
高市政権は21日、殺傷能力のある武器の輸出を原則可能とする閣議決定をした。平和国家の理念を変えることなく、防衛産業を成長させていくとは、どういうことなのだろうか。
【画像】戦闘行われている国には原則輸出不可能も…例外的に輸出認める「特段の事情」とは?
これまで、自衛隊に特化してきた日本の防衛産業。今後、民間企業の成長が必要な理由とは何なのか。
“武器輸出”解禁の狙い
高市総理は21日の会見で、国際的な安全保障環境の変化を受け、「どの国も1カ国のみでは自国の平和と安全を守ることはできなくなっている」と述べ、防衛装備品で互いを支え合うパートナーの重要性を強調した。
この会見前、政府は防衛装備品の海外輸出に関するルールを定める防衛装備移転3原則と、その運用指針の改定を閣議決定していた。
これまで輸出可能な防衛装備品は、非戦闘目的の5類型(救難、輸送、警戒、監視、掃海)に限定されていたが、これを撤廃し、“殺傷能力を持つ武器”の輸出が原則可能になった。具体的には戦闘機、護衛艦、潜水艦、ミサイルなどが該当する。
輸出解禁には、どんな狙いがあるのか。
高市早苗総理大臣は、同志国の防衛力が向上すると、「紛争の発生を未然に防止できる」と説明している。また「同志国が日本と同じ装備品を保有していれば、部品などを相互に融通できる」としている。
「武器」輸出は17カ国に限定
武器の輸出について懸念されているのが、輸出先だ。
今回の改正により、防衛装備品は殺傷能力がある「武器」と殺傷能力がない「非武器」に分類されることになった。
「非武器」については輸出先に制限はないが、「武器」はアメリカ、イギリス、オーストラリアなど、日本政府と防衛装備品・技術移転協定を結んだ17カ国に限定される。
また、この17カ国のなかでも、現に戦闘が行われている国には原則輸出は不可能となっている。ただし、安全保障上の必要性を考慮し、“特段の事情”がある場合は例外的に輸出を認めるとしている。
輸出の可否を決めるのは、総理大臣をトップとし、大臣らで構成される「国家安全保障会議」である。この会議で議論し輸出を認めると判断・公表した際には、国会議員に書面で事後的に通知するという。
また、輸出を決めるにあたっては、相手国やその周辺に及ぼす影響などを審査し、輸出後も保全や管理状況をモニタリングすることで、際限のない輸出に歯止めをかけたい考えだという。
“特段の事情”どんなケース?
では、例外的に輸出を認める“特段の事情”とは、どんなケースが考えられるのか。
例えば今後、アメリカがイランとの戦闘を続けるなかで、武器の在庫が減ったアメリカから要請があった場合、それを“特段の事情”と位置付け輸出を行うことも、制度上は可能であると解釈できる。
こうしたことから野党側から、モニタリングなど輸出を認めるルールについて「実効性に欠ける」などの指摘が出ている。
防衛産業の現状
これまで、自衛隊に特化してきた日本の防衛産業。今後、民間企業の成長が必要な理由とは何か。
日本の防衛生産・技術基盤を支える防衛産業は「日本の防衛力そのもの」と言われている。つまり、防衛産業に関わる民間企業の利益を継続的に確保することが、必要不可欠であると考えられている。
こうしたことから、政府の防衛力整備計画では2027年度までの5年間で予算を43兆円程度とし、今年度は前年度比3.8%増で過去最高の9兆353億円の予算を付けた。
また、ストックホルム国際平和研究所が発表した2023~2024年の国別の武器売上高の延び率を現したグラフでは、日本は伸び率40%でトップとなっている。ただし日本の場合、武器の販売先は原則として自衛隊のみである。
こうしたなか、高市政権は防衛産業を17の戦略分野の1つに位置付けている。
この17の戦略分野とは、政府が大胆な投資促進を行う対象として位置付ける分野であり、つまり国として防衛産業を成長産業にしていきたいという意図のあらわれである。
英国企業に成長のヒント
では、日本の防衛産業の成長に、なぜ輸出が必要なのか。
2024年の世界の兵器製造・軍需企業の売上高トップ10を見ると、10社のうちアメリカが6社、中国が2社、ロシアとイギリスが1社ずつで、日本企業は最上位でも32位と少し出遅れている。
こうしたなか、4位のイギリスの企業に日本の防衛産業成長のヒントがあるという。
地経学研究所の主任研究員・小木洋人氏によると、イギリスの防衛・宇宙航空システムの開発製造を行うBAEシステムズは、売上比率が国内2割に対し輸出が8割を占め、これが“成長のカギ”だと指摘する。
アメリカ、中国、ロシアなどの大国は防衛産業も内需だけで成長が期待できるが、イギリスや日本などは輸出が重要だということである。
(2026年4月24日放送分より)
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