ビーサンや時計修理も…長引く“ホルムズ海峡封鎖” ナフサ供給不足の影響拡大

ビーサンや時計修理も…長引く“ホルムズ海峡封鎖” ナフサ供給不足の影響拡大

「停戦は維持されている」とするトランプ大統領ですが、ホルムズ海峡周辺では軍事衝突による緊張が続いています。イラン情勢の先行きが見えない中、日本国内でも、深刻な影響が意外な分野にまで広がっていました。(5月9日OA「サタデーステーション」)

戦闘終結に向けた合意案 イランの回答いつに?

トランプ大統領(8日 ワシントン)
「(イランから)連絡が今夜中に来るはずだ。どうなるか見てみよう」

アメリカが提案した戦闘終結に向けた合意案について、「8日の夜中にイランから回答があるはずだ」と期待感を示していたトランプ大統領。しかし、現時点ではまだ回答が来たという情報は入ってきません。そのイランは…。

イラン外務省報道官
「(アメリカ側の)提案については現在検討中です。期限は気にしていません」

イラン外務省の報道官は、回答について8日時点で「検討中」とし、期限は気にしないと話しました。

ホルムズ海峡周辺 続く軍事衝突

「停戦は維持されている」と述べるトランプ大統領ですが、ホルムズ海峡周辺では、軍事衝突が続発。アメリカ中央軍は7日、「アメリカ海軍のミサイル駆逐艦が、イランによるいわれのない攻撃を受け、自衛のため応戦した」としています。その翌日には、海上封鎖を突破してイランの港に入ろうとした、イラン船籍の石油タンカー2隻に対し攻撃し、アメリカ海軍が、航行不能にしたと発表。対するイラン海軍は、報復射撃などで応じています。

イラン外務省報道官
「我が国の防衛部隊は、その侵略に終止符を打つため、全力を尽くして彼らに痛烈な打撃を与えました」

攻撃の応酬だけではありません。イランの国営メディアは、8日、イラン軍が、オマーン湾でバルバドス船籍の石油タンカーを拿捕したと報じました。「地域の状況を悪用して、石油輸出や国益を妨害しようとした」と主張しています。戦闘終結が待たれる中、ホルムズ海峡では、再び緊張が高まっています。

老舗ビーサン企業 夏のシーズン前に悲鳴

日本国内でも幅広い業界で影響が広がっていました。

日本製ビーチサンダル「TSUKUMO」中島広行 代表
「こちらがビーチサンダルの倉庫になります。注文が来てから組み立てる形をとっています」

実は日本の神戸市が発祥とされているビーチサンダル。こちらは、国内生産にこだわって製造・販売している、日本で唯一の企業です。年間でおよそ10万足を製造し、大手の百貨店やアパレルメーカーとも取引があるといいます。材料となるのが、「合成ゴム」です。石油由来のナフサから作られていて、イラン情勢の影響を大きく受けているといいます。

日本製ビーチサンダル「TSUKUMO」中島広行 代表
「すでにGW前くらいから(合成ゴムの)納品が遅れたり、直近で1~2割上がっているが、仕入れ先によっては5割ぐらい上がっているという話も聞くので」

入荷が3か月遅れている素材もあるため、今シーズンの新商品投入は断念。売上のピークは7月ですが、商品への価格転嫁も難しいといいます。

日本製ビーチサンダル「TSUKUMO」中島広行 代表
「気軽に履けるものだろうというイメージが消費者の方についているので、(値上げは)お客さんは離れていってしまうんじゃないのかなっていう懸念がありますね」

洗浄液が入手困難 時計業界も困惑

意外な場所にも影響が出ていました。

報告・四宮謙太郎ディレクター
「こちらの教室では時計の修理の授業が行われています」

国内に数校しかない、時計職人を育てる専門学校。学生たちは、ミリ単位の部品をピンセットでつかみ、透明な液体に漬けていました。

専門家学校の学生
「ベンジンで、手洗いで、油汚れとかゴミを落とします」

精密な時計の洗浄によく使われ、こちらも石油由来のナフサから作られる「ベンジン」。時計業界には欠かせないものだといいますが…

ヒコ・みづのジュエリーカレッジ時計技術担当 長沼寛樹講師
「この情勢になってから10~20%、値段が急に上がった印象」

機械による洗浄にもナフサ由来の他の液体が必要で、軒並み値上がりしているといいます。さらに、頭を悩ませていたのが、工具を熱して耐久性を高めるためなどに使う、アルコールランプです。

ヒコ・みづのジュエリーカレッジ時計技術担当 長沼寛樹講師
「業者に連絡しても 今、買えないという状態」

燃料のメタノールは天然ガスなどから作られますが、こちらも“ホルムズ海峡封鎖”の影響を大きく受けていました。時計業界全体への影響も懸念される状況だといいます。

ヒコ・みづのジュエリーカレッジ時計技術担当 長沼寛樹講師
「夏ぐらいまでは多分大丈夫だと思いますけど、入手できなくなると時計の修理の作業ができなくなってしまう可能性があります」

水回り発注できず 住宅完成に遅れ

建築中の戸建て住宅でも状況は深刻です。

工務店「e暮らすホーム」 斎藤崇社長
「本来ですとここにユニットバスが設置されているタイミングなんですが…」

浴槽などが入手できず、作業が1~2か月ほど遅れているといいます。石油由来のナフサから作られるプラスチックが浴槽にも使われていて、同様に、キッチン、トイレ、洗面台など、水回り製品の発注ができない状況が、1か月ほど前から続いているといいます。

工務店「e暮らすホーム」 斎藤崇社長
「壁をふさぐこともできない状況が起きていまして、(施工が)どんどん遅れていく」

浴槽などの大きな物は、先に確保しても保管場所がないため、建築途中で発注し、直接現場へ搬入するのが一般的だといいます。外壁も本来であれば、完成している時期だといいますが…

工務店「e暮らすホーム」 斎藤崇社長
「今は防水シートが貼られたままストップしています」

住宅の防水性を高める「コーキング」作業も、外壁用の材料が全く手に入らない状況です。リフォームの相談も来ていますが…

社長「先行きが不透明すぎて現状(リフォームが)難しい状況」
リフォーム依頼者「最短でも夏ぐらいにどうにもならないですよね?厳しい…」

リフォーム工事も受注できず、今後、月の売り上げが2000万円近く減る可能性もあるといいます。高市総理はナフサの供給について、備蓄原油の活用や中東以外からの調達によって、「年を越えて供給できる」見通しを示していますが…

工務店「e暮らすホーム」 斎藤崇社長
「現状、現場に材料が届いていないことを考えると、政府の方もちゃんとできるのかという一抹の不安はある」

国の窓口へ1000件以上の相談

高島彩キャスター
「政府は“石油備蓄の放出により必要量は確保できている”と説明していますが、やはりどこかで買い占めや売り惜しみが起きているのではないか思いますがどうなんでしょう?」

板倉朋希アナウンサー
「どうやらそのようですね。経済産業省のホームページでは、石油製品の買い占めや売り惜しみなどに関する情報提供や相談を受ける窓口が設置されていまして、これまでに1000件以上の相談が寄せられているということなんです。さらにこうした窓口は国交省や厚労省、農水省などにも設置されていて、取りまとめを行う経産省を中心に石油元売り各社だけではなく、仲介業者に対しても『売り惜しみをせずに売ってください』という働きかけを行っていて、経産省に届いた相談では150件が解決済みだということです」

高島彩キャスター
「1000件の相談のうち150件の解決。これをどう見るかですが、“お願いベース”ではどうにもならない状況なのかなと思いますし、そういった意味ではもっと踏み込んだ対策が必要ですよね」

ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「高島さんが言うとおり、お願いベースの段階は終わったような気がします。もっと踏み込んで働きかけをしないと目詰まりは解消できないと思いますね」

中国 イラン情勢に対しどう動く?

高島彩キャスター
「そして、イラン情勢をめぐっては、もう1つ気になるのが来週14~15日に予定されている米中首脳会談ですが、トランプ大統領はこの席でイラン問題について中国に協力を求める可能性あるんでしょうか?」

板倉朋希アナウンサー
「その点について、アメリカの外交・安全保障に詳しい明海大学の小谷哲男教授にうかがいました。 まず、アメリカとイランの間で協議が続いている、戦闘終結に向けての“覚書の合意”についてですが、小谷さんは『アメリカとイランがホルムズ海峡や核問題をめぐり双方の隔たりは大きく、対面による直接協議なしに、話がまとまるのは難しいだろう』ということで、『米中首脳会談までに覚書合意に至る可能性は低い』とみています。その上で注目される米中首脳会談ですけれど、『トランプ大統領にとっての最重要事項は貿易協議だが、やはりイランの問題を前進させたいというのも本音だろう』と、ですから『イランに一定の影響力を持つ中国から圧力をかけてほしいと要請するはず』とのことでした」

高島彩キャスター
「その場合、中国側から何らかの見返りを求められるということもあるんでしょうか?」

板倉朋希アナウンサー
「小谷さんによりますと、『中国側からはアメリカの台湾政策の変更。つまりアメリカのこれまでの立場では、“台湾の独立を支持しない、平和的な解決を望む”という立場から、さらに踏み込んで、“台湾の独立には反対する”と、より中国寄りの姿勢を明確にするよう求めてくるだろう』ということでした。また『アメリカから台湾への武器輸出の停止を条件に挙げるのではないか』ということです。その場合『トランプ大統領は、“支持しない”と“反対する”という意味の違いを深く考えない可能性もあり、交渉を前に進めるために中国側の要求をのむ可能性がある』と話していました」

高島彩キャスター
「“支持しない”と“反対する”を深く考えない可能性もあるという言葉がありましたが、柳澤さん、アメリカにとっての台湾問題の重要度は?」

ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「中国にとっては“台湾問題は核心的な利益”ということなんですが、アメリカのトランプ大統領は西半球に重点を置くドンロー主義を掲げてますよね。そうすると決して台湾問題は優先順位が高いとは言い切れないと思いますね」

高島彩キャスター
「そしてイランとの交渉ですが、戦闘終結に向けてはどうなんでしょうか?」

ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「イラン国内は決して一枚岩ではないという現実があるという指摘がある。アメリカとの交渉に前向きな穏健派のペゼシュキアン大統領やアラグチ外相に対して、交渉に否定的あるいは強硬な姿勢をとっている革命防衛隊が対立している、という指摘があるんです。中国が、強硬派の革命防衛隊に対して十分な働きかけができるかどうかが大きなポイント、カギになると思います」

高島彩キャスター
「実際のところ、中国に革命防衛隊を動かすような力はあるんですか?」

ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「決して簡単ではないと思います。革命防衛隊は『アメリカのトランプ大統領は合意を急いでいる』と、その足元を見ています。しかもホルムズ海峡を封鎖したことによって世界が翻弄されてますよね。『これは使えるカードだ』ということで味をしめている。そうするとアメリカが核問題や制裁解除で、かなり柔軟な姿勢を見せてこないかぎりアメリカとの交渉に対して前向きな姿勢を革命防衛隊の側が見せるとはとても思えない。中国側が、果たしてそこまで影響力を行使できるかどうか不透明ですし、そうなってくるとやはり問題のさらなる長期化が懸念されます」

高島彩キャスター
「まだまだ終わりの見えないイラン問題ですが、今や中東だけではなく世界のエネルギー事情、そして台湾情勢までが絡み合う世界全体の問題に広がっていますから、来週の米朝首脳会談を注目して見ていきたいと思います」

外部リンク
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