
“関西の奥座敷”と呼ばれる三重県の湯の山温泉にある、廃虚となってしまったホテルです。景観を損ねるだけではなく、4年前には不審火による火事も起きています。地元の住民の方は、不安を抱えています。
【画像】荒れ果てた廃虚ホテル 営業当時のパンフレットに在りし日の姿
放置されたままの廃虚
三重県の温泉街にそびえ立つ廃虚ホテル。火災も発生し、住民の不安の種に。
地元住民
「結構炎も上がっていた。怖かったですよ」
町には他にも放置されたままの廃虚があります。
ツアーを主催
京都オカルト商会 Cocoさん
「この杉屋旅館なんですけど、三重県“最恐”の心霊スポットと言われています」
“心霊ツアー”が開催されている廃虚もありました。
景観阻害する悩みの種に
1300年以上の歴史を誇り、四季折々の自然に彩られる三重県・湯の山温泉。鈴鹿山脈の山並みと、美しい渓谷に囲まれた温泉郷は「関西の奥座敷」と呼ばれ、近畿・中部地方の人たちに長年親しまれてきました。
街の自慢の温泉はシカが傷を癒したという伝説から別名「鹿の湯」とも言われ、湯治場として知られています。
日本最大級の規模を誇る街の名物「御在所ロープウエイ」からは、伊勢平野、奥には伊勢湾が一望できます。
ゴールデンウィーク終盤の5日、ロープウェーに多くの人が訪れる中、その周辺には、温泉街の山あいにそびえ立つ7階建ての廃虚化したホテルがあります。
上空から見てみると、荒れ果てた廃虚ホテルの姿が鮮明に。すぐ近くには住宅があります。
焼け焦げた様子が目立つ、こちらの廃虚。今から4年前、不審火により7階建ての建物が全焼。この廃虚は以前から心霊スポットになっていて、町の人によると、廃虚周辺で若者が騒ぐ姿が頻繁に見られていたといいます。
1960年代に有名建築家によって手掛けられたこちらの廃虚ホテル。営業当時のパンフレットには、紅葉の中にたたずむ、在りし日の姿がありました。
豪華な会席料理や絶景を見渡せる温泉の様子、赤を基調としたバーのような場所も紹介されています。
そして、ロビーのような場所で輝きを放つ豪華な照明は、今では荒れ果てたホテルの中で輝きを失ったまま吊り下がっています。
かつて隆盛を誇ったホテルは、30年ほど前に廃業。今では温泉街のさまざまな場所からの景観を阻害する悩みの種になっています。
絶景を見渡せるロープウェーの中からも、廃虚ホテルの姿が見えます。
「御在所ロープウエイ」の担当者によると、利用者から「あの建物は何なのか」と聞かれることも多いといいます。
温泉街を一望できる撮影スポットからも…。顔を出して記念撮影ができるパネルの後ろには、そびえ立つ廃虚の姿が。この現状に観光客も、次のように話します。
「昔から廃虚になってましたよね。(廃虚が無ければ)もうちょっと景観もいいし、隣の旅館に泊まってる人、怖くないのかなって」
せっかくの景色が…
温泉街のホテルのテラスからも…。
湯の山温泉協会会長・鹿の湯ホテル代表
伊藤裕司さん
「(Q.素晴らしい迫力ある景色ですね)こちらのルーフトップテラスは海のほうから山のほう、すべてが見渡せるようになっております」
「(Q.あちらに見えてますね)まあ廃屋のほうがですね、ちょっと目に入っちゃう感じですね。残念なことではあるんですけど」
自然豊かな川や山々の景色の片隅に、廃虚ホテルの姿が見えます。
「廃屋を早く撤去していただいて。本当に景色のいい場所ですので、美観を保ちたいなっていう思いはありますね」
温泉街を歩いてみました。
「(Q.こちらの通りもかつてはかなりの人で、にぎわっていたんですね)飲食店、居酒屋さん、お土産屋とかですね。たくさんお店は軒を連ねてやってたんですけど、今はもうないですね」
1984年の湯の山温泉の映像。温泉街には、今ではほとんどなくなってしまった土産店の姿もあります。
1962年の映像では、湯の山温泉を楽しむ親子連れが。開業して間もないロープウェーに乗る様子も収められています。
映像提供者によると、これは会社の慰安旅行で家族が湯の山温泉に訪れた際の様子だといいます。
1950年代から80年代にかけて、主に団体旅行客でにぎわった湯の山温泉。
しかしその後、バブル経済の崩壊で、日本の旅行形態が少人数のグループや個人旅行に変化。宿泊者の減少に伴い、経営難に陥ったホテルや旅館は次々に廃業。今でも3軒の宿泊施設が、手つかずのまま町に残されているといいます。
「心霊ツアー」主催者の狙い
江戸時代に創業し、300年近い歴史がある旅館も、2000年代の後半ごろに廃業。窓ガラスは割れ、中も荒れ放題になっています。
20年近くにわたり手つかずのまま放置されていましたが、去年から「杉屋旅館最恐心霊ツアー」という試みが行われています。
ツアーを主催
京都オカルト商会 Cocoさん
「普段は立ち入り禁止になっているが、今回のツアー限定で一般のお客様をこの中にご招待させていただく形になっています」
旅館はYouTubeで「心霊スポット」として取り上げられるなどし、不法侵入が相次ぐ状況でした。
旅館の所有者は「不法侵入の減少につながれば」という思いで、京都のイベント団体に心霊ツアーやレンタルスペースとして旅館を使用する許可を出したといいます。
ツアーの参加費は1人6000円(※次回のツアーは8月の土日に開催予定)。これまで不定期に開催されたツアーは、有名な心霊スポットを見たいという客で、ほぼ満員だったといいます。(※ツアーは安全面に配慮して行っています)
「不法侵入にならずに行けるんだということで、貴重な体験をされたっていうようなお声を多くいただいてます」
中に入ってみました。
押入れに布団がそのまま残っていて、時が止まっているようでした。
「基本的に旅館のものすべて残ってるような状態なので」
旅館内は安全面への配慮以外はほとんど手を加えられておらず、営業当時のものが残されたままになっています。
旅館には、営業当時のパンフレットも残されていました。
湯の山の絶景をのぞめる客室も、旅館自慢の大浴場も、多くの宿泊客が楽しんだ宴会場も、当時の面影はありません。
京都のイベント団体が開催する心霊ツアー。町の人は、どう考えているのでしょうか。
町の観光産業課の担当者は「さまざまな考え方がある。町としては関与していない」と言います。付近の住民は、次のように話します。
周辺住民
「(人が)来るようになったら、それはそれでありがたいけど。それ(心霊ツアー)でイメージも悪くなると違うんかなと」
「町に心霊のイメージがついてしまうのではないか」と懸念する声も。これに対し、主催者は次のように述べます。
「やはり心霊というのは毛嫌いされがちなんですけども、それをいいふうにとっていただこうと。地域活性化と所有者の方にも貢献できたらと活動をしています。遠方から来て観光しながら、このツアーも体験される形を皆さんとってくださるので、本当に貢献できていたらと思いますね」
廃虚が解体された例も
廃虚はなぜ解体されず、残されたままなのでしょうか。町には廃虚となっていた宿泊施設が、解体された例もあります。
「御在所ロープウエイ」元広報部長
森豊さん
「(Q.この場所はかつて旅館があったんですか?)そうですね。いわゆる旅館の跡地をですね、更地にいたしました」
「御在所ロープウエイ」の近くに、30年以上にわたって放置された廃虚旅館。国の補助金に加え、町、土地の所有者がお金を出し合い、2019年に解体されました。
壁側はがけ崩れの恐れがあるため取り壊されず、旅館の名残が色濃く残されています。
営業当時のパンフレットを見ると、金に彩られた天井に立派な石造りの浴槽。そして、山並みが描かれた壁面の様子が。
町によると、跡地は「公共の広場や公園としての活用」を検討しているといいます。
廃業施設の再生を図る
長年、「御在所ロープウエイ」の広報を務めていた森さんにとって、廃虚旅館の解体は悲願でした。
「ちょうど御在所ロープウエイの一番近い所ですからね。多くの観光客の方も目にされますのでね。お客様からしてもですね、こういった風光明媚(めいび)な所でね、『どうして』というようなこともありますのでね」
森さんは定年後、ロープウェーでアルバイトとして働くかたわら、街の活性化のため、廃業した施設の再生を図っています。
「ずーっと5~6年空いてたかな。お店を改装しましてね」
廃業した居酒屋を昭和レトロ風のカフェに、廃業した飲食店を演奏ができるステージに改装。人が集う場所づくりを行っています。
「街歩きができる、そういった温泉街を作っていきたいですね。もう一度行ってみたいなと思えるような土地。思い出の場所になるような所になるようにですね、努力していきたいと思います」
(2026年5月6日放送分より)
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