
アメリカとイランの再協議の行方が不透明な状況の中、アメリカがホルムズ海峡を“逆封鎖”しているが、イランには迂回(うかい)ルートが存在しているという。
【画像】アメリカの軍事的な圧力を回避する中国とイランの陸上ルート
イラン参加拒否の報道も
トランプ大統領は、ブルームバーグ(20日)の電話インタビューで「21日からイランとの協議を始める予定」だと答えた。また、停戦期限は22日の午後(日本時間23日午前)だとして、合意に至らなかった場合は戦闘を再開するとの見方を示したという。停戦期間が延長される可能性は「極めて低い」としている。
こうした中、アメリカの代表団が、イランとの再協議のためパキスタンに向かう。協議には、バンス副大統領、ウィトコフ中東担当特使、トランプ大統領の娘の夫・クシュナー氏が参加する予定だという。
協議が行われるのはパキスタンのイスラマバードだが、現地は厳戒態勢だということだ。
再協議は規制が厳しい官公庁エリアで開催される予定で、警察は最高レベルの警戒態勢を敷くとしている。BBC(19日)によると、前回協議が行われたホテルでは宿泊客が退去を始めているという。
一方、イランは再協議に慎重な姿勢を示している。背景には何があるのか。
イランの国営放送は19日、「アメリカの矛盾した発言や停戦合意違反の海上封鎖により、交渉の明るい見通しを期待できない」として、再協議への参加を拒否したと報道。さらに、トランプ大統領の圧力が裏目に出ているとの指摘も出ている。
トランプ大統領は19日に、ホルムズ海峡の海上封鎖を突破しようとしたイランの貨物船を拿捕(だほ)したと発表。イランの国営放送によると、イラン軍は「停戦違反」だと非難。協議開催がさらに不透明な状況になった。
また、アメリカへの疑念も払拭できていないといい、前回の協議に参加したイランのナバヴィアン議員は「終戦交渉はまやかしにすぎない。アメリカは軍事作戦再開の準備を進めている可能性がある」と指摘している。
一方で、ニューヨーク・タイムズ(20日)によると、イランも代表団をパキスタンに送り、協議に出席する予定だという。
イラン内部の対立が露呈?
イランが再協議を拒否する姿勢を示したのは、“ある異変”が原因かもしれない。
その“異変”について、イラン政権内で強硬派が台頭しているのではないかという報道もある。
イランのアラグチ外相は17日、SNSで「停戦期間中、ホルムズ海峡は完全に開放される」と発表。しかし、翌日、イランの革命防衛隊がSNSでホルムズ海峡の“再封鎖”を宣言した。つまりは、革命防衛隊と政治指導者の亀裂が露呈した形となった。
背景には何があったのだろうか。アメリカ「ウォール・ストリート・ジャーナル(19日)」によると、革命防衛隊は、アラグチ外相が調整なしにホルムズ開放を発表したことに憤慨していて、依然として報復を望み、軍事的に(アメリカより)優位に立っていると感じているとの分析もあるという。
また「ウォール・ストリート・ジャーナル(19日)」は、「この出来事は協議関係者が、強硬派の支持を得られていない可能性。イラン側に譲歩を求めるトランプ大統領にとって協議の困難さを示している」とも伝えている。
新たな物流ルートの課題
アメリカが「ホルムズ海峡」を“逆封鎖”しているが、イランには「迂回ルートが存在」しているという。
また、サウジアラビアは、新たな物流ルートを模索しているというが課題もあるようだ。
サウジアラビア鉄道公社のアル・マリクCEOは「新物流ルートの開設で、世界的なサプライチェーンの急速な変化の中でも国際貿易の円滑な流れを確保する」と話している。
サウジアラビア鉄道公社は10日、鉄道輸送と道路輸送を組み合わせた新物流ルートを開設すると発表した。ペルシャ湾沿岸から紅海沿岸へと向かう東西の物流ネットワークを強化することで、石油化学製品や鉱物資源の輸送の円滑化が期待されるとしている。
しかし、輸送量に課題もある。大型原油タンカーの1回の積載量は約30万キロリットルだが、鉄道は1本の列車で1000キロリットルほどで、運搬能力には約300倍の差がある。
アメリカによるホルムズ海峡の“逆封鎖”が続く中、イランにも、迂回ルートが存在しているという。
アメリカ中央軍のクーパー司令官は14日「イラン経済の9割は海上貿易により支えられている」と発言。アメリカによるホルムズ海峡の“逆封鎖”で石油輸出を阻止し、イランを経済的に締め付けるとしていたが、イランはすでに迂回ルートを確保しているとみられる。
CNN(14日)によると、イギリスのシンクタンク「国際戦略研究所」のアルハサン氏は、「イランはホルムズ海峡を迂回するルートを通じて石油輸出を拡大しようとする可能性がある」と指摘している。
具体的にイランは、カスピ海を通じてロシアなどと交易を行い、カスピ海にある「ネカ石油ターミナル」からも石油輸出を模索する可能性があるという。
CNN(14日)によると、一部の専門家は「トランプ氏はイランに経済的な痛手を負わせることで譲歩を迫れると考えている。しかしこれはイランにとっての痛みの限界値を読み間違えている可能性がある」と指摘しているといい、つまり、逆封鎖はイランにとって致命的な痛手ではないという。
直通鉄道で米の圧力回避
さらに、イランと中国をつなぐ、直通ルートもあるという。
ブルームバーグ(15日)によると中国は、原油の6割近くを中東に依存していて、トランプ氏は、ホルムズ海峡の“逆封鎖”で中国にも圧力をかけ、イランに再交渉に応じるよう、中国に説得させる狙いもあるという。
しかし、中国とイランには、日用品などを運ぶ陸上ルートがすでにあるといい、アルジャジーラによると2016年には、中国とイランを結ぶ直通鉄道が開通しているという。これが今後、石油の輸送ルートになる可能性もあるという。
地政学コンサルティング会社「スペシャル・ユーラシア」は「このルートはイランと中国にとって、アメリカの軍事的な圧力を受けない代替ルートとなりうる」としている。
(2026年4月21日放送分より)
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