
イラン情勢をめぐるガソリン価格の高騰で、政府が、備蓄していた石油を放出します。
備蓄石油の放出で、ガソリン価格下がるでしょうか。
ホルムズ海峡封鎖による、生活への影響についても見ていきます。
【ニュースをわかりやすく】TVerにて羽鳥パネル 見逃し配信中!
■トランプ氏“イラン経済の生命線”石油施設への攻撃示唆
アメリカのトランプ大統領が、自身のSNSで、
「イランの『至宝』であるカーグ島にあるすべての軍事目標を完全に破壊した。しかし節度を持って石油施設は破壊しないことを選択した」と投稿し、アメリカ軍は、機雷やミサイルの保管施設など90以上の軍事目標を攻撃したと発表しました。
一方、トランプ大統領は、
「イランなどがホルムズ海峡における船舶の自由で安全な航行を妨害するようなことがあれば、直ちにこの判断は再検討する」と石油施設の破壊も辞さない考えを示しました。

イランのカーグ島とは、東京・港区とほぼ同じ大きさの島で、ペルシャ湾の北にあります。
島には、滑走路、住宅地域、貯蔵タンク、石油施設などがあり、イランの原油輸出の9割を担っていて、イラン経済の生命線とも呼ばれています。
イランは、1日あたり330万バレルの原油を生産し、世界の原油供給の4.5%を占めています。
カーグ島には、イラン本土から海底パイプラインを通して送られ、保管した後、タンカーで輸出されます。

なぜ島に送るのでしょうか。
島の周囲は水深が非常に深いため、最大10隻の超大型タンカーを同時に収容でき、イラン本土の浅い沿岸水域に近づけないタンカーでも接岸できます。
カーグ島の存在は、イラン政府と軍の資金調達にとって極めて重要で、島の支配権をイランが失えば、国の機能維持が困難になります。
カーグ島はイラン軍の厳しい管理下にあって、イラン国民の間では『禁断の島』と呼ばれています。

イラン軍の報道官は、3月14日、
「UAE(アラブ首長国連邦)の港や軍事施設がアメリカ軍をかくまい、攻撃に使われている」として、UAEに対して、
「イランの防衛のため、これらの施設を攻撃する権利がある」と宣言、周辺国への直接攻撃に初めて言及しました。
カーグ島への攻撃を受けて、イランの軍事当局者は、石油施設が攻撃されれば、
「アメリカと関連する中東地域全体の石油企業を攻撃し破壊する」と警告しました。

カーグ島の石油施設が破壊されると、どうなるのでしょうか。
日本エネルギー経済研究所研究理事の久谷一朗さんです。
「これまでイランが原油を主に輸出してきたのは中国。直接的に日本に影響があるわけではない。ただし、カーグ島の原油輸出停止が、紛争停止後も続くようであれば、間接的に日本にも影響が出てくる可能性がある」

【ニュースをわかりやすく】TVerにて羽鳥パネル 見逃し配信中!
■日本 備蓄石油放出 ガソリン価格は?3月下旬に輸入大幅減
原油を巡る緊張が高まる中、3月16日から備蓄していた石油を放出します。
まず、民間備蓄15日分の放出が始まり、3月下旬ごろからは国家備蓄1カ月分が放出される予定です。
高市総理は、
「万が一にも石油製品の供給に支障が生じないよう、わが国の石油備蓄を活用する」としています。
日本の石油備蓄です。
2025年12月末時点で、国家備蓄は、約5カ月分となる146日分、
民間備蓄は、約3か月分となる101日分です。
合計で254日分。約8カ月分になります。

原油輸入の見通しです。
2月28日にアメリカとイスラエルのイラン攻撃が始まり、ホルムズ海峡が事実上封鎖されました。
ホルムズ海峡を通過済みのタンカーが日本に到着するのは3月20日ごろだということです。
そのため、日本の原油輸入は3月下旬以降、大幅に減少する見通しです。
日本が過去に行った石油備蓄の放出です。
東日本大震災やウクライナ侵攻などで過去6回、石油備蓄の放出を行いました。
今回7回目で過去最大の45日分です。

民間備蓄の内訳です。
原油が約47%、精製済みの石油製品が約53%で、割合は半々です。
久谷さんによると、民間備蓄は、ガソリンや灯油などの石油製品を製油所などで保管しているため供給が早い、ということです。
国家備蓄の内訳です。
原油が約97%、精製済みの石油製品は約3%です。
久谷さんによると、国家備蓄は、主に原油を備蓄していて、タンクは九州や東北などに多く、原油をタンカーなどで製油所に運び精製する必要があるため時間がかかる、ということです。

先行して放出する民間備蓄についてです。
石油元売り会社に法律で義務づけている備蓄量は70日分ですが、これを55日分に引き下げ、15日分にあたる石油を使えるようにします。
実際に備蓄をどのくらい使うかは、石油元売り各社が判断することになります。
そこで、1つ目の疑問です。どこかに優先的に放出をするのでしょうか。
久谷さんです。
「十分な量の備蓄を放出するので、当面は今までと同じようにガソリンスタンドなどで購入できる」

石油元売り各社は3月11日、ガソリンスタンドへの卸値を1リットルあたり26円、値上げしました。
3月12日には、レギュラーガソリン価格が1リットルあたり200円になる場所も出ました。
備蓄の放出で価格は下がるのか、ウクライナ侵攻の時のケースです。
2022年2月24日に始まったウクライナ侵攻により、2月21日時点で1リットルあたり172.0円だったレギュラーガソリンの全国平均の小売価格は上昇。
3月10日に石油の民間備蓄を放出するも、3月14日には1リットルあたり175.2円になります。
政府は4月に追加で民間の備蓄に加え、国家備蓄の放出を決定。
すると価格は下落して、5月30日には1リットルあたり168.2円にまで下がりました。

2つ目の疑問、備蓄放出で価格はいつ頃から下がるのでしょうか。
久谷さんです。
「IEA加盟国による備蓄の協調放出は、市場に対するメッセージでもある。市場が安心材料と受け止めれば価格上昇は今週にも沈静化する可能性」
価格抑制のため政府は、3月19日からガソリン価格の補助金制度を再開し、小売価格を1リットル170円程度に抑制します。

【ニュースをわかりやすく】TVerにて羽鳥パネル 見逃し配信中!
■石油輸入ストップで生活に影響も 医療への影響の可能性
石油は燃料だけでなく、様々な製品を作るために使います。
原油を蒸留して、ガソリンなどの燃料のほか、ナフサと呼ばれる透明な液体が製造されます。
このナフサからエチレン、プロピレンなどが作られます。
エチレンやプロピレンなどからできる製品が、プラスチック製品、衣料品、シャンプーや洗剤、合成ゴムなどです。

合成ゴムを製造する会社です。
原料のエチレン供給元から、出荷量制限の可能性があると通達を受けました。
合成ゴムを製造する会社の方は、
「政府も動いているように、原油の供給がすぐに途切れることはないと思う。買い占めなどは控えた方が良い。日本は資源が乏しく、海外から調達せざるを得ない。中東情勢が安定するのが一番」と話しています。

ゴムだけでなく、医療への影響の可能性もあります。
川崎市のクリニックです。
点滴のパックや、手術で体内に入れるチューブなど、石油から製造される製品を大量に使っています。
直ちに在庫不足にはなりませんが、事態の長期化を懸念しています。
エチレンの減産が始まっています。
三菱ケミカルは3月6日から減産、
三井化学も、3月9日の週から減産しています。
出光興産は、生産停止や減産も含め、あらゆる可能性があると顧客に通知しているといいます。

【ニュースをわかりやすく】TVerにて羽鳥パネル 見逃し配信中!
■石油ストップ 長期化懸念 利用制限かける議論も?
石油の輸入がストップし続けるとどうなるのでしょうか。
IMF=国際通貨基金のトップが試算を明らかにしました。
ゲオルギエバ専務理事は3月13日、取材に応じ、
「不確実性や山あり谷ありの状況こそが私たちの『新しい常態』、ニューノーマルになる可能性が高い」としています。
そのうえで、中東の紛争が長期化し、原油価格が10パーセント上昇した状態が1年間続いた場合、世界のインフレ率は0.4ポイント上昇し、経済成長率は最大で0.2パーセント低下するとしています。

今後について、日本エネルギー経済研究所の久谷さんは、
「石油の輸入が制限された状態が長引くと、生活の中で優先順位が低いものから“利用制限”をかける議論が起こる可能性」があるとしています。

久谷さんです。
「たとえば、行楽での自動車の利用。自粛や、公共交通機関の利用を呼び掛けられるのではないか」
一方で、
「医療関係、宅配などの物流、寒冷地の暖房など社会インフラや生命にかかわるものに優先的に石油をいき渡らせることになる」ということです。

(「羽鳥慎一モーニングショー」2026年3月16日放送分より)
この記事の画像一覧
