
埼玉・秩父地方に点在する34カ所の霊場を巡る巡礼の旅「秩父札所巡り」。実は今年は「12年に一度の特別な年」で空前の盛り上がりを見せています。外国人も注目する、その魅力を追跡しました。
今年は「特別な年」
オーストラリアから来た人
「秩父の34観音を見るために来ました」
フランスから来た人
「フランスから。アビニョン」
今、外国人やシニアに人気の“秩父”。しかも、今年は「特別な年」だといいます。
東京・池袋から特急電車でおよそ1時間半の埼玉県秩父地方。まさにこれからの季節が見頃。見渡す限り、「芝桜の丘」の絶景や壮大な自然を体感できる長瀞ライン下りなどが人気ですが…。ご覧の通り、シニア達が続々と訪れています。今、ここ秩父に詰めかけている、そのワケが…。
女性
「秩父の色んな所を回ると、フッと色んな疲れが取れる気がする」
皆さんの目的が、点在する34カ所の寺院を巡る秩父札所巡礼。まつられた観音様を巡り、願いを込めれば、ご利益があるとされています。
さらに今年は、実は12年に一度の「午歳(うまどし)総開帳」の年。普段は見ることができない、34体すべての観音様に直接お参りでき、秩父全域が“ご利益スポット”になるともいわれる「特別な年」なんです。
女性
「優しいね」
「顔がはっきり見える」
「目が合っています。『ようこそ』って」
「ドキドキワクワクして開けられた瞬間、バーッとすごいものを感じました」
こちらの60代の男性。12年前にも秩父巡礼をしていました。
「この体で札所巡りって、リハビリにもなります」
「一生ベッドでの生活か、うまくいって車椅子っていわれたんです。でもここまで動くようになったから」
観音様をお参りすることが励みとなり、つらいリハビリも頑張れていると言います。
「ご開帳なので、ごあいさつを申し上げる感じ。また12年後に来ますよって」
1人で巡礼 18歳外国人
巡礼のスタート地点となる一番札所・四萬部寺。ここで出会ったのが、オーストラリアから1人でやってきたジェームズさん。なんとまだ18歳です。
「(Q.日本好きですか?)はい、好きです」
中学から日本語を学び、日本文化に魅せられたという大の日本好きです。
「(Q.日本文化何が好き?)全部好きです」
ネットで秩父巡礼を知り、どうしても体験したいと、アルバイトで資金を作り、1人で来日しました。
秩父巡礼は総距離およそ100キロ。車で3~4日、徒歩では1週間程度かかります。数回に分けて巡る人も多い中、ジェームズさんは1週間かけて34カ所すべてを歩くといいます。
道中で楽しみにしていたことの一つが、山々に囲まれた自然豊かな秩父。さらに、ジェームズさんが釘付けだったのが、なにげない日本の農村風景です。
「日本の田舎を見たかった」
「本当にきれいですね」
ジェームズさんが楽しみにしていたのは他にもあります。
そう、御朱印。今年は午歳総開帳ということで、札所ごとに特別バージョンに。歩きはじめてすでに2時間半。
「はぁ~。まだ朝ごはん食べてなかった」
すると 突然…。
男性
「これ少しだけど食べて」
ジェームズさん
「ありがとうございます」
「バナナとビスケット。やさしい」
思いがけない“もてなし”お接待。ジェームズさんも感激です。
こちらは、四番札所・金昌寺です。
「今までで一番好きなお寺」
その理由が、境内に並ぶ1300体以上の仏さまです。
「たくさんの…名前は何ですか?」
「(Q.仏像)仏像」
巡礼1日目、7時間で14キロ、巡ったお寺は9カ所に。ジェームズさんの夢の秩父巡礼は、まだまだ続きます。
楽しむ「巡礼」
とっても元気な“お達者3姉妹”。今回の巡礼の目的は?
「やっぱり行楽だよね?」
「そうだね」
「お天気もいいし」
「旅行するような気分。旅行だね」
巡礼者
「“プチっと巡礼”をしています」
味噌カツやそばなど、秩父ならではのご当地グルメや、自然豊かな温泉など、東京から近く、さまざまな魅力を同時に楽しめるのも秩父巡礼、人気のヒミツです。
秩父札所連合会・事務局長の斉藤雄大さんも…。
「巡礼は観光プラスアルファで考えていただいて、『楽しむ』を根底に置いていただくといい」
まずは、その人なりに巡礼を楽しんでほしいといいます。
サムライ姿の男性?
巡礼では、こんな男性に出会うことも…。
サムライ姿の男性
「どちらからいらっしゃったんですか?」
女性
「茨城です」
サムライ姿の男性
「そんな遠くから?」
「次十番札所に行くんですか?」
「途中めちゃくちゃきれいな所あるので、景色が。ベンチがあって」
サムライ姿の男性は、地元出身の梅澤修さん(50)。巡礼者たちに気持ちよく歩いてほしいと、ごみ拾いや道案内をしています。
そんな地元のサムライ、イチオシの秩父グルメが、秩父鉄道・御花畑駅から徒歩3秒の立ち食いそば店です。
「天たまうどんとろろトッピング」でなんと650円。実は、「首都圏立ち食いそばの名店100」に選ばれる名店です。
梅澤さん
「めっちゃおいしいです」
アゴ出汁の醤油ベースのスープにコシのある極太麺が絡みます。
「自然も豊かで、人も温かい。これだけ文化やたくさんのものが集約している所は関東でもなかなかない」
秩父名物「みそポテト」
この日、一番札所で出会ったのは、ちょっとフシギなグループ。
ラシェルさん(60)
「フランスから。アヴィニョン」
ヒロミさん(77)
「パリのド・ゴール空港で私が引っ張ってきた。全然知らない人」
聞けば、パリの空港でたまたまベンチで隣り合わせで話し込み、意気投合。ヒロミさんが秩父巡礼の話をしたところ、ラシェルさんもぜひ体験したいと即決!ヒロミさんの友人・恵子さん(77)も一緒に回ります。
ヒロミさん
「これは息子です。息子じゃない、孫!」
今年は12年に1度、午歳総開帳の特別な年。実はラシェルさん、その午年生まれです。
ラシェルさん
「元々観音巡りには興味があって、特別な年だからうれしいわ」
では早速、出発!と思いきや…。
恵子さん
「どこ行こうかね?」
ヒロミさん
「みそポテト」
恵子さん
「みそポテト、とりあえず」
いきなりの“寄り道”ですが、これも「楽しむ巡礼」。
恵子さん
「ポテト。おなか空いているから。一番札所お参りしたから、もうポテト食べてもOK!」
ラシェルさん
「みそは中に入っているの?」
店員
「ノー。かける」
そのポテトが…蒸した男爵イモに天ぷら粉を付けて揚げ、甘辛いみそをたっぷりかけた…秩父名物「みそポテト」。
恵子さん
「これがココで食べるイイところよ。みそたっぷりが」
初めてのみそポテト。そのお味は?
ラシェルさん
「サクサクでとろけるような感じね。2つの食感があるわ。味噌がちょっと甘いのね」
恵子さん
「そこがみそ」
ラシェルさん
「ソコガミソ?」
自然が生んだ神秘的な光景
ラシェルさんがどうしても行ってみたかったというのが、高さ65メートルの石灰岩の岸壁に囲まれた二十八番札所・橋立堂。
この橋立堂、他の寺院とはちょっと違うんです。なんと、鍾乳洞があるんです。石灰岩が溶けてできた空洞は、全長およそ140メートル。
ラシェルさん
「ベリーナイス。彫刻みたい。彫刻みたいな壁ね。不思議な模様」
さらに。
恵子さん
「弘法大師の後ろ姿です。弘法大師様の後ろ姿に見えますよね?自然ですよ、全部」
自然が生んだ神秘的な光景に感動。
ラシェルさん
「観音様とつながれたような気がして温かい気持ちです。ここに来られたことに感謝でいっぱいです」
ユニークな寺院?
秩父巡礼、神秘的な絶景の寺院が多くある一方、ユニークなみどころで注目される寺院もあります。
女性
「すごくない?なにこれ」
皆さんが驚いたナゾの物体。なにやら女性たちが笑顔でグルグルと回転させていますが…。
女性
「(Q.何やっているか分かる?)知らないでやってます」
実はこの巨大な経蔵(きょうぞう)。中にあるのは1630巻の仏教の経典。これを時計回りに3回転させると、この1630巻分の経典を読んだのと同じご利益を得ることができるとされているんです。
すると、女性が妙なことを…。
「すごいすごい!急に速くなった」
「急に軽くなったんだけど」
「この観音様の前に来た時に速くなる。軽くなって速くなる感じ。入り口のほうが重たかった」
なんと、観音様の前に来ると急に軽くなるとか!? 観音様が苦しい時に微笑んでくれたのかもしれません。
門に巨大なわらじ
突然ですが!ここでクイズ!四番札所・金昌寺。その門には巨大なわらじ。これ、ナゼだか分かりますか?正解は…。
霊場案内人会 山内賢一会長
「こんな大きなわらじを履く人がいるんじゃ、魔物が入ってこられない。魔よけに」
実はこのわらじ、仁王様が履くものとされ、魔よけ・厄よけなどになるのだそう。
一番の難所であり絶景
秩父巡礼の終盤近く、こんな情報が…。
巡礼者
「三十二番の法性寺の奥の院ヤバいですよ」
ヤバい?実は、秩父巡礼、34ある寺院の中でも、一番の難所であり絶景でもあるといいます。
こちらが三十二番札所・法性寺。特別変わったところはないようですが…。
女性
「あの上ですよ。すごいですよ、まだ」
男性
「見てもらったら分かると思います」
「気をつけて行ってください」
謎めいた笑い…。山道を行くと、巨大な岩。その岩をくぐり…その先はかつて僧侶たちの修行の場であったという険しい山道に。標高差100メートルを登った先に、「それ」はあるといいます。
鎖をつたって登る急こう配の岩場。取材班の荒い息遣いのみ。静寂に包まれた山の中。身をかがめないと歩けない石窟も。横には複数の地蔵が並んでいます。
そして最後に、鎖づたいに登るのは傾斜45度の岩場。なんとも“アドベンチャーな巡礼の道”です。登り始めて30分、ついに到着しました。
標高380メートルに建つ大日如来像。そして、ここからの眺めは全長100キロの秩父巡礼の中でも随一といわれています。
取材スタッフ
「ここにいると本当の意味の静寂を感じるような気がします」
巡礼終了「美しい旅」
秩父巡礼のゴール・三十四番札所・水潜寺。ここで、オーストラリアから1人でやってきた18歳のジェームズさんと再会しました。ジェームズさんは、丁寧に最後のお参りを行います。
5日間で34カ所、すべての寺院を巡り、この日巡礼の旅を終えたのです。
「(Q.帽子は誰がくれた?)札所もしている、優しい人」
「プレゼント、カサ、食べ物、飲み物、車で運転してもらいました」
「人々の優しさを経験した」
秩父巡礼を終え、美しい旅だったといいます。
「秩父の景色、すべて本当に美しいです。本当の日本見えます」
(2026年4月16日放送分より)
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