イラン攻撃1カ月“フーシ派参戦”でさらなる混迷に?原油“代替ルート”にも影響大か

イラン攻撃1カ月“フーシ派参戦”でさらなる混迷に?原油“代替ルート”にも影響大か

イランへの攻撃開始から1カ月。アメリカのルビオ国務長官が、「戦闘終結まで数週間」との見通しを示す一方、親イラン武装組織「フーシ派」が、イスラエルへの軍事作戦実施を発表。混迷がさらに深まる恐れが…。(3月28日OA「サタデーステーション」)

フーシ派も参戦 原油“代替ルート”への影響懸念

この1カ月、イスラエルを標的としたミサイルの多くは、イラン本土から放たれたものでした。しかし…

米CNN
「イスラエルはイエメンからのミサイル攻撃を確認したと発表しました。この戦争が始まって以来、初めてのことです」

ついに、イエメン北部を実効支配している親イラン武装組織「フーシ派」も参戦を表明。さらなる緊迫化は避けられない情勢です。

親イラン武装組織「フーシ派」報道官
「我々は神のご加護をもって最初の軍事作戦を実行した」

この6時間ほど前、トランプ大統領は…

米トランプ大統領(27日)
「彼らは海峡を開かなければならない。彼らは“トランプ海峡”を開放しなければならない。いや失礼、ホルムズ海峡だった。フェイクニュースは『うっかり口を滑らせた』と報じるだろう。彼ら(イラン)は交渉している。取引を求めて懇願している」

イランへの軍事作戦は、予定より2週間早く進んでいると成果を強調していました。

親イラン武装組織「フーシ派」は、参戦表明の前日、イランへの攻撃が激化し続けた場合は軍事介入に踏み切る、と警告していたばかりでした。「フーシ派」は、2023年のイスラエルとイスラム組織「ハマス」との戦闘開始から停戦までのおよそ2年間、「ハマス」に連帯を示し、紅海を航行するタンカーへの攻撃を繰り返してきました。

その紅海を通ってきたタンカーが28日、日本に到着。ホルムズ海峡が事実上封鎖されて以降、ホルムズ海峡を通らずに原油を運んだタンカーの到着は初めてとみられます。今回使われたのは、サウジアラビアのヤンブー港で原油を積み、バブエルマンデブ海峡を通過するルートです。ホルムズ海峡の外側にあるフジャイラ港からのルートとともに、日本の「代替ルート」として期待されていましたが、このバブエルマンデブ海峡は、まさにイエメンを拠点とするフーシ派の勢力圏。攻撃が再開されれば、日本のみならず、世界のエネルギー危機に拍車がかかる恐れがあります。

原油先物価格の上昇や、いわゆる「有事のドル買い」の動きが強まったことで、外国為替市場では、1ドル=160円台まで円安が進みました。これは1年8カ月ぶりの水準です。

米国務長官「数週間で作戦完了」

アメリカとイスラエルがイランに攻撃を始めてから1か月。中東メディアによると、これまでに少なくともイラン側で1937人が死亡。イスラエル側で19人が死亡しています。

イスラエル軍は27日、新たにイランの複数の核関連施設を攻撃したと明らかに。一方のイラン側も28日、新たにバーレーンのアメリカ軍基地を攻撃したとされる映像を公開。前日には、サウジアラビアの空軍基地にイランのミサイルが着弾し、アメリカ兵12人が負傷したとアメリカメディアが報じています。

報復の連鎖が止まらない中、戦闘終結への道筋は見えているのでしょうか。G7外相会議に出席したアメリカのルビオ国務長官は…

米ルビオ国務長官
「数カ月ではなく、数週間以内に作戦を完了させる見込みだ。進捗は極めて順調だ」

ルビオ氏はG7の外相に対し、戦闘は「2週間から4週間続く」との見通しを示したとアメリカメディアは伝えています。また、ルビオ氏は、地上部隊を投入しなくてもイランでの軍事作戦の目的を達成できる、との認識を示しました。

トランプ大統領 相次いだ“誤算”

果たしてその言葉通りになるのでしょうか。そもそもこの1カ月、アメリカ側の戦略は揺れ続けています。

米トランプ大統領(先月28日)
「我々の目的はイラン現政権がもたらす。アメリカ国民への差し迫った脅威を除去することである」

イスラエル ネタニヤフ首相(先月28日)
「この作戦の目的は、“ハメネイ体制”の脅威に終止符を打つことです」

先制攻撃の当日、ともに口にしていたのは“政権の転換”について。イスラエル側は、初日の攻撃で、当時、イランの最高指導者だったハメネイ師や、イラン軍の司令官およそ40人を殺害したと発表。

アメリカ トランプ大統領(1日)
「自由を求めるイランの愛国者に告ぐ。この好機に、勇敢な英雄として祖国を取り戻すよう呼びかけたい。アメリカは諸君とともにある」

しかし、ハメネイ師の後継者に選ばれたのは、“体制維持の象徴”ともいうべきハメネイ師の次男、モジタバ師でした。

慶應義塾大学大学院の田中教授は、アメリカ側の読みが甘かったのではないかといいます。

慶應義塾大学大学院 田中浩一郎教授
「計算違いが大きい。(去年12月末以降)イラン国内で広がった(反政府)デモや暴動を考えて、今だったら体制をひっくり返そうとする動きの方が活発になるだろうと。(しかしイランは)外国から侵略を受けて、まずは国を守るという立場で、極めて士気が高まった」

田中氏はさらに、体制が維持されたことで、イランがホルムズ海峡を事実上封鎖したことも、トランプ大統領にとっては誤算だったのではないかといいます。世界的な石油価格の高騰を受け、アメリカ国内でも、攻撃を疑問視する声が高まっています。そうした声を受けてか、トランプ大統領は「15項目の停戦条件」をイラン側に提示するなど交渉を進める姿勢を見せ始めています。

一方、交渉相手のイラン側は。

イラン アラグチ外相(25日)
「これまで交渉は一切行われていません。アメリカとは交渉も対話もしていないことを断言します。

何と、アメリカとの交渉は行われていないとし、逆に、戦闘終結の「5つの条件」を示しました。この5条件は、先にアメリカが提示した15項目とはほとんど噛み合うところがありません。イランはなぜここまで強気なのでしょうか。

慶應義塾大学大学院 田中浩一郎教授
「(ペルシャ湾周辺地域が不安定になると)原油価格が上がり、株式市場が下がり、インフレも増進するというようなことを考えると、アメリカの経済、それからアメリカの社会に対して、最終的には中間選挙というところへの影響は計り知れなくなります。(アメリカ側が)短期決戦でという事を想定していたとすれば、計算違いが大きい。そしてそれにより戦火の拡大も招いてしまったという事で焦っている。アメリカがいま言ってきている15項目の内容というのは、 そのほとんどが、今までアメリカがイランに無理強いでのませようとしてきた無理難題なんです。全く取り付く島がないという対応になるのは、これは当たり前のことだと思います。

フーシ派による“公開封鎖”の可能性は?

高島彩キャスター
「ここからは、アメリカの外交・安全保障に詳しい明海大学・小谷哲男教授にお話しをうかがいます。イラン情勢をめぐっては、今週も様々な動きがありました」

板倉朋希アナウンサー
「まずは、海兵隊を乗せて日本を出航した強襲揚陸艦『トリポリ』が、27日には中東海域に到着するとされています。さらに、アメリカ本土からも別の海兵隊と強襲揚陸艦が中東に派遣されたと、現地メディアが報じています」

高島彩キャスター
「地上部隊を中東に集結させつつあるアメリカの狙い、小谷さんはどこにあるとお考えですか?」

明海大学 小谷哲男教授
「まずはこれから始まるかもしれない交渉に向けて、軍事的な圧力を強めるためだと考えられます。ただ報道されている範囲では派遣されるのは1万7000人規模ということですので、大規模な地上戦は行えませんから、ホルムズ海峡に浮かぶララク島など小さな島を奪うですとか、あるいは核関連施設、ここに眠っているといわれる濃縮ウランの確保など限定的な作戦を考えている可能性もありますが、基本的には軍事的圧力だと思います」

高島彩キャスター
「交渉の場にイランを引きずり出すため、ということなんでしょうか」

ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「我々どうしてもいま、ペルシャ湾・ホルムズ海峡に目がいってますけれども、今日はフーシ派がイスラエルにミサイルを撃ち、参戦を表明しているということになると、新たな緊張状態が生じかねないということになっていると思うんですよね」

板倉朋希アナウンサー
「いま柳澤さんからあったフーシ派ですが、イランの政治や社会情勢に詳しい中東調査会の主任研究員・斎藤正道さんにお話を伺ったところ、イエメンのフーシ派がイランとの関係を深めたのは2010年代以降で、イランの支援は受けているものの、どこまで命令どおりに動くのかは不透明だということです。また仮に紅海の出入り口にあるバブエルマンデブ海峡を封鎖するということを実行するとなれば、フーシ派が得られるメリットというのは存在感をアピールすることくらいで、むしろアメリカ・イスラエルから激しい攻撃を受けるリスクがあるということで、イランから命令されても海峡の封鎖に踏み切る可能性は必ずしも高くないということでした」

高島彩キャスター
「フーシ派がイランの意のままに動くかどうか、このあたり小谷先生はどうお考えですか?」

明海大学・小谷哲男教授
「アメリカとイランが攻撃を始めた2月28日以降、フーシ派はおとなしくしていたわけですが、今回イスラエルに対して弾道ミサイルを撃ったということですので、イランと連携する動きというのは見られます。フーシ派からすれば唯一の後ろ盾がイランなので、イランがもし倒れてしまえば共倒れになりますので、イランを支えるためにも『紅海の封鎖』という形をとって世界経済にさらなる打撃を与えるということになるかもしれません。そうなった場合、アメリカはいま、ホルムズ海峡を守るので精いっぱいですから、とても紅海まで手が回りませんので、日本を含めた同盟国に対するさらなる協力の要請が強まるということも考えられます」

ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「バブエルマンデブ海峡の対岸はジブチですよね。ジブチにはいま海賊対策で自衛隊も行ってます。そうすると、日本に対する色々な要求が新たに出てこないとも限らない」

明海大学・小谷哲男教授
「そうですね。ただ仮に紅海がフーシ派によって封鎖されるということになると、ミサイルやドローンが飛んでくるわけですから、今ジプチに展開している汎用の護衛艦では対処できなくて、日本からイージス艦を派遣する。あるいは有志連合が結成されるなら、そこへの補給支援ということが求められていくんだと思います」

停戦協議の現在地 カギはやはりイスラエルか

高島彩キャスター
「実際にアメリカとイランの交渉は、どこまで進んでいるんでしょうか?」

明海大学・小谷哲男教授
「イランからは表向き否定的な発言が続いていますが、アメリカに対しての水面下でのイランの反応は全然違うということです。イランとしてもやはり何らかの形で交渉をまとめて、停戦に結びつけていきたいと。アメリカからは『であれば誠意を見せてくれ』と言ったところ、ホルムズ海峡を通るタンカーの数が増えたということで、トランプ大統領はこれをプレゼントだと受け取ったわけです。アメリカが提案した停戦条件の15項目とイランが出した停戦条件5項目はかなり開きがあるのは確かなんですが、ただトランプ大統領としては『イランとアメリカがホルムズ海峡を共同管理してもいい』というようなことも言いだしていますので、何らかの形でこれをまとめていき、それによって原油価格を安定させたいというふうにトランプ大統領は考えていると思います」

高島彩キャスター
「ホルムズ海峡の共同管理となると国際社会の目というのもまた気になってくるところでありますが、こうした中、もう1つの当事国イスラエルは、イラン各地の核関連施設などへの空爆を続けているということで、柳澤さん、停戦の行方というのはイスラエルの動きにも関わってきますよね」

ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「大きな鍵のひとつだと思うんですが、特にイスラエルのネタニヤフ首相はイランの体制転換にかなりこだわっている。そのネタニヤフ首相をトランプ大統領は事態収束に向けた動きの中で説得することができるんでしょうか?」

明海大学・小谷哲男教授
「実際の軍事作戦もネタニヤフ首相が、うまくトランプ大統領を説得して始めたんじゃないかと言われていますが、この1週間イランとの交渉が動くかもしれないという中で、トランプ大統領ではなくバンス副大統領が前面に出てきていて、ネタニヤフ首相とも数回電話で話したということのようです。その中ではかなり厳しいこともバンス氏のからネタニヤフ首相に伝えられたということですので、バンス氏が前面に出ることでネタニヤフ首相、あるいはイスラエルを抑えて、イランとの交渉をまとめ上げたいというのがアメリカの狙いだと思います」

高島彩キャスター
「収まる方向に向いてるんでしょうか?」

明海大学・小谷哲男教授
「アメリカとしてはそうしたいんですが、実際にイランがどう動くかというのは、やはり最後まで分からないと思います」

高島彩キャスター
「最終的な手段というのは『武器を出さないぞ、援助しないぞ』ということになってくるのでしょうか?」

明海大学・小谷哲男教授
「アメリカとイランの交渉が動き出して、それをイスラエルが横から妨害することになれば、トランプ大統領はおそらくイスラエルへの武器支援の停止というカードを使ってでも、イスラエルを止めるのではないかと思います」

高島彩キャスター
「ここ数週間どういった動きが行われるのか、交渉などにも注視していきたいと思います」

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