
アメリカとイランの停戦は延長されましたが、ホルムズ海峡の封鎖は依然として続いています。原油の価格が高騰する中、番組に医療従事者から医療用品の不足についてメールが届きました。
「ニトリル足りない」
中東情勢の混乱の影響が日本にも広がる中、番組宛てに医療従事者から、こんなメールが届きました。
「戦争長期化となり、医療物品が値上がりそうです」
「ニトリルが無く厳しい!!」
「無くなったら現場どうするか!」
今不足しているという「ニトリル」とは何なのか。メールをくれた人が働く医療現場を訪ねました。
106人の看護師が在籍する「訪問看護ステーションブロッサム」では月に2回、福祉施設を訪問。利用者の健康状態を確認します。
その際、1人に対して1組の手袋を使用するため、8人の健康チェックを行うだけでも、かなりの量の手袋を消費します。
看護師が使う、石油由来の合成ゴムで作られている手袋。それが「ニトリル手袋」です。
原料となる「ナフサ」の高騰や品薄により、医療現場で欠かせない使い捨てのニトリル手袋にも大きな影響が出ているというのです。
ニトリル以外で代用は?
番組にメールをくれた、訪問看護ステーションブロッサムの西村直之社長はこう話します。
「(業者が)『メーカーから納期が未定ということを言われてしまった』というお知らせが、私たちにまず来ました。ただ、その納期が未定と言われても、実際のところ現場はニトリルグローブを使いますから。その時にですね、過去に使っていた業者の方に確認をしたら、在庫があると」
取り急ぎ、在庫確保をしようとするも…。
「ちょっと100円高いんですよ。でも、高くてもやはり医療を止められないんですね」
なんとかニトリル手袋の在庫を確保して訪問看護を続けていますが、ニトリル以外の手袋で代用することはできないのでしょうか?
「このニトリル製の方は柔らかいというのと、あとは(天然ゴム)アレルギーのあるお客様に対しては、非常に優しい素材と言われている」
天然ゴムアレルギーへの対策として使用されるニトリル製の手袋。プラスチック製も同じく天然ゴムアレルギーに対応してますが…。
「指の方に(テープを)付けます。こちらも指の方に付けます。付けた時に、同じ力で離してみるんですけど。これはニトリル製の青い方に関しては、要は手技がやりやすくて、(テープを)付けたりする時に付けやすいんですね。だから剥がれるんですよ。やっぱりニトリル製の方が非常にいいと言われてるんですね」
「(Q.処置がある時に?)そうです。こっち(プラスチック手袋)は全然取れないんですよ」
体温の計測やおむつ交換などで手袋を使用する際は、プラスチック製でも問題はないそうですが、傷口の処置など細かな作業をする場合は、ニトリル製の手袋の方が圧倒的にやりやすいといいます。
アルコール綿も不足
さらに、20日には納入業者からこんな知らせが届きました。
「昨今のイラン・中東情勢の緊迫化により、原油の高騰が続いております。これに伴い、石油化学製品の原材料価格が大きく上昇し、加えて海外輸送の遅延や物流コストの増加など、各メーカーの取り巻く環境は一層、不安定な状況となっております」
他の業者にもあたり、なんとか2カ月分ほどの在庫を確保することができましたが、悩みの種はニトリル手袋の供給不足だけではありません。西村社長はこう話します。
「値上げ交渉というものも、実は始まっているんですよ。アルコールの綿なんですね。体温計を拭いたり、血圧計の一部を拭いたり、衛生面で拭くもの。(1箱あたり)20円~30円の値上げの話が来たんですよ。会社が負担をしてもですね、診療報酬や介護報酬というものは、当然これは一切変わらないわけですね。そこにプラスするわけには当然いかない」
医療資材の仕入れ価格が上がっても、診療報酬は国で定められているため、料金に転嫁することはできません。そのため、会社の利益を圧迫することになります。
「命を守り、くらしを守ることになりますから、そこを守るというところを考えるのであれば、もう会社が持ち出しをして、使命感としてやっていくしかない」
医療用品入手困難の実態
石油由来の医療用品の不足については連日、国会でも問題となっています。
立憲民主党 田名部匡代幹事長
「ちょっと頭をよぎるのはですね、令和のコメ騒動の際、私たちは繰り返し不足しているのではないかということを申し上げた。その際にですね、政府はずっと市場にコメはあるんだと、量は足りているんだと言って、結果として不足だったわけです。積極的に政府として調査するなど、どうなっているのかという実態把握に努めていただきたいと思いますが、総理いかがですか」
高市早苗総理大臣
「今例えばナフサも含みますけれども、さまざまな製品についてですね、これはもう赤沢大臣のところでまず情報集約してほしいと。そして、必要なものは赤沢大臣に伝える。そのタスクフォースの下で目詰まりを解消していく。こういった取り組みを日々続けております」
川崎市のクリニックでは、この国会のやり取りを聞いた患者が医療用品の在庫について不安を口にしました。
患者
「来る途中にラジオで国会中継を聞いていて、質問していたんですね。先生のところのストックレベルといいますか、それを全然心配していないんですか?」
川崎中央クリニック 市村真也院長
「実は、物がちょっと不足し始めてきた。まだ現状、診療においては別に問題があるわけではないですが、例えば手袋とかナフサ由来のものが、ちょっと物流が悪くなってきているのは事実なんですよね。患者さんにご迷惑がかからないかが、本当に心配なんですよ」
こう話すのは、川崎中央クリニックの市村真也院長。医療用品の倉庫を見せてもらいました。
医療用品への影響が現実に
市村院長
「医療の世界では、石油化学由来のものが非常にたくさんあります。例えば点滴。このパックですね。あと、点滴のチューブですね。点滴をしたところに貼るシール、こちらもそうですし。輸液のセットですね。あとは注射器。もう多岐にわたるものが石油化学由来の製品です。ほぼ100%といっても過言ではないと思います」
アメリカによるイランへの攻撃が始まった直後から、医療用品への影響を危惧していた市村院長。その心配が現実のものになったといいます。
「手袋だったりエプロンが入ってはくるんですけれども、その数が我々が発注した分が入ってこないとか。この手袋を10箱発注したところ、6箱しか供給できないというふうに言われました。次にどうなるかが問屋・卸の方から分からないと言われておりまして。我々1~2カ月分ぐらいはストックとしてありますので、今すぐなくなるということはないんですけれども、これが長期化してくると、どうなってくるか私も想像ができない」
(2026年4月23日放送分より)
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