
岩手県大槌町で22日で発生した山林火災は、丸1日が経過しても燃え広がっています。火の手は住宅地の近くまで迫っていて、消防は夜通しで消火活動を続けるとしています。
【画像】【報ステ解説】延焼の原因は?変化する風向きにも警戒 岩手・山林火災2日目
延焼拡大 新たに避難指示も

22日午後2時前、最初に火災発生の通報があったのが小鎚地区です。その約2時間半後、約10キロ離れた吉里吉里地区でも火災発生の通報がありました。さらに、23日に沢山の辺りでも火が確認されたということです。延焼範囲の確認が進められない状況で、23日朝の段階で分かっているのは、小鎚地区で約23ヘクタール、吉里吉里地区周辺で約178ヘクタール、合わせて約201ヘクタールまで燃え広がったということです。小鎚地区で住宅や物置など7棟が焼け、避難指示の対象は1229世帯2588人に拡大しています。

山林火災のメカニズムなどに詳しく、去年の大船渡の山林火災の際も現地に何度も調査に訪れた、千葉大学の峠嘉哉准教授に聞きます。
(Q.10キロほど離れた2つの地区で、近い時間帯に火災が発生しています。飛び火の可能性は考えられますか)
千葉大学 峠嘉哉准教授
「飛び火というより、独立した林野火災が起きたと考えています。2カ所の距離が約10キロ離れていて、簡単に飛ぶ距離ではありません。飛び火が起こったのであれば、2カ所の間にある山林でも火災が起こると思います。遠く離れた所にピンポイントで飛び火をするのは考えにくいので、それぞれ独立した事例だと考えています」
(Q.火災の原因として何が考えられますか)

千葉大学 峠嘉哉准教授
「林野火災の原因を議論する際には“出火要因”と“環境要因”を切り分ける必要があります。出火要因については、日本の林野火災の98.8%は人為的な失火によるものです。今回の火災の原因はまだ分かっていませんが、人為的なものだった可能性は高いです。環境要因はいくつかありますが、例えば乾燥や強風といった気象条件。22日に関しては、釜石観測所では相対湿度9%を観測していて、非常に極端な乾燥が起こっていました。また、強風注意報が出るような強い風がありました。そして、針葉樹の燃えやすさもあります。スギやマツみたいに葉っぱに油分を含んでいる樹種に関しては、一度燃えると燃焼が強くなります。燃焼が強いということは、その分、延焼速度が速くなり、大規模化の要因になります。あと、スギやマツはこの時期、まだ葉っぱがついています。葉っぱがあるが故に“樹冠火”が起こり得ることも要因としてあります」

火災はなぜ広範囲に広がったのでしょうか。日本の山林火災の広がり方として、落ち葉や草など地表にある物が燃える“地表火”、木の枝や葉っぱが燃える“樹冠火”があります。地表火から樹冠火の順に、林野火災における燃え広がる強さが増すということです。
(Q.今回はどの段階までいったと考えられますか)
千葉大学 峠嘉哉准教授
「今回は樹冠火が起こった可能性が非常に高いとみています。焼損面積が報告されているところでは200ヘクタール。日本で200ヘクタールは数年に1回しか起こらないくらいの非常に大きいサイズです。約24時間の短い時間で、そこまで至ってしまった燃焼速度の速さを考えると、樹冠火が起こった可能性が高いです。映像を見ると、地表が燃える勢いがすごく強くて、風にあおられていることが分かります。地上の勢いが強くて、葉っぱまで至りそうになっています。ここまで火炎が大きくなっていると、葉っぱまで燃えていると思います。そうすると、葉っぱから葉っぱに延焼する樹冠火が起きている可能性が高いと思います」
今後も少雨か 風向きにも注意
大槌町付近はこの先も晴れる日が多く、空気の乾燥が続く予想です。28日に雨が降る予想ですが、強く降るのは一時的となりそうです。また今後、目まぐるしく風向きが急変する可能性があり、注意が必要です。
(Q.今後も雨が期待できないとなると、大船渡の時と同じく山林火災が長引く可能性が心配になりますね)
千葉大学 峠嘉哉准教授
「ここまで焼失面積が大きくなってしまった事例では、消防活動は簡単に行かない状況になります。サイズが大きい故に一方を消火しても反対側が大きくなってしまうような、手が付けられない状態にあるとみています。雨が降ることを期待したいですが、なかなか雨が降らないとなると難しい状況だと思います。リアス式海岸の地形が急峻な所ですので、ポンプ車が入れず、消防士たちが山の奥に分け入ってホースを持って行かないといけません。ホースを長く連結していくと水圧も弱くなっていくので、水をかけるのも難しい状況になります。山の中に水を確保するのも難しいので、海から水を引かないといけない場面もあると思います」
(Q.大槌町では風の変化が大きくなっています。ここから分かることはありますか)

千葉大学 峠嘉哉准教授
「ポイントは2つだと思います。風が西から東に流れる時に、山を越えて大槌町に向かって吹き下ろすような、風の流れがあります。風が山を乗り越える時に、風下で乾燥が強くなるフェーン現象が起きます。2つ目のポイントは、風向きの急激な変化。例えば2017年の釜石の事例においても、初日と2日目で風向きが大きく変わったことによって、新しく避難指示が出る所も生じました。大船渡の事例においても、出火してから3~4日目のタイミングで突然、風が強くなって風向きが変わりました。そこで樹冠火が起こって住宅が燃える事例がありました。風向きの変化、風の急激な強くなり方をみると、自分の住んでいる所に突然、避難指示が出ることを想定して、いつでも逃げられるような準備をしておくことが必要だと思います」
(Q.避難の際に気を付けるべきことはありますか)
千葉大学 峠嘉哉准教授
「樹冠火が懸念される事例では、飛び火が起こる可能性もあります。飛び火は、避難する時に窓が開いている状態だと、飛び火が窓の中に入ってしまいます。部屋の中の物は乾燥しているので、飛び火によって火災が起こりやすくなります。ですから、避難する前に洗濯物や可燃物を片付けたり、窓を閉めてから避難することが必要になってくると思います」
