
沖縄で人気のアクティビティー「ホエールウォッチング」を目当てに、多くの観光客が押し寄せています。その一方で、クジラの生態系に変化が出始めていて、オーバーツーリズム対策に現場は悩まされています。
【画像】100m離れてのウォッチング 近年はホエールスイムも、だが
クジラに何が起きている?
視線の先に現れたのは、体長15メートルほどの巨大なザトウクジラです。
そんなクジラの雄姿を船の上から楽しめ、観光客の間でも人気のホエールウォッチング。しかし…。
沖縄本島中南部ホエール協会 坂崎宏次会長
「クジラの行動というものが船から嫌がって逃げているかな…」
沖縄美ら島財団 小林希実主査研究員
「ザトウクジラの行動が変化するということは、確実に今までの調査研究でも分かっています」
ブームの裏で、クジラに何が起きているのでしょうか?
クジラツアーに観光客殺到
朝8時半、那覇にある港には、クジラを一目でも見ようと長蛇の列ができていました。
那覇の港には、早朝からクジラを見ようと、多くの観光客がホエールウォッチングを実施する船に乗り込んでいきます。
※冬期のみ開催、現在は終了しています
静岡から参加した観光客
「楽しみ」
「(クジラが)見られるといいなと思ってきています」
クジラと出合えるかどうかは運次第。期待に胸を膨らませながら、揺られること20分。ザトウクジラが姿を見せました。
最大15メートルほどにもなる大型のヒゲクジラで、冬から春にかけて、出産や子育てのために水温の高い沖縄近海に集まります。
原則、100メートル離れた地点から鑑賞することになっているホエールウォッチング。しかし、クジラの方から船に寄ってきた時には、さまざまな場面も見られます。
冬の沖縄に新たな経済効果
ホエールウォッチングと並んで近年、人気を博しているのが「ホエールスイム」です。
ダイビングの装備で海に入り、海中からクジラと同じ目線で迫力ある生態を鑑賞することができます。
船の上からとはひと味違う圧倒的なスケールに心を奪われます。
さらに、海の中で耳を澄ませてみると「鳴き声」が聞こえてきます。これは繁殖海域でザトウクジラのオスだけが出す鳴き声で、「ソング」と呼ばれています。
沖縄の海で体感できる、クジラの迫力ある生態。数年前まで4社だったツアー業者は今や51に増え、冬の沖縄に新たな経済効果を生み出しました。
坂崎会長
「10年前、コロナの前であれば1万人ぐらいが参加していたのが、今はたぶん3万人近くの方たちが参加してきている。インスタグラムとかSNSの発信等があるので、それを見たお客様が増えてきて、ここ数年で爆発的に増えてきていますね」
ルールに従わない業者も
一方で、協会に未加入の業者の中には、ルールを守らずに運営を行うところがあるといいます。
坂崎会長
「クジラの総数自体が急激に減ったとかは感じないが、クジラの行動というものが船から嫌がって逃げているかなと思う時がたまに増えてきたかな」
ツアー業者の間で心配されているのが、観光客の増加に伴うクジラの行動変化です。
近年の調査では、人や船の接近がクジラの行動に変化をもたらすことが分かってきたといいます。
小林主査研究員
「船がクジラに接近していった時に、クジラがプカプカ浮いていたものが潜るとか移動を始めるとか、クジラの行動が変わる。ザトウクジラの行動が変化するということは、確実に今までの調査研究でも分かっています」
特に母クジラはこの海域にいる3カ月間、絶食状態の中、子どもに授乳を行うため、周囲の環境に敏感だといいます。
人や船が接近することは、母クジラに通常より多くのエネルギーを消費させている可能性があるのです。
海域にクジラが少ない日には、1頭のクジラの周囲を船が5~6隻航行することもあります。
一部でスイムやめる動きも
クジラへの影響を心配し、ホエールスイムをやめる動きも出てきています。
沖縄北部ホエールウォッチング協会 山本浩二副会長
「調査結果を受けて、北部の方ではやめてみようと。全体で各業者が対策をしていくことで、少しでもクジラに対する影響が少なくなればいいかなと思っています」
沖縄県に4つあるホエール協会では、クジラから100メートル距離を置いて鑑賞することや親子クジラの観察を1時間以内にするなどルールを定めています。
小林主査研究員
「ホエールスイムに参加されたりホエールウォッチングに参加される方々が、クジラのことを知ることによって、保全の意識が芽生えたりとか(環境保全と観光の)バランスを考えていく。ちょうどそういう時に来ているんじゃないのかな」
(2026年5月6日放送分より)
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