆撃を受けたシャーラン石油貯蔵施設に来ています。空爆は1時間半ほど続き、地響きのような爆発音が響きました。破壊された貯蔵タンクの一部から、まだ炎が上がっています」
トラック運転手
「最初のミサイルで1発、その後、2発連続で撃たれて、その前に周辺にも1発当たった。ガソリンが住宅街に流れ込んで、路上の車は焼けてしまった」

イラン赤新月社 コウリーヴァンド代表
「敵は軍事施設だけが攻撃対象と言っていたが、断じてそうでない。現時点までに9670以上の民間地区が攻撃された」

CNN プライトゲン上席特派員
「今朝、テヘランでは雨が降りました。こちらの白い車には油を吸った雨水が付いていて、このように指も真っ黒に。今のところ、行列はそれほど長くなく、当局は別の地域から燃料を輸送して対応するとしていますが、住民の不安な様子がひしひしと伝わってきます」
拡大の一途を辿る戦火。不安はマーケットにも広がりました。イラン攻撃前は60ドル台だった原油先物は一時、1バレル119ドルを超えました。100ドルを超えるのはウクライナ侵攻後の2022年7月以来です。
トランプ大統領も火消しに追われました。

アメリカ トランプ大統領
(Q.ガソリン価格高騰については)
「何だって?」
(Q.ガソリン価格高騰への懸念は)
「していない。今回の作戦は本来、ちょっとした遠出だが、47年もの間、どの大統領も実行する度胸がなかった」
仮に120ドルを超え、政府が対応しない場合には、ガソリン価格は282円になるという試算もあります。

中東情勢の緊迫を受けて、9日の日経平均株価は一時4200円以上も下落しました。終値は先週末から2800円以上安くなり、過去3番目の下落幅となりました。
日本経済にも影を落とす中、政府は支援策の検討に乗り出しています。

高市早苗総理大臣
「まずガソリン・軽油、少しタイムラグはありますけれど、電気料金・ガス料金なども含めて、これからの見通し、政府として即座に打つべき対策などについて、先週前半から検討に入っております」
今回の石油施設の攻撃をめぐっては、アメリカの誤算も報じられています。イスラエルはアメリカに対して、石油施設の攻撃を事前に通告していたとされていますが…。

アメリカ政府高官(Axios)
「我々はやめておいた方がいいと思った。大統領は石油施設への攻撃に難色を示した。石油を燃やさずに残したいと考えていた。これでは国民がガソリン価格の高騰を連想してしまう」
記事では、アメリカとイスラエルとの間に“重大な相違がある”とも伝えています。
淡水化施設も標的 人道危機の懸念

週末にもう1つ、危険な兆候が見られました。ターゲットは渇いた土地に欠かせない“水”です。イランのゲシュム島にある、海水を淡水に変える施設が攻撃を受けたといいます。イランのアラグチ外相は「30の集落の水の供給に支障が生じた。重大な結果を招きかねない危険な行動で、前例を作ったのはアメリカだ」と批判しました。

すぐに対岸バーレーンの淡水化施設も被害を受けました。バーレーン政府はイランの仕業だと主張しています。湾岸諸国は、淡水化施設から作られる飲み水に大きく依存しています。
慶應義塾大学 田中浩一郎教授
「(淡水化施設が)失われると、そこに展開している軍の部隊も撤収を考えざるを得ない。それ以上に、島に住んでいる住民が生活、そして命をつなぐ上での水がなくなってしまう。とてつもない人道危機を生むことになります。互いに攻撃していくと、単なる消耗戦だけではなく、多くの人道的問題を引き起こすことに気が付いてると思います」
ただ、攻撃は止まりません。
最高指導者後継に反米強硬の次男
イラン国営メディア
「専門家会議の多数の票により、モジタバ・ハメネイ師が私たちの親愛なる指導者になりました」

混乱が続く中、後継者に決まったのは、殺害されたハメネイ師の次男、モジタバ師(56)でした。
イラン市民
「父親の後を継いだのは本当によかった。アメリカに屈することはないと確信してます」
「1週間待ちわびていました。ハメネイ師の死去で社会も国民もショックを受けていたので」
若いころから革命防衛隊に入り、イラン・イラク戦争にも参加。これまで公職にはついていませんでしたが“陰の実力者”とも呼ばれていました。
CNN プライトゲン上席特派員
「治安機関やイラン国民は、モジタバ師が父親の政策を継続するだろうと考えています」
ただ、度重なる反政府デモを弾圧してきた側でもあるため、市民からは反対の声も上がっています。
イラン市民
「モジタバに死を、モジタバに死を」

後継者の選出過程に関与する姿勢を見せてきた、トランプ大統領。モジタバ師が選ばれた直後、取材に対して「気に入らない」と答えたということです。対立は、一層深まるのでしょうか。
慶應義塾大学 田中浩一郎教授
「最高指導者から『身内が殺されたが、もう血を流すのは十分だ』と、和睦というか停戦にもっていくような形で、軍も承服させるようなことが、彼の名前を使ってできるということ。それで終わるのかというと、アメリカ、特にイスラエルが(イランの)体制を潰すという所に力点を置いていますから、一方的な攻撃だけが続く。2023年のガザで始まった衝突以降、一定期間を経て、一方的にイスラエルが(ミサイルを)撃ちまくってきた。同じようなことがイランでも起きるのではないかと」
