WBCの侍ジャパンでは、挫折を乗り越えた2人のベテランが世界一を目指すチームを引っ張っています。
「すごい集中力」
1次ラウンドの4試合で打率5割!ホームラン2本で6打点はチームトップと絶好調の吉田正尚選手(32)。開幕から4番に座りますが、チーム内には4番を任せられるスラッガーがめじろ押し。なぜ4番が吉田選手なのかの問いに井端弘和監督(50)はこう答えました。
「まず状態が良かった。1番(大谷選手)から流れを組んだ時に、今まずはそこが適任かなと」
指揮官も太鼓判を押す吉田選手の「3つのスゴイ」を紹介します。まずは…。
「彼の打席の集中力は、球界でもNo.1じゃないかな」
井端監督が教えてくれた1つ目は「すごい集中力」です。
1点を争う接戦となった韓国戦でそれは顕著に現れました。1点を追いかける日本は3回、大谷翔平選手(31)と鈴木誠也選手(31)のホームランで逆転に成功します。
続くは吉田選手という場面で、韓国がピッチャーを交代。それでも、初対戦のピッチャーでしたが、甘く入ったカーブをファーストスイングで仕留めてホームラン!
7回には、今度も初対戦の相手から貴重な2点タイムリー!ここもこの打席のファーストスイングでした。
初見のピッチャーを一振りで仕留める「すごい集中力」があるからこそ成せる技です!吉田選手はこう話します。
「短期決戦はどんどん投手が変わる、しっかり対応できるように。イケイケの展開でしたし、甘く入ってきたところを1球で仕留められて良かった」
「すごいフルスイング」
もう一つ、吉田選手を語るうえで外せないのが「すごいフルスイング」です。
身長173センチとプロ野球選手としては小柄ながら、鋭いスイングで豪快なホームランをかっ飛ばす吉田選手。そのスイングの原点となっているのが、メジャー通算最多762本のホームランを放ったレジェンド、バリー・ボンズなんです!
幼少期に目の当たりにした球場外の入り江に飛び込む「スプラッシュヒット」に憧れ、遠くへ飛ばすことを意識するようになったといいます。
ホームランアーティストに魅せられた吉田選手が遠くへ飛ばすため手にしたフルスイング。屈指の飛距離の一方で全身を使うがゆえに腰への負担も大きく、即戦力と期待されたプロ1年目は腰痛に悩まされシーズンの半分を欠場しました。
そんな吉田選手を救ったのが2018年、オリンピック金メダリスト・室伏広治さん(当時43)でした。
吉田選手
「何か自分に得られるものがあるんじゃないかと思いまして。ここに送ればもしかしたら見てくれるんじゃないかということで、手紙で」(2021年)
室伏さんは、その情熱に心を動かされたといいます。
「気を付けたところといえば、上体と股関節の柔軟性。あとは脊椎周りを保護しなければいけないので、大きな筋肉を鍛えるよりも、やはり各体の関節」
そこで伝授したトレーニングの一つが、振り子の振れ幅に注目です。一方の吉田選手は「全然、振り子が振れない」です。
さらに今度は、紙風船!?潰さないように押すことで体幹の強化につながるといいます。
吉田選手
「簡単に見えて、自分がやってみるとなかなか動かしたい部分が動かない。普段じゃ使えない部分にその力が伝わってくるという発見もありまして」
室伏さんへの弟子入りで、フルスイングしてもけがをしない肉体を手に入れた吉田選手は2018年から3年連続で全試合に出場しました。
ルーキー時代から体のボリュームもアップし、いつしかついた愛称は「マッチョマン」。自らがプロデュースした応援グッズもダンベルを模したもので、メジャー1年目のシーズン、アメリカでも定着しました。
「人柄もすごい!」
そして、吉田選手の3つ目のすごいは「人柄もすごい!」です。
第3戦のオーストラリア戦で起死回生の一発を放った吉田選手。60年ぶりの天覧試合でホームランをかっ飛ばし、「令和の長嶋茂雄」だとファンは沸き立ちます。
試合後は観客に深々と最敬礼のお辞儀をして、ファンの心をわしづかみにしました。
開幕前に行ったオリックスとの強化試合の際には相手へ高級寿司の差し入れも!この投稿に古巣のファンたちも大盛り上がりでした。
オリックス球団公式Xから
「正尚がオリックスに差し入れしてくれるのうれしすぎる」
「大号泣、したあと、乱立するミニ正尚みて大爆笑」
2019年からは、公式戦でホームランを一本打つたびに10万円を寄付。3年前からはそれに加えてヒット1本1万円を「国境なき子どもたち」に寄付し、開発途上国で貧困に苦しむ子どもたちを支援しています。
人柄もすごい吉田選手は、コメントもナイスガイでした。
「最後は井端監督が笑顔になれることがベストです」
熱望メジャーから低評価
そして、もう一人のキーマンが侍ジャパン最年長、36歳の菅野智之投手です。
オーストラリア戦では4回無失点と好投。決勝で先発する可能性がある菅野投手は今大会、大きな夢を持って臨んでいました。
「一度も日本一も世界一もなったことがないので、きっとすごい景色が見えるんだろうな」
その野球人生は挫折の連続でした。
さかのぼること15年前、夢だった巨人入りがかなわず1年間の浪人生活を決断します。
プロ入り前から始まっていた茨の道、それでも…。
「長い道のりになると思いますけど、弱音は吐けないです。自分を試されている気がします」(2012年)
翌年、念願かなって巨人に入団した菅野投手。毎年のように勝ち星を積み重ね、「日本最強投手」の名をほしいままにしました。
2020年、菅野投手は満を持してポスティングでのメジャー挑戦を表明。ところが交渉は難航し、巨人残留という結果になりました。
「すごくそれで俺は悔しかったし、自分の評価とかってこんなもんなんだなって」
エースのプライドが踏みにじられました。
まだ見ぬ世界一へ
その後のシーズンで、極度の不振に陥った菅野投手。年齢は30を過ぎ、心にも変化が生じていました。
「『この打者、余裕で抑えてたのにな』とか。『三振、狙ったら取れたのにな』とか。やっぱり考える時ありました」
そんな菅野投手の心に、再び火を灯す人物が現れます。昨シーズン現役を引退した長野久義さん(41)です。
巨人でともに8年プレーした長野さんは、くすぶる菅野投手にある思いを伝えました。
「アメリカで投げたいという智之の気持ちも知っていたので、それはもう頑張れというエールを込めて『智之が(メジャーで)投げている姿を見たい』というのは伝えました」
菅野投手
「まだ自分に夢を見てくれてる人がいる。そういう人たちのために頑張る」
30を過ぎた身体をいじめ抜き、再び夢へ向かって、もがき立ち向かいます。
そして、2024年のオフ、ついにメジャー挑戦の夢をかなえました。
「色々なことがあったなって思いますし。人生を懸ける勝負を、懸けの瞬間だったので。その時は久しぶりに決断したなという気持ちになりますね」
菅野投手の次の夢、それはまだ見たことのない、世界一の光景です。
「この歳で挑戦できるっていうこと自体にやっぱ感謝したいなと思うし、そこにやっぱチャンスだったり、自分の気持ちがある限りは挑戦し続けたい」
(2026年3月12日放送分より)
