【報ステ解説】UAE“OPEC脱退”の衝撃 原油価格と日本への影響は

【報ステ解説】UAE“OPEC脱退”の衝撃 原油価格と日本への影響は
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現在、中東やアフリカなど12カ国の産油国で構成されているOPEC=石油輸出国機構。ホルムズ海峡の封鎖が続く中、UAE=アラブ首長国連邦が脱退すると発表しました。他の加盟国より面積は小さいですが、日本にとっては最大の原油調達先です。OPEC脱退でどんな影響が出てくるのでしょうか。

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“国益追求”と声明「制約取り払う」

UAEの声明は国営通信社によって発表されました。

UAEの声明(28日発表)
「2026年5月1日をもってOPECから脱退をします。私たちの国益の追求に軸足を置く時が来ました」

世界の原油生産量
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世界第8位の原油生産量を誇る中東の国UAE。OPEC脱退はメディア各社が速報で伝えました。発表直後のCNNにUAEのエネルギー相が出演し、脱退理由を説明しました。

UAE マズルーイエネルギー相
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UAE マズルーイエネルギー相
「ホルムズ海峡の現状や備蓄の放出量を踏まえ、異なる対応、未来の成長を見据えた対応が求められています。世界のエネルギー需要が増える中“制約”を取り払う必要があります」

「制約を取り払う」、OPECのことです。

減産か増産か“盟主”サウジと対立

OPEC
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OPECは1960年に設立されました。当時は採掘や価格決定に欧米の石油メジャーが大きな影響力を持っていたため、対抗する形で作られました。UAEはこの時、まだメンバーではありません。その後、加盟国を増やし、国際社会への影響力を高めていき、1973年に禁輸・減産に踏み切った時はオイルショックを引き起こすまでになります。

二階堂進官房長官(当時)
「消費者も買い急ぎ・買いだめ等に走ることがないよう、お互いに自粛するならば、今回の事態は必ず乗り切れる」

その後も供給量を通じて価格に影響を及ぼし、石油カルテルとして世界のエネルギー市場を動かしてきました。近年のOPECで主導権を握ってきたのはサウジアラビアです。余剰生産能力が加盟国の中で1番あるからです。

英国王立防衛安全保障研究所 ボーク上級研究員
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英国王立防衛安全保障研究所 ボーク上級研究員
「サウジアラビア産原油を直接輸入していない国でさえ、サウジアラビアの石油政策の影響を受けることになる」

一方で“価格を支えるために減産したいサウジ”と“増産して外貨を稼ぎたい他の加盟国”で対立も起きていました。UAEも不満を募らせていた1カ国です。

2020年
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対立が顕著になったのは2020年。コロナ禍により石油は需要が一気に減り、OPECは大幅な減産を決定します。問題はその後、終息を見据えた出口戦略でサウジとUAEが対立しました。

大幅減産を維持したいサウジ。

サウジアラビア アブドルアジズエネルギー相
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サウジアラビア アブドルアジズエネルギー相
「コロナ禍の影響を軽減してきたが、改めて注意と警戒を促したい」

1日も早く増産したいUAE。

UAE マズルーイエネルギー相
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UAE マズルーイエネルギー相
「減産の延長は現実的ではない。それはまったく不公平だ」

この頃からUAEは脱炭素時代を見据えた動きを活発化させます。

UAE マズルーイエネルギー相
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UAE マズルーイエネルギー相
「世界の消費者は、エネルギー高騰で5倍になった光熱費を払えません」

日本最大の原油調達先 影響は…

今回のOPEC脱退は時間の問題だったという見方がされています。

原油調達先
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今後、石油市場などがどうなっていくのか、その見通しは立っていません。ただ、UAEは日本にとって最大の原油調達国です。影響はないのでしょうか。先週、UAEの駐日大使はANNの取材に対し、このように話していました。

UAE ファヒーム駐日大使
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UAE ファヒーム駐日大使
(Q.日本向け原油の安定供給は保てるか)
「UAEが初めて石油を輸出したのは日本で1962年のことです。UAEは日本の安定した信頼できる資源供給国であり続けます」

出光丸
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28日、出光興産の石油タンカー『出光丸』がホルムズ海峡を通過したことが分かりました。日本政府が交渉に関与し、通航料は払っていないとされています。また、イラン大使館は「両国間の長きにわたる友情の証」としています。ただ、ホルムズ海峡が開いていない以上、不安定な状態は続いたままです。

UAE ファヒーム駐日大使
「(海峡の外側の)フジャイラ港とパイプラインをフル稼働させ、今1日約190万バレルの石油を生産しています。日本の超大型原油タンカーが約42隻、貿易ルート上で足止めされている。私たちはその対応に全力を尽くしています」

なぜ今…決断の背景は

中東調査会・主任研究員 高橋雅英さん
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中東調査会・主任研究員の高橋雅英さんに聞きます。

中東調査会・主任研究員 高橋雅英さん
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(Q.UAEがOPECからの脱退を発表したタイミング、理由はどこにありますか)

中東調査会・主任研究員 高橋雅英さん
「UAEが原油の増産を急ぐ理由は、脱炭素化による石油需要の停滞を見据えていることに加え、AI(人工知能)産業や防衛産業といった経済の多角化を加速するための投資資金を必要としている。そのためには、原油を増産して高値で売り、石油資源を早く現金化するところにあると思います。一方で、サウジアラビアなどのOPEC加盟国に気を使って、規定の生産量を守らないといけないジレンマを抱えていました。そんな中、情勢が悪化してホルムズ海峡の通航ができず、UAEも原油量が半分ほどしか輸出できていません。そうすると、損失額もどんどん膨らんでいきます。今後、戦闘の長期化を考えた時に、今のうちに増産体制を作ることで、ホルムズ海峡が開放されたら、すぐに原油を輸出できるようにする。そうすることで、損失額の補填や、石油市場でのシェア確保を狙っていると考えています」

フジャイラ港
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(Q.原油価格には、どんな影響が出ると考えられますか)

中東調査会・主任研究員 高橋雅英さん
「短期的な影響と長期的な影響、両方を見る必要があります。短期的には、ホルムズ海峡が通航できないことで、UAEも主要な港が使えない状況で、ホルムズ海峡の外側にあるフジャイラ港を使うことで生産量の半分ほどは輸出できているんですが、増産してもすぐには市場に出せません。長期的には、戦闘終結とホルムズ海峡の開放が大前提ですが、恐らくUAEの原油増産につられて、他の産油国も自分たちのシェアを守ろうと増産に踏み切ると思います。そうなれば、原油価格が3~5%は下がると見ています。減少幅としても大きいと思います」

(Q.UAEにつられて、仮に各国が一気に増産に踏み切ると、中東の盟主・サウジアラビアの面子が潰される形になりますか)

中東調査会・主任研究員 高橋雅英さん
「サウジアラビアの面子は潰される形にはなってしまいます。これまで生産調整をサウジアラビアが主導して、油価を上昇させるためにコントロールしていましたが、それが効かなくなってしまう。サウジアラビアも今後、対抗策として、UAEの輸出先に対してサウジ産の原油を売り込むといった、シェアの奪い合いが予想されます。そうなると、原油価格がさらに下落することによって、高値で売りたい産油国が思い描いていたシナリオにはならないかもしれません」

原油価格と日本への影響は

(Q.原油価格が下がると、輸入する側の日本にとっては良いことですか)

中東調査会・主任研究員 高橋雅英さん
「ガソリン価格が下がるのは、日本にとって良いことで、特にUAEとの関係は日本にとって重要です。ここ2年、UAEが最大の原油調達先であるのと、日本のエネルギー会社がUAEの石油の生産活動に直接関与できています。これは世界で見ても数少ない国です。そうしたUAEが増産して、安定的に調達できれば、日本のガソリン価格も下がることが期待できます。一方で、そうなると、サウジアラビア産の原油を買わないんじゃないかと見られると、日本とサウジアラビアの関係が冷え込んでいく恐れもあります」

(Q.日本の輸入先はUAEが一番多いと言っても、それに匹敵する量をサウジアラビアから買っています。サウジアラビアとの付き合いを減らす訳にもいかないですよね)

中東調査会・主任研究員 高橋雅英さん
「UAEとサウジアラビアで8割を占めている状況ですので、サウジアラビアが今後、地域の大国として経済発展を見据える上で、日本はサウジアラビアとの関係を維持していく必要があります。そのため、非常に難しいかじ取りが必要になると思います」

中東の“パワーバランス”

中東調査会・主任研究員 高橋雅英さん
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(Q.今後、中東のパワーバランスが崩れていく心配はありますか)

中東調査会・主任研究員 高橋雅英さん
「今回の件で、直ちにパワーバランスが大きく崩れることはないと思います。ただ、これまで湾岸諸国は、政治的にも経済的にも、ある程度の一体感を持って連携していました。去年秋の、主要国のサウジアラビアとUAEの地域情勢をめぐる利害対立に続き、今回、UAEが一方的なOPEC脱退で、両国関係にひずみが生まれ、全体としてまとまりがなくなってしまう。各国がバラバラな状況はイランにとって都合がよくて、イランの存在が今後ますます強まっていくとみています」

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