
アメリカのトランプ大統領は「イランが周辺国に報復してくるなど、想定外だった」と発言しました。勢いで突き進んだかのような、アメリカによるイランへの攻撃。それもあってか、アメリカの同盟国なども、船舶を護衛する艦艇の派遣に慎重姿勢です。トランプ大統領がいら立ちを募らせる中、高市総理大臣は18日、日米首脳会談のためアメリカに向けて出発します。
【画像】高市総理「したたかな外交展開」“選択”迫るトランプ大統領…日本の対応は
イラン安全保障トップ殺害か

イランの隣国イラクには、17日もイランの自爆ドローンが飛来。対空砲の轟音が静寂の夜をつんざき、時折、爆発音も聞えてきます。すでに周辺国への攻撃は日常のこととなっています。

対するイスラエル軍。16日夜に行ったイラン全土への空爆で、最高安全保障委員会のラリジャニ事務局長を殺害したと発表しました。ハメネイ体制の重鎮をまた1人排除したことになります。
封鎖から2週間が経過したホルムズ海峡では少しだけ変化も。パキスタン船籍のタンカーが位置情報を発信しながら堂々と通過しています。これは戦闘開始以来、イラン船籍以外のタンカーで初めてのことだとみられ、水面下でイランと交渉を行う国が出てきていることを意味します。インドや中国の船も通過していると言われていますが、アメリカやイスラエルと関係が近い国は立往生のままです。
依存度高い国は「協力すべき」
この状況を打破するため“7カ国程度に艦艇の派遣を要請した”と述べたトランプ大統領。翌日、不満をぶちまけました。

アメリカ トランプ大統領
「アメリカが輸入する原油で海峡を通るのは1%未満だが、日本は95%、中国は90%、欧州諸国も大きく依存しているし、韓国は35%だ。こういった国々は海峡警備を手伝ってほしい」

ホルムズ海峡に依存している国は協力すべきだと何度も主張。特に、名指しされている日本を含む5カ国に対しては当然だというような口調です。トランプ大統領曰く、フランスは前向きだそうですが、イギリスは慎重姿勢だといいます。
アメリカ トランプ大統領
「(協力の打診に)イギリスの首相が『閣僚と協議して判断する』と言うので『首相の君が決められるはずだ。掃海艇やボートを出すのに閣僚会議など不要だ』と返した。腹が立ったとは言わんが失望した。いずれ参加するだろうが、熱意をもって取り組むべきだ」
ドイツは拒否「戦争には参加しない」

中国は言及をさけているため、態度は不明です。韓国は“慎重に検討”していると述べるにとどめています。名指しはされていませんが、ドイツとオーストラリアが明確に拒否する姿勢を打ち出しました。

ドイツ メルツ首相
「この戦争には参加しません。戦争が続く限り、ホルムズ海峡における航行の自由を軍事力によって確保する活動には参加しません」
各国のこうした態度は織り込み済みなのかもしれません。この日のトランプ大統領がたびたび口にしていたことがあります。

アメリカ トランプ大統領
「そもそも我々に助けは不要なので、すがりつくつもりはない。協力の要請は必要だからではなく、反応を試すためだ」
「日本と韓国では4万5000人ずつ、ドイツでは5万人のアメリカ兵が防衛にあたっている。なのに『掃海艇を出せるか?』と聞くと『巻き込まないでもらえます?』だと。私がずっと言ってきたことが、これではっきりしただろう。NATOに巨額を投じて同盟国を守ってきたが、いざ我々が助けを求めても連中は助けに来ない」
反撃は予想外?見通しの甘さ露呈

NATOに抱え続ける不満から出た、同盟国への踏み絵。ただ、他国からしてみると、大きな不安要素があります。トランプ政権の見通しの甘さです。戦闘開始直後、イランが行った周辺国への大規模な攻撃について聞かれると。

アメリカ トランプ大統領
(Q.イランの報復について事前に誰も進言しなかった?)
「誰も予想しておらず、最高の専門家にも想定外だった。クウェートやバーレーンなどが突然、一斉に攻撃された。『イランが報復する』と言う専門家などいなかった。知っていたところで、それが何だ。やるべきことをやるだけだ」
攻撃命令を出した最高司令官本人が“あの反撃は予想外だった”と述べた事実。そんな戦場に艦艇を派遣するとなれば、他国がしり込みするのも無理はありません。
“有志連合”に日本の賛同要請
日米首脳会談まであと2日。日本では17日夜、NSC(国家安全保障会議)が開かれ、中東情勢をめぐり協議が行われました。予測不能な交渉相手に、高市総理はどう対峙するのでしょうか。
公明党 西田実仁幹事長
「今回訪米して、アメリカから『日本は中東の原油に依存しているのに何もしないのか』と言われた場合に、どう対応するのか」

高市早苗総理大臣
「今、法的に可能な範囲で何ができるか、精力的に政府内で検討をしております」

小泉防衛大臣は改めて「現時点で正式な派遣要請はない」と答弁しています。ただ、政府関係者によりますと、ホルムズ海峡の安全な航行に向け、アメリカ側から自国の艦艇の派遣を前提とはしない“有志連合”に賛同を求められていたことが分かりました。
高市総理「したたかな外交展開」
そのアメリカとの向き合い方について疑問も…。

共産党 山添拓政策委員長
「総理はイランを非難する一方で、米国とイスラエルは非難していない。トランプ大統領に攻撃の中止も求めていません。総理、これはなぜなんでしょうか」
高市早苗総理大臣
「トランプ大統領とは、これからお会いをいたします。以上です」

共産党 山添拓政策委員長
「首脳会談で攻撃の中止を求めるということですか」

高市早苗総理大臣
「予断をもってお答えすることは差し控えます。ただ、イランが周辺諸国を攻撃していることについては、G7各国ともに懸念を表明しております」
また、政府が可能性を探る自衛隊派遣については…。

参政党 神谷宗幣代表
「自衛隊の派遣を検討する前に、もっとイランと交渉して、まずタンカー等の航行の保証をとりつけるべきではないか。今、自衛隊を派遣してしまうと、かえってイランを刺激することになる。先に外交交渉が行われるべきではないか」

茂木敏充外務大臣
「うちの国だけ通してくださいというやり方がいいのか。航行の自由、安全を考えた時に、ホルムズ海峡全体が安全な海峡となるための外交努力、これはしっかりと続けていきたい」
参政党 神谷宗幣代表
「安易な自衛隊の派遣は行わないことや、原油の確保に全力を尽くすこと、ショック時に制度改革など強引に進めないようお願いしたい」

高市早苗総理大臣
「例えば日本がテロの標的になるといったリスクもあります。様々な評価が国際社会であるんでしょうけど、高市内閣はしたたかな外交を、そして国益第一の外交を展開する」
海兵隊派遣 地上戦の可能性?

今後、トランプ大統領がどう動くか、予想は極めて困難です。1つ鍵を握るとみられていたのが、今月下旬に予定されていた中国訪問でしたが、1カ月延期される可能性が高まりました。1~2週間後には海兵隊が中東に到着するとみられています。地上侵攻に踏み切るかどうかは大きな分岐点です。

アメリカ トランプ大統領
(Q.残存する核物質の回収には、限定的であれ地上部隊の導入が必要では?)
「直接、乗り込んで?手の内を明かすわけがない。悪く言うつもりはないが、馬鹿な質問だ。それに答えるようでは大統領失格だ」
アラスカから原油調達の意向
日本側は日米首脳会談で、アラスカ州の原油の増産に向けて日米で協力し、その原油を調達する意向を伝える方向で調整していることが分かりました。
イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖で原油の安定供給への懸念が強まり、日本は調達先の多角化を進める方針です。
関係者によりますと、アラスカ州産の原油の調達なども選択肢として浮上しています。
相次ぐ“拒否”や“慎重姿勢”
トランプ大統領の艦艇派遣要求、それからアメリカがイランを先制攻撃したことについて、各国がどういうスタンスなのか見ていきます。

まず否定的な態度を見せているのはイギリス・ドイツ・イタリア・オーストラリアです。
イギリス スターマー首相
「私たちがより大きな戦争に巻き込まれることはない」
ドイツ メルツ首相
「戦争が続く限り参加しない」
イタリア メローニ首相
「国際法の範囲外。イタリアはこの介入に参加しておらず、参加する意思もない」
オーストラリア担当閣僚
「ホルムズ海峡に艦艇を派遣する予定はない」
トランプ大統領いわく、協力してくれると評価しているのがフランスです。

フランス マクロン大統領
「複数の国の海軍が連携し、ホルムズ海峡の航行の自由を確保する必要がある」
ただその一方で…。
フランス マクロン大統領
「海峡は戦場になっていて、まだ条件が整っていない」
また、アジアでアメリカと同盟関係にある韓国と日本を見ていきます。

韓国大統領府
「アメリカと緊密にコミュニケーションをとり、慎重に検討して判断」
高市総理
「法的に可能な範囲で何ができるか、精力的に政府内で検討している」
どちらも慎重な姿勢を見せています。
米国の“想定外”背景は…
アメリカの安全保障政策に詳しい、明海大学・小谷哲男教授に聞きました。
(Q.アメリカの同盟国を含めて、各国がここまで否定的、あるいは慎重な態度を取ることを、トランプ大統領は想定できていなかったのでしょうか)

小谷哲男教授
「想定していなかったからこそ、イライラしているんだと思う。原油価格が高騰して各国が困っているので、要求に応じるはずだと思っていたのでは」
(Q.イランの反撃も予想外だったというトランプ大統領の発言にも驚きました)
小谷哲男教授
「トランプ大統領は周辺の意見に聞く耳を持たなかったようだ。去年6月のイランを攻撃した際にも、ホルムズ海峡の封鎖などに対する側近からの警告はあったが、現実にその時は封鎖は起きなかった。去年の“成功体験”があったために、今回も警告を無視してイランを攻撃して、今、大規模な反撃を受けているという状況。そもそも統制が取れていないのがトランプ政権。自分の想定外だったと非を認めないのは、トランプ大統領によくあることだ」
何を要求?日米首脳会談
(Q.日米首脳会談で、トランプ大統領は高市総理に対してどんなことを要求してきそうですか)

小谷哲男教授
「ホルムズ海峡の問題に関して、トランプ大統領の頭の中にあるのは、自由な航行ではなくて、原油価格だけ。この原油価格を下げるために、日本や各国が何をできるのか、具体的に何をやるのか聞いてくるだろう。自国艦艇の派遣を前提としない有志連合に、まず日本が参加すれば他国も追随してくれる、続くことが予想されると。そうなればマーケットが安心して原油価格が下がる一因になる。こうトランプ政権は期待しているのではないか」
「艦艇要求」日本の対応は

政治部官邸キャップの千々岩森生記者に聞きます。
(Q.各国とも、トランプ大統領からの艦艇の派遣要請に対しては慎重・否定的なようですが、日本政府の対応はまとまってきていますか)
千々岩森生記者
「まさに今も政府内では協議が続いているということです。日本政府は16日から、トランプ大統領に名指しをされたイギリス・フランス・韓国を含めて各国と対応を詰めてきました。各国を見ると総じて軍事面の協力には慎重です。日本も元々、ホルムズ海峡・ペルシャ湾への自衛隊派遣は選択肢に全くありませんでした。加えて、ホルムズ海峡から遠い周辺の地域、安全を確保できる地域も含めて、現時点の取材感としては、自衛隊の派遣は消えたように見えます」
トランプ氏への“説得材料”は
(Q.軍事的な協力、自衛隊の派遣はほぼ消えたとして、その代わりに、トランプ大統領を納得させる材料はありそうですか)
千々岩森生記者
「トランプ政権で当初、他国に軍事支援を求めたのはベッセント財務長官ということです。日本側は、アメリカの本音はマーケットを落ち着かせることだろう、つまり経済面だろうという見方が当初からありました。そんな中、17日に浮上したのが、アラスカの原油の増産で協力をする、そして将来的な輸入も視野に入れるという案です。日本としては原油の調達につながりますし、トランプ大統領が求める原油価格の安定、それからビジネス、色んなことにつながっていく。日米のウインウインのシナリオになるんじゃないかという狙いです。もう1つ、各国と有志連合を組んで、ホルムズ海峡の安定・安全というのは重要ですよという声明を出す。これも同様に原油市場を落ち着かせる狙いもあるんだと思います」
(Q.アメリカが具体的な要求を繰り出してくる中、同盟国として初めて対面で高市総理が会うことになります。かなり緊張した空気もあると思いますが、どうですか)

千々岩森生記者
「週末ぐらいから本当に緊張感が政府内では高まっています。ただ、日本はトランプ対策という意味では、安倍総理の頃から積み重ねた知見・経験がたくさんあります。世界各国を見ていると、日本の動きを参考にする、まさに“対トランプ虎の巻”的なものが日本にはある。思い返すと、去年2月に石破総理が訪米した。この時も切迫していました。トランプ大統領から見れば、親しかった安倍総理の政敵という位置付けが石破さんでした。さらにこの時、関税ものしかかっていた。それでも当時何とか切り抜けたほど、日本の対トランプチームはかなり練度の高いチームで、ほぼ同じチームが今回の調整にもついています。しかし、そのメンバーからも『今回は大変だ』『かなり疲弊している』というぼやきが聞こえてきます。首脳会談ギリギリまで、軍事ではないオプションの検討が続くことになると思います」
