
中東やウクライナで戦い方が変わる中、日本の防衛が大きな転換点を迎えている。安全保障政策の基本方針となる安保3文書改定に向けた有識者会議がスタートし、高市早苗総理大臣は「国家の命運を左右する取り組み」と強調した。
安保3文書の改定を年末までに
高市政権の肝煎り(きもいり)「安保関連3文書」の改定について見ていく。
まず「安保3文書」とは、日本の外交・安全保障政策の基本的な方針となる3つの文書のこと。
上位の文書から見ていくと、「国家安全保障戦略」はおおむね10年後を見据えた基本方針を示したもので、2013年に初めて策定された。「国家防衛戦略」は基本方針を踏まえた戦略や防衛力の目標を示したもの。そして「防衛力整備計画」は目標に向けた5年間の装備や予算を示したもの。
安保3文書は、前回は2022年岸田政権下で改定され、「反撃能力の保有」が明記された。
今回、高市総理は「一層厳しさを増す安全保障環境の中で一刻の猶予もなく、わが国の抑止力と対処力を強化する必要がある」としていて、年末までに3文書を改訂する方針を示している。
27日には改定に向けた有識者会議の初会合が開かれた。有識者会議の主なメンバーは、経済安保に詳しい東京大学大学院教授の鈴木一人さんが参加しているほか、ウクライナ情勢に詳しい筑波大学の東野篤子教授。AIに詳しい東京大学大学院の松尾豊教授、自衛隊出身の元統合幕僚長・山崎幸二氏など15人が参加している。
焦点は「新しい戦い方」「長期戦への備え」
では、安保3文書の何を変えようとしているのだろうか。焦点の一つ「新しい戦い方」について詳しく見ていく。
高市総理は27日の有識者会議で「ロシアのウクライナ侵略や中東情勢を教訓に、新しい戦い方への対応や長期戦への備えを進めなければならない」と述べた。
発言にあった「新しい戦い方」「長期戦への備え」とは一体どういうことなのか。
ロシアによるウクライナ侵攻は4年に及ぶ長期戦になっているが、ラトビアの情報機関の2025年の年次報告によると、ウクライナとロシア両軍の死傷者のうち7割~8割がドローン攻撃によるものだという。安価で短期間で生産可能なドローンが戦場の主役になりつつあり、現代戦の様相を変化させている。
13日、ゼレンスキー大統領は演説で、ウクライナは無人機と無人戦闘車両だけを使った作戦で、ロシア軍から陣地を奪還したと表明した。
また、新しい戦い方はイランでも起きている。イランは安価なドローンによる攻撃で、アメリカ・イスラエルの高価なミサイルを消耗させていて、CNNによると、アメリカは迎撃ミサイルなど在庫の約半数を使い切ったという。
では、日本の防衛をどう変えようとしているのだろうか。政府は、安保3文書の改定で、ドローンを国内で大量調達できる生産基盤の整備を打ち出す方針で、長期戦を想定した国内防衛産業の基盤強化も議論される見通しだという。
では、ドローンに関する日本の現状はどうなっているのか。経済産業省によると、ドローンの世界市場では中国メーカー5社が8割のシェアを持ち、日本の産業用途でも中国製が9割で、日本のメーカーは3%にとどまる。日本の防衛分野では新興のスタートアップ企業が先行するものの、量産体制は不十分だという。
また、日本の防衛産業だが、販路が限られているということがあるようだ。今月、全面解禁されたが、これまで「防衛装備移転3原則」に基づき、輸出は厳しく制限されてきた。帝国データバンクによると、2013年からの10年間で100社以上が事業から撤退したという。
こうした中、政府は生産設備を国有化して民間企業に委託して生産することを検討しているといい、安保3文書と新たに策定する防衛産業に関する戦略文書に反映させる考えだという。
軍拡進める中国の狙いは
日本の防衛力強化に中国が懸念を示している。その中国は軍拡を進めているが、狙いはどこにあるのだろうか。
中国は現在3隻の空母を就役させている。中国は人民解放軍海軍の創建記念日に合わせ、4隻目の空母が初の原子力艦となることを示唆する動画を公開したという。
中国は、習近平国家主席の目標として、21世紀半ばまでに「世界一流の軍隊」を築くとしている。その第1段階として、人民解放軍の創建100年目の2027年までに軍装備の近代化を図るとしている。
その言葉通り中国の国防費は右肩上がりで、中国政府は先月、今年の国防費が前年比7%増の約43兆4000億円と発表したが、中国はGDPも増えているため、去年の対GDP比では1.27%程度となっている。
ちなみに今年度の日本の防衛関連費は約10兆6000億円で、対GDP比は1.9%となっている。
そして、去年の日中の勢力を比較すると、陸上部隊の人員は、中国が96万人に対し、日本は13万人。近代的戦闘機は、中国が1668機に対し、日本は330機。空母は、中国が3隻に対し、日本は0隻などとなっていて、数のうえでは中国が日本を圧倒している。
中国、脱中国けん制 レアアース輸出も
軍拡を進める中、中国は経済を他国へのカードとして使っています。
中国が“経済を武器化している”との指摘もある中、新たな動きも出てきている。
ニューヨーク・タイムズによると、中国政府は今月、中国に進出した外国企業が不当に中国企業との取引を停止したり、中国国内から工場を他国へ移転させたりした場合、外国企業を処罰できる新たな規制を発効した。サプライチェーンの多角化など企業の脱中国の動きを牽制(けんせい)したものとみられている。
そして、中国が経済外交カードとして使っているのが、レアアース磁石などだという。日本に対しては今年1月から対日輸出管理規制をより厳格化した。中国税関総署が20日に発表した3月の日本へのレアアース磁石の輸出量は前月比17.3%減となり、影響が大きくなっている可能性がある。
去年10月の米中首脳会談で、アメリカ側は中国が強化していたレアアース磁石などの輸出規制停止に同意したと発表していたが、アメリカへの輸出も減少が続き、3月は前月比で9.5%減だった。
トランプ大統領は来月14・15日に中国の訪問を予定しているが、その際の首脳会談で、レアアースの安定供給を求める可能性があるという。
(2026年4月30日放送分より)
この記事の画像一覧
