
アメリカがイランへの軍事的な圧力を強める中、イランメディアは、地上侵攻が行われた場合、イエメン沖に「新たな戦線が開かれる」と予告しました。物流がさらに混乱し、私たちの暮らしへの影響はますます広がる可能性もあります。
【画像】イラン「停戦協議一切ない」…別の“重要海峡”に戦線拡大の恐れも
イラン停戦協議を否定
アメリカとイランの戦闘終結に向けた協議について、イラン側は、停戦協議は「一切ない」と否定しました。

イラン軍司令部報道官
「あなた方の敗北を合意と呼ぶな。和解することは決してない」

イラン アラグチ外相
「これまで交渉は一切行われていない。アメリカとは、交渉も対話もしていないと断言する。いまさら交渉を持ちかけるのは敗北を認めているに等しい」
逆に、イラン側は、5つの条件を示しました。

イラン国営放送
「『1 “侵略”と“暗殺”の完全停止』『2 戦争再発を防ぐ仕組みの確立』『3 賠償金の支払い』『4 親イラン組織を含む全体の戦闘終結』『5 ホルムズ海峡におけるイランの主権行使の保障』」
アメリカが求める核開発に関する項目はない、一方的なものです。
トランプ大統領「イランに大勝利」
それでも、共和党大会に登場したトランプ大統領は、強気のままです。

アメリカ トランプ大統領
「『アメリカを再び偉大に』は、政治史上最高のスローガンだ。これを捨てることはないが、そろそろ変えるべきだろうか。今が偉大でないと受け取られかねない。中東では、イラン相手に大勝利を収めている。相手は裏で、合意を切望しているが、自国民に殺されたくないから公言できない」
また、日本時間26日夜、自身のSNSでもこう投稿しました。

アメリカ トランプ大統領のSNS
「イランの交渉役は、裏では、我々に合意してくれと泣きついてくる。にもかかわらず、表では『アメリカ側の提案を検討しているだけ』と言っている。手遅れになる前に、さっさと本気になったほうが身のためだ」
議会で、イラン関連のブリーフィングを受けた議員たちからは、このような声が上がります。

共和党 メイス下院議員
「共和党から広く不満が噴出した。民主党も同様だ。現状の目的を、国民と議会の双方に明確にすべき」

民主党 マーフィー下院議員
「今日の報告で分かったのは、ホルムズ海峡の再開手段がないこと。海峡を開放する軍事計画は不在で、事実上、戦争終結まで閉鎖されたままとなる。わが国の消費者には悪い知らせだ」
「協議している」とする一方で、軍を派遣して、ペルシャ湾にある石油輸出の拠点、カーグ島の制圧を試みているとされるアメリカ。島の制圧を停戦協議の材料にしようとしているとの報道もあります。
ただ、アンダーソン元陸軍准将は、こう話します。

アンダーソン元陸軍准将
「『軍が使えるから使う』それがトランプ大統領の発想です。空から飛び降りろと言えば、飛んでくれるからです。問題は外交がずっと困難だということ。イランが終わりを宣言するまで、この戦争は終わりません」
バブ・エル・マンデブ海峡も封鎖?
いまのところ、イランは決死の覚悟で戦い続ける姿勢です。

イラン軍司令部報道官
「海峡は、以前の状態に戻らない。我々の意志次第だ。暴君とその盟友の道は閉ざされている」

さらに、革命防衛隊に近いタスニム通信が報じたのは、アメリカが地上侵攻した場合の戦線拡大の可能性です。場所は、ホルムズ海峡からアラビア半島を挟んだ場所にあるバブ・エル・マンデブ海峡。

軍関係者(イラン タスニム通信)
「バブ・エル・マンデブ海峡は、世界でも指折りの“戦略的要衝”で、イランはこの海峡に対して、完璧かつ現実的な脅威となるだけの意志も戦力も備えている」

この海峡は、ホルムズ海峡が実質的に封鎖されているいま、輸送の迂回路として注目されていました。ここに戦線が拡大すれば、中東からの原油輸出が止まる可能性が、さらに高くなります。
海峡近くに控えるのは、イエメンの武装組織『フーシ派』。過去に、海上で輸送船を拿捕してきたこともある組織は、参戦も示唆していて、海峡のさらなる不安定化が懸念されています。
ホルムズ海峡周辺 約2000隻が立ち往生

ホルムズ海峡周辺では、約2000隻の船が立ち往生。船に乗る2万人が、先の見えない船上生活を強いられています。
その中でも、6000人以上と多いのは、フィリピン人船員です。

フィリピン船員組合 ジュディ・ドミンゴ代表
「今後の情勢や今の危機が、どれだけ続くか悩む船員もいる。メンタルヘルスに影響が及ぶかもしれない」
通信がつながりにくいなか、メッセージアプリなどでカウンセリングをしているそうです。
フィリピン船員組合 ジュディ・ドミンゴ代表
「(Q.船員を続けることに不安の声は)船乗り業では、安全リスクもあるが、この仕事を辞めたら、家族を養えるのかという不安も。フィリピンでは、船乗りは高収入なのです」
船尾に穴 “日本の船”も標的に

日本に関係する45隻も、いまだに足止めされたままです。そのうち5隻に、日本人船員24人が乗っています。被害の報告もありました。

日本船主協会 篠原康弘理事長
「衝撃を受けて確認したところ、船尾に穴が開いているのを確認された」
人的被害はないそうですが、危険な状況には変わりありません。

東京湾に現れた中東からホルムズ海峡を通過してきたタンカー。
このタンカーは、イランが攻撃を受ける直前にペルシャ湾を出たとみられます。こうした船は今後も来るのでしょうか。
国家備蓄の放出も…影響拡大か
供給不安への対応が始まっています。

石油の“国家備蓄”放出が、26日からから始まりました。国内消費の1カ月分に相当する量を段階的に放出する方針です。
それでも、家庭にまで影が迫って来ています。
ごみ袋市場において、国内トップクラスのシェアを持つ会社。

ごみ袋やレジ袋など、約800の製品のほとんどを、5月以降、値上げすることに。原材料となるポリエチレン価格は、先月末に比べて約2倍になっているそうです。

日本サニパック 井上充治社長
「ホルムズ海峡が安全に船舶が通過できるようになれば、こういった原油価格、あるいはポリエチレンの価格は下がってくると思う。一刻も早く、そういう状況になってほしい」
米が軍事力強化イランどう対抗?

3年前まで在イラン日本大使館で専門調査員を務めていた、中東調査会・斎藤正道さんに聞きます。
(Q.イラン側は、アメリカの計画を拒否した上で、新たに5つの条件を提示してきました。この動きどうみますか)

斎藤正道さん
「アメリカのイランに対する要求は、イランにとっては無条件降伏に近い内容です。他方で、イランがアメリカに対して突き付けている要求は、アメリカの敗北を認めさせるような内容で、いずれの側の要求も、両国にとって受け入れがたい内容だと言わざるを得ません。今のところは、高い要求をお互い出し合って、相手がどういう反応をするか見定めている段階ではないかと思います。また、イラン側は今の戦い方に自信を持っていると見受けられます。アメリカ側からの交渉サインをみて、自分たちが好条件で交渉できるのではないかと考えている節があります」
(Q.アメリカは、イランとの協議の一方で、強襲揚陸艦を中東に派遣しています。さらに、空挺師団を派遣するとも報じられています。にらみあって協議に入らないまま、あるいは入っても時間切れで地上戦に突入する可能性はありますか)

斎藤正道さん
「一定程度はあるかなと思っています。アメリカの狙いは恐らく、最大の原油積み出し拠点であるカーグ島の占領だと思われます。そこを押さえると、イラン側は石油を輸出できなくなる。石油輸出の9割以上は中国向けですが、イランにとって経済的に厳しい。また、ドローンの生産を維持できなくなることで、戦争継続に厳しい条件がかされることになります」
(Q.イランが座して攻撃されるがまま、というのはあり得ないですよね)
斎藤正道さん
「もちろんイラン側は迎え撃つ準備を整えるでしょう。例えば、上陸部隊に対してドローンで攻撃をするとか、地雷を埋める、石油施設を爆発できるようなトラップを仕掛けるなど。至近距離での戦闘になるので、地上部隊が投入されると、アメリカ側に大変な被害が及ぶ可能性が高いと思います」
(Q.イランはそういうことを想定した訓練・研究をしてきていますか)
斎藤正道さん
「イランの主力である革命防衛隊は15~20年くらい前に、ゲリラ戦を想定したような、陸上部隊を編成してきました。もし地上戦になると、アメリカにとってかなり厄介な存在になると思います」
イラン攻撃継続の背景に“地形”

なぜイランは攻撃を続けることができるのか。斎藤さんによると、イランの地形が大きく関係しているといいます。イランは“山だらけ”の国で、大きな2つの山脈があり、最高峰は標高5000メートルを越えています。首都テヘランは高い山に囲まれ、標高1000メートル以上の高地にあります。
(Q.この地形は、イランにとってどんな意味合いがありますか)
斎藤正道さん
「山あいをくりぬく形で軍事施設などを建設していて、そこからミサイル・ドローンを発射したり、貯蔵する形にしているので、敵からの攻撃に対して守りやすい形になります」
(Q.軍事施設が公開されることはあまりないですか)
斎藤正道さん
「イラン当局から時折、こういった地下施設を建設したと発表がありますが、施設が具体的にどこにあるのかといったことは全く公表されていません。そのため、アメリカ・イスラエル軍もイランの山をくりぬいた形で造られている軍事施設が具体的にどこにあるのかを全て把握している訳ではないと考えられています」
(Q.イラン国内の士気は今どういう状況ですか)
斎藤正道さん
「イランには2つの種類の軍があり、正規軍と革命防衛隊があります。2つ合わせて兵員が60万人ほどいると言われています。その中には、アメリカやイスラエルとの戦争のために命を落としても構わない、血の1滴まで戦うべきであるという決意を持った人たちも、全員とは言いませんが、一定程度いることは間違いないと思います。
米の“本気度”イランはどう動く

アメリカの安全保障に詳しい、明海大学・小谷哲男教授によると、トランプ大統領は本気で協議を開催したいと考えているといいます。その理由がイランの交渉役とみられる、ガリバフ国会議長の存在です。アメリカはイスラエルに対して、ガリバフ国会議長を暗殺リストから外すよう要請し、ネタニヤフ首相も受け入れたという情報があります。これは、ガリバフ国会議長が殺害されると協議が破綻すると、トランプ大統領が嫌がった可能性があるとしています。
(Q.アメリカが協議に前のめりだとすると、イランが協議に乗っかっていくために必要なことは何ですか)
斎藤正道さん
「まずはアメリカ側が、イランへの空爆・攻撃を一旦止めることが必要になってくるのではないでしょうか。その上で、イラン側も、ホルムズ海峡の通行を阻害する攻撃を停止すると。そういう形で、両国が停戦に向けた意思がある、本気度があるんだということを一定程度見せないと、交渉開始にはならないのではないかと思います」
(Q.まずは停戦。そして具体的な手はずとして考えられるのはどういうことですか)
斎藤正道さん
「両国の間で一つひとつ、お互いの安全を守り、最低限譲ることができるのか。そういった点を確認し合うことが大切になると考えます」
(Q.それはホルムズ海峡を少しずつ船舶を通すということも含まれますか)
斎藤正道さん
「その通りだと思います」
