高市総理と米トランプ大統領による日米首脳会談が20日(日本時間)、アメリカで開かれた。イラン情勢が不安定な状況下で、ホルムズ海峡は事実上封鎖され、トランプ大統領は同盟国に艦艇の派遣を求めるも次々と断られる中、両首脳はどのような思惑で会談に臨み、どんな成果を得たのか。そして、会見でトランプ大統領が7回繰り返した「ある言葉」と、波紋を呼んでいる「真珠湾攻撃」発言は国際社会でどう受け取られたのか。ANNワシントン支局の梶川幸司支局長に聞いた。
――今回の首脳会談。両首脳にとってはどのような手応えになったのか。
「トランプ大統領としては自らが踏み切ったイランとの戦争のまっただ中での会談。ホルムズ海峡がイランによって事実上封鎖され、トランプ大統領は日本も含めて、イギリス、フランスに名指しで同盟国に艦艇の派遣を求めたが、ほとんど断られてしまった。その中で最初に会うのが高市首相になった。
トランプ大統領はここ数日、SNSや記者団に同盟国への怒りを相当ぶちまけていたので、高市総理にハードルの高い要求をしてくるのではないか、と懸念が示されていた。ただ、結果だけ見ると、一見したところ波風立たず、乗り切った感があったと思う。
日本側の視点でいうと、イランを攻撃したという国際法上の評価は避けながら、高市総理は『世界中に平和と繁栄をもたらすことができるのはドナルドだけだ。しっかりと応援したい』と述べた。トランプ大統領に対して公の場で避けるべきとされている、『NO』『できない』といった否定的な発言を避けつつ、『ともに目標を達成する用意がある』と、日本の貢献を伝えることができたと思う。投資やミサイルの共同生産といった、安全保障と経済の両面を網羅的にアピールできたのではないか。
一方、トランプ大統領としては原油価格の高騰や戦闘の長期化が視野に入りつつあるなか、日本がどんな形であってもコミットすると表明したということは、マーケットを落ち着かせるという効果につながるので、何らかの表明はうれしかったのだろうと推測する。会談の時間を確保するために儀礼的な昼食会をとりやめて、実務的な会談を1時間半続けるなど、トランプ大統領としても成果を出したいという思いもあったはずだ。特に、対米投資を日本側から表明させたということは国内的にもアピールできる。トランプ大統領にとってもそれなりの成果があったのだと思う」
――注目されていた「ホルムズ海峡への自衛隊派遣」。高市総理は慎重な姿勢を伝えたというが、トランプはどう受け止めた?
「高市総理が『法的にできること、できないことをきちんと説明した』と言っているが、現時点ではトランプ大統領は、発言もSNSもない。しばらく様子を見る必要がある。トランプ大統領にとって最大の悩みはホルムズ海峡の状態だ。イランがタンカーを狙って攻撃する、また、実際に機雷を敷設したかどうかわからないが、機雷の脅威も出てきている。今後、日本に対して、将来的に掃海艇の派遣をしてほしい、ということを求めてくる可能性は十分にある。というのはアメリカ海軍の機雷の掃海能力に不安が指摘されている。元々、中東には機雷掃海を専門とする掃海艇があったが、老朽化もあり、去年退役することが決まった。4隻あったが、今年1月にアメリカ本土に運ばれてまもなく解体されることになっている。代わりに機雷掃海だけではないいろいろな任務ができる新しい船に置き換わったが、イランの機雷の脅威が現実味を帯び始めているなかで、『この船で大丈夫なのか』や『数が足りるのか』といった不安視する声が出ている。
この点、海上自衛隊には長年の経験をもつ掃海部隊があるので、米ベッセント財務長官が今朝のテレビ番組で『日本には世界最高水準の掃海艇と機雷探知能力がある。だからきょうの首脳会談では有意義な議論になるだろう』と予告するようなことを言った。それくらいトランプ政権には日本に対する艦艇の派遣への期待感がある。
しかし、戦地の掃海艇の派遣は法的な制約があるので、そもそも厳しい。さらに非常に危険な任務なので、容易に出せるものではない。高市総理は『できること、できないことを詳しく説明した』ということなので、ただちに自衛隊の艦艇を派遣することはないと思われるが、トランプ大統領が実際に高市総理にどんな要求したのかはよくわからない。
ただ、トランプ大統領が記者団の前で繰り返し何度も強調したのは『ホルムズ海峡での役割や責任を日本は果たそうとしている』ということだ。『役割を引き受ける』というのは『ステップアップ』という言葉で、この言葉を7回使っている。これが何を意味するのか、引き続き注目していく必要がある。すぐに派遣するということではないにしろ、トランプ政権としては日本への期待があるということを受け止めなければならない」
――トランプ大統領の「なぜイランを攻撃する前に同盟国に知らせなかったのか」という記者からの質問に対する、トランプ大統領の「日本ほど奇襲をよく知っている国はありません。なぜ真珠湾攻撃のことを私に教えてくれなかったのか」という答えたことが話題になっている。この発言は国際社会やアメリカではどう受け止められたのか。
「トランプ大統領のこの発言は非常に反響が大きく、当意即妙のジョークとして単におもしろがっているアメリカ人もいるが、真珠湾攻撃というのは、アメリカ国内では、『だましうち』『卑怯なこと』の象徴のようにとらえられている。
何のための軍事作戦なのか、戦争なのか、という大義が問われているなかで、真珠湾になぞらえて『奇襲なんだから』と言った。アメリカの文脈だと、『パールハーバー』は『非常に卑怯なこと』『よくないこと』と同じなので、自分たちが仕掛けたイランへの戦争そのものの大義を棄損することになる、ということになる。『自分で自分の攻撃のあり方をよくない、と認めているようなものだ』という意味で批判する声が出ている。
そして、もう一つは隣に高市総理がいた。アメリカのメディアは『この言葉を聞いた高市総理は目を丸くして深呼吸したようだった』と高市総理の表情まで伝えている。外国の首脳を隣にして、厳しい発言であることは間違いなく、同盟国の首脳に対してそもそも失礼じゃないか、という見方も出ている」
――夕食会では互いを持ち上げる場面もありましたけど、中東情勢の関わり方はどう変わっていく?
「中東政策もそうだが、いま私たちの日本周辺の安全保障は、沖縄にいた海兵隊が佐世保の強襲揚陸艦に乗って中東に向かっている。また、韓国にあったミサイル迎撃システムの『THAAD(サード)』も中東に行っていて、南シナ海にいた空母『エイブラハムリンカーン』も中東に行っている。中国や北朝鮮とどこまで敵対的に向き合うかはともかく、アメリカ軍のインド太平洋のプレゼンスがどんどん中東に向かっている実態がある。これは決して日本にとってよいことではないと思う。高市政権が安全保障を高めていくというのであれば、中東の安定を早く取り戻すということが、アメリカ軍のシフトが中東に向かっている動きを元に戻して、なおさら中東での和平を、停戦に向けた努力ということをしっかり努めていく必要がある。
ただ、事態はますます難しくなってきている。イランとのこれまでの関係もあり、日本はなかなか難しい立ち位置に置かれているとも思う」
(ABEMA NEWS)

