UAEがOPEC脱退表明 ホルムズ海峡の封鎖長期化の中 背景にサウジとの“対立”

UAEがOPEC脱退表明 ホルムズ海峡の封鎖長期化の中 背景にサウジとの“対立”
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  ホルムズ海峡の封鎖が長引く中、日本にとって最大の原油調達先、UAE=アラブ首長国連邦がOPEC=石油輸出国機構からの脱退を表明した。背景には“中東の盟主”といわれる、サウジアラビアとの石油政策を巡る対立があるようだ。

【画像】湾岸諸国の安全保障政策 2つの選択肢とは

「設立以来、最大の打撃」

 改めて、UAEとはどのような国なのか。

OPEC脱退を表明したUAE
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 UAEは1971年に独立した、7つの首長国からなる国だ。アラビア半島の東部・ペルシャ湾南岸に位置し、国土は日本の4分の1ほどで人口は約1006万人。首都はアブダビで、観光や金融で発展した国際都市ドバイなどがある。現在の国家元首はムハンマド大統領だ。

 そのUAEが5月1日付での脱退を表明したのが、OPEC(石油輸出国機構)。1960年、サウジアラビアを始めとした5つの産油国によって設立され、UAE=当時のアブダビは1967年に途中加盟している。

 そもそもOPECは、当時、原油市場に大きな影響力を持っていた欧米の石油メジャーに対抗する形で作られた。原油の生産量を調整し、価格を安定させる役割を担ってきた。

 そのOPEC加盟国の国別原油生産量をみると、UAEは、サウジアラビア、イラクに次いで3番目に多い。これまで、OPECは2019年にはカタール、2020年にはエクアドル、2024年にはアンゴラが脱退し、加盟12カ国となっていたが、UAEは生産量3位を誇るとあって今回のOPEC脱退について、欧米メディアは「1960年の設立以来、最大の打撃」と伝えている。

サウジとの“対立”とは?

 OPEC脱退を表明したUAE。背景にあったとみられるのが、“中東の盟主”サウジアラビアとの対立だ。

経済事情が異なるUAEとサウジ
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 朝日新聞によると、原油生産についてサウジアラビアは、生産を抑制することで価格低下を避けたいのに対し、UAEは、OPECが決めた生産枠に不満を抱き、増産を希望していたため長年対立してきた。つまり、UAEは原油をもっと売りたいという考えだ。

 そんな両国は現在、経済事情も異なる。ブルームバーグによると、近年は世界的な脱炭素の流れで、原油価格が下落したことから、経済を石油に依存するサウジアラビアは2023年、財政赤字に転落。

 一方UAEは、脱炭素化による原油需要の停滞を見据え、金融サービスや観光業など経済の多角化を進めてきたことから、財政黒字を維持している。

 ではUAEはOPEC脱退後、どのように原油を売ろうとしているのか?

ホルムズ海峡を経由せずに輸送
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 今後の輸出の方法についてUAEトゥデイによると、西側にあるハブシャン油田から、東側にあるフジャイラ港までを結ぶ400キロのパイプラインを活用。ホルムズ海峡を経由せずに一日180万バレルを輸送できるという。

米と関係強化を模索か

 安全保障の見直しも狙いなのだろうか。UAEは、アメリカやイスラエルとの関係強化を模索している。

イランから多くの報復攻撃を受けたUAE
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 アメリカ・トランプ大統領は2018年、国連総会での演説で「OPECとOPEC加盟国は、相変わらず世界中の国々を搾取している」と主張。アメリカが湾岸諸国を“無償”で防衛しているにも関わらず、OPEC加盟国は石油価格を吊り上げていて「気に入らない」との考えを示していた。

 一方、今回のアメリカ・イスラエルによるイランとの軍事衝突で、湾岸諸国はイランの報復攻撃を受けた。とりわけ多くの攻撃を受けたのがUAEで、軍事施設から民間施設まで48カ所にも上る。3月には、ドバイ国際空港がドローン攻撃で大きな被害を受けた。

 こうした中、UAEはサウジなどの湾岸諸国と距離を置き、アメリカとの関係を強化することで、新たな安全保障体制を模索しているのではないかという。

 では、UAEが目指す安全保障とはどんなものなのか?

湾岸諸国の安全保障政策 2つの選択肢とは
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 中東情勢に詳しい、アジア経済研究所の齋藤純研究員によると、湾岸諸国の安全保障政策には大きく2つの選択肢があり、ポイントは「イランへの態度」で分かれるという。まず一つは、アメリカやイスラエルとの関係強化。つまり「イランと対峙(たいじ)」するというもので、UAEはこの対応をとった。

 もう一つは、アメリカ一辺倒でない安保体制を構築。つまり、イランとの衝突を回避することで、サウジアラビアはこのスタンスだ。

 そうした中、UAEからの要望を受け、イスラエルは「アイアンドーム」という自国の最新防空システムを提供した。この両国の関係強化の背景にあるのが、2020年の「アブラハム合意」だ。第1次トランプ政権の仲介のもと、UAEやバーレーンなどの湾岸諸国は、イスラエルと国交を樹立していた。

 一方、サウジアラビアは、別の安全保障体制を模索している。

トルコも参加を模索
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 イラン情勢の緊迫化を受け、サウジアラビアは核兵器を保有し、アメリカ・イランとの協議を仲介したパキスタン、NATO加盟国で兵器産業が成長しているトルコ、さらに、アラブ最大の軍事力を誇るエジプトと、この2カ月で3回にわたり4カ国の外相協議を行った。

 去年9月にはサウジアラビアとパキスタンが、戦略的相互防衛協定を結んだ。これは「いずれかの国に対するいかなる侵略も両国に対する侵略とみなされる」というもの。

 ブルームバーグによると、トルコも参加を模索しているという。

(2026年5月1日放送分より)

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