
週末、イランで撃墜されたアメリカ軍の戦闘機。行方不明となった兵士を救出できるかどうか、1つ間違えば、トランプ大統領はアメリカ世論の猛反発を買っていたかもしれません。結果は救出成功。大統領はピンチをしのいだ形となりましたが、イランへの攻撃がトランプ政権にとって大きなリスクとなっていることを浮き彫りにしました。
【画像】失敗すれば“政権にダメージ”米軍機撃墜“薄氷の救出作戦”約100人の特殊部隊を投入
イラン 1000万円の懸賞金設ける
アメリカ軍の戦闘機がイラン南部で撃墜されたのが3日。乗組員2人が現地に取り残されました。アメリカ軍はすぐさま捜索を行いましたが、救出できたのは1人だけ。もう1人の行方がつかめません。

イラン国営テレビ(3日放送)
「誇り高き国民の皆さん。敵のパイロットを捕らえて、生きたまま警察や軍に引き渡せば、多大な懸賞金が政府から与えられます」

1000万円近い懸賞金を目当てに追手に加わる住民たち。ここで生死を分けたのが、乗組員の判断です。アメリカメディアが報じているところでは、乗組員は半日以上かけて標高2000メートルを超える尾根を目指し、岩陰に身を潜めながら特殊な発信機を作動させたといいます。これを把握したのがCIA。最初に行ったのは、攪乱(かくらん)による時間稼ぎです。

米CNN
「アメリカ軍が救出作戦の立案を急ぐ中、CIAも情報工作を展開。“2人とも救出された”という情報をイラン国内で流し、捜索に必死だった革命防衛隊を混乱させようとした」
約100人の特殊部隊を投入

イラン側が捜索をしている間に“アメリカの特殊作戦史上、最も困難かつ複雑”と呼ばれる救出作戦が開始されます。投入されたのは約100人の特殊部隊。中核を担ったのが、かつてオサマ・ビンラディンを暗殺した時と同じ、ネイビーシールズの部隊です。

日没を待ってからヘリが山岳地帯を急襲。乗組員を助け出すと共に、別の部隊が救出地点に向かってくるイランの捜索隊に空爆を行い、足を止めたといいます。翌日、周辺を捉えた衛星画像には、道路上に空爆のものとみられる痕跡が捉えられていました。

その後、脱出の過程で予想外のことも起きました。乗組員を連れた特殊部隊は、避難用の輸送機が待つポイントに向かいましたが、輸送機2機が砂に埋もれるなどして離陸できなくなってしまったといいます。ただの輸送機ではありません。特殊作戦用に設計された最新鋭の戦術輸送機で、1機150億円はくだりません。それが2機、立ち往生という緊急事態。軍事機密の塊を残して去るわけにいかず、アメリカ軍は2機とも爆破。追加投入した別の機体でイランから脱出しました。1人の生存兵を救出するために費やした労力とコストは莫大です。
ウォール・ストリート・ジャーナル
「米当局者らは、イランがこのパイロットを捕らえた場合、解放のために最大限の要求を突きつけたり、敵の手に渡った様子をビデオに撮影したりするのではないかと懸念していた」

アメリカ軍には、敵地に誰も置き去りにしないという強い信念があります。イランに兵が捕えられたとなれば、トランプ政権へのダメージは計り知れないものになっていたかもしれません。まして、トランプ大統領は数日前「海軍も空軍も消滅。ミサイルはほぼ枯渇か破壊済みだ」と言っていました。しかし、それでも戦闘機は撃墜されました。
トランプ氏“期限”また延長か
CNNキャスター ジェイク・タッパー氏(5日放送)
「救出劇を受け、大統領はどう動くのか。その答えがこちらです。極めて過激な表現で『海峡開放か地獄か』と脅し、わずか1日の猶予を突き付けました。お子様がご覧の場合、大統領の言葉遣いにご注意を」

トランプ大統領のSNS
「さっさと海峡を開けやがれ。クレージーなロクデナシども。さもなければ地獄を見るぞ」
さらに数時間後、「火曜日、東部時間午後8時だ」という一文も投稿しています。これは、インフラ施設攻撃のデッドラインを6日月曜日までとしていたのを、まる1日遅らせたことを示していると思われます。交渉に応じなければ、インフラを壊滅させるという姿勢に変化はなく、例え国際法上の戦争犯罪であっても攻撃に踏み切る可能性があります。
トランプ大統領は日本時間7日午前2時から会見を行う予定です。今回の救出劇を絶賛し、自身の追い風にするつもりかもしれません。

一方で、海外メディアからは、仲介国のパキスタンが両国に停戦案を提示したという情報も聞こえてきます。アメリカのウィトコフ特使とイランのアラグチ外相がテキストメッセージで直接やり取りしていたとの報道もあり、交渉に進展が見られたことが期限の延期につながったという見方もされています。

ただ、街中に「ペルシャ湾は我々の狩場だ」と巨大な看板が登場したイラン。今のところ、少なくとも表面上は交渉に応じる兆候は感じられません。
イラン中央司令部報道官
「民間施設への攻撃を繰り返すならば、次なる報復作戦は、さらに壊滅的で広範に及び、敵の損害は倍増することになる」
