
イランが地上戦に備え、多数の戦闘員を組織したと国営メディアが報じました。停戦の見通しが立たない中、専門家はアメリカが思わぬ“落とし穴”にハマっていると指摘しています。
【画像】アメリカが軍事行動を重ねるたびに事態が悪化“エスカレーション・トラップ”
カーグ島に“ワナ”
CNN(25日)は、イランがカーグ島の防衛を強化していると伝えています。アメリカ軍による占拠に備えて、海岸線などに対人地雷や対戦車地雷などを含むワナを仕掛けているということです。
また、イラン国営メディアによりますと、イランはアメリカ軍との地上戦に向け、100万人以上の戦闘員を組織したといいます。
食い違う米・イランの主張
現在、アメリカとイランの停戦交渉は、どのような状況なのでしょうか。
25日、イランのアラグチ外相は「現在のところ、アメリカ側との交渉や対話は行われていないと断言する」と発言。「現在の方針は、抵抗の継続と国の防衛だ」と述べました。
一方、日本時間27日午前に、トランプ大統領はSNSに「協議は継続中であり、フェイクニュースメディアなどによる誤った報道もあるが、非常に順調に進んでいる」と投稿。両国の主張には隔たりが見られます。
そうした中、交渉の主導権は「イランにある」との指摘も出ています。
米国はエスカレーション・トラップに
18日、シカゴ大学のぺイプ教授は自身のSNSに「今、最も大きな間違いはイランが負けていると考えることだ」と投稿。その理由として、アメリカが軍事行動を重ねるたびに事態が悪化する“エスカレーション・トラップ”に陥っていることを挙げています。
アメリカは「イラン最高指導者の殺害」や「核関連施設の空爆」など限定的な目標にとどめていましたが、これに対しイランは、「ホルムズ海峡の封鎖」や、アメリカの同盟国である「湾岸諸国への報復」など攻撃を拡大。湾岸地域全体のアメリカの紛争コストを高める戦略に出ました。
つまり、アメリカが圧倒的な軍事力で相手国を攻撃した場合、イランは直接対抗できないため、相手の脆弱(ぜいじゃく)な分野を突いて損害を与える戦略に出ています。それが“エスカレーション・トラップ”だということです。
そして、イランは今後もこの戦略を取っていく可能性があるといいます。
12日、イランのモジタバ師は最高指導者になって発した最初の声明で、アメリカが苦手な地域で新たな戦線を開く可能性に言及していました。
ロイター通信はイランメディアの報道として、イラン領の島が仮に攻撃を受けた場合、紅海のバベルマンデブ海峡で新たな戦線を開く可能性があるというイラン軍関係者の話を伝えています。
さらにイランはホルムズ海峡の封鎖に加え、アメリカの同盟国へのドローン攻撃なども行ってきましたが、バベルマンデブ海峡の封鎖も示唆しているということです。
攻撃直前の核協議
まとまりかけていたイランとの核協議が、アメリカの攻撃によって裏目に出る懸念もあるといいます。
今回の軍事攻撃の直前、アメリカとイランは核計画を巡る協議を行っていました。
協議は先月6日から26日までの間に3度開かれ、アメリカはイランの「核能力ゼロの実現」「弾道ミサイル計画の中止」「武装勢力への支援の停止」を目標としていました。
一方、イランの仲介国オマーンの外相によりますと、イラン側は核兵器製造を可能にする高濃縮ウランの貯蔵を放棄する意向を示していたといいます。
イランも譲歩の姿勢を見せていましたが、3度目の協議の2日後、先月28日にアメリカはイランへの大規模攻撃を実施。トランプ大統領はSNSで、「イランが核計画を放棄するすべての機会を拒み、長距離ミサイルの開発を進めている」と攻撃の正当性を主張しました。
中東情勢に詳しい、明治学院大学准教授の溝渕正季さんによりますと、「攻撃を受けたイランは核の放棄は自国をより危険な状態にさらすと考える。戦後も核開発に突き進む流れは止められないだろう」と話しています。
サウジの思惑は?
そして、他の湾岸諸国の動きについてです。
アラブの盟主・サウジアラビアは、戦闘の継続を望んでいるとも言われています。
ニューヨーク・タイムズ(25日)によりますと、サウジアラビアのムハンマド皇太子がトランプ大統領に、過去1週間で複数回行った電話会談の中で、「中東を再構築する『歴史的な機会』だ」と発言したといい、戦闘継続で体制転換を望むと圧力をかけたといいます。
ただサウジアラビア政府は、この報道を否定しています。
サウジアラビアの思惑について溝渕さんは、「イランが核を保有することは、アラブ諸国が最も恐れることのひとつ」であり、サウジアラビアはできるだけ長く戦闘を継続してほしいのではないかと指摘しています。
(2026年3月27日放送分より)
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