
兵庫県・たつの市で田中澄惠さん(74)と娘の千尋さん(52)が殺害された事件で、警察は10年ほど前、隣に住んでいた住所不詳・大山賢二容疑者(42)を公開手配して、行方を追っています。
【画像】職務質問に「人殺した」と話すも…なぜ拘束せず 母娘殺害“10年前の隣人”公開手配
現場付近では容疑者とみられる姿が、複数のカメラに映っていました。

2人が殺害されたとみられている4日後、17日の映像。
男は、身長約160センチのやせ型で、黒いキャップにメガネをかけ、マスクをしています。また、同じ日に、事件現場から数百メートルの場所で、似た特徴を持つ人物が、別のカメラにも映っていました。ゆっくりと歩く姿が特徴的です。
警察は24日、現場の押収物や防犯カメラの映像から、千尋さんを殺害した疑いで、大山容疑者を公開手配しました。
荒井理咲子アナウンサー
「大山容疑者は、10年ほど前まで、殺害された田中さんの自宅のすぐ隣に住んでいたことがわかりました。近所の人によると、大山容疑者が家から出る姿はほとんど見かけなかったといいます」

近隣住民
「姿を見かけたことはないです。最初は、父親と2人で住んでいた。父親が10年前に亡くなった。(Q.被害者と容疑者にトラブルは)トラブルは全くないです。何かあったらすぐに広まるから」
警察は、25日午後、空き家となっている家の捜索を行いましたが、凶器の発見には至っていません。
周辺住民によりますと、大山容疑者の父親は、以前、造園業を営んでいて、父親の死後、家を出たといいます。
いまわかっていることです。

警察が田中さん親子の遺体を発見したのは、19日午前。千尋さんの知人が交番に相談したことがきっかけです。13日夕方、田中さん親子が電話で会話していたことを確認しています。警察は、このあと2人が殺害されたとみています。

実は、16日午後10時半ごろ、警察と大山容疑者が接触していたことがわかりました。
現場から30キロほど離れた兵庫県高砂市。「人が寝ている」と交番に届け出があり、現場に向かった警察官が職務質問をすると、男は「人を殺した」と話したそうです。この男が大山容疑者でした。
警察は、会話が成り立たなかったため、高砂署に移動。所持品に凶器など不審なものはなかったそうです。聴取の中で「たつの」という言葉も話していました。
荒井理咲子アナウンサー
「警察は、大山容疑者の身柄を確保することなく、たつの市内の現場近く、幹線道路沿いまでパトカーで送り届けたということです」
日付が変わって17日。大山容疑者が警察の車から降りた場所は、事件現場から約400メートル離れた場所でした。
その後の大山容疑者とみられる姿を目撃した人がいます。

大山容疑者と似た人物を目撃した人
「17日(午前)4時40分~50分の間に、娘が用事があり帰ってきて、パッ見たら、(玄関前)に何か座っていると。ぷるぷる震えていた。寒さだと思うが、震えていて、質疑応答がうまくいかなかったので、『手貸そうか?』と言ったら、『いいです』と。また座っているから、『もう立とう』と無理やり立たせるも、立つのもやっと。勢いつけて立たないとダメな感じて。ずっとカバン抱えて、ぷるぷる震えながら立ち上がった」
その後、男性家族の通報で、警察が駆けつけ、辺りを探しましたが、見つからなかったということです。

17日午前5時ごろ、大山容疑者とみられる人物が付近のカメラに映っていました。
警察が公開している映像も同じ17日に撮影されたもの。事件現場の周辺を徒歩で移動していたとみられます。
警察が事件を把握したのは、それから2日後、19日のことでした。
◆大山容疑者は「人を殺した」と話していたとのことですが、なぜ、警察は、身柄を押さえなかったのでしょうか。元埼玉県警捜査一課の佐々木成三さんに聞きました。

佐々木成三さんは「『人を殺した』という申告が事実であれば、“自首”に該当する可能性がある。そのため、警察は、通常、警察署でいつ・どこで・誰をという、具体的な内容を確認し、供述に事件性や具体性があるかを慎重に判断する。その過程で、所持品確認や身分確認を行い、後に事件化する可能性を見据えて、任意で指紋やDNAの採取を行うケースもある」といいます。
今回のケースについては「大山容疑者が凶器を所持しておらず、衣服にも返り血などの明確な痕跡が確認されなかったことから、当時は犯罪の具体性が乏しいと判断された可能性がある」とみています。
◆犯罪を申告した人物を、警察がどこかへ送り届けるようなことはあるのでしょうか。

佐々木さんは「申告した内容に具体性がない場合は、身元引受人に引き渡して帰宅させる対応が一般的。一方で、健康状態や安全面に不安がある場合は、自宅などへ送り届けるケースもある」といいます。
捜査関係者の一人は、大山容疑者をたつの市まで送った理由について、「成人男性であり、かつての住まいに近い距離なら放しても、安全は保たれると考えた」としています。

今回の対応について、佐々木さんは「大山容疑者は、住所不詳だったにもかかわらず、なぜ、たつの市まで送ったのかという点は疑問が残る。もし、情報共有が不十分なまま、担当警察官の個別判断で対応していたのであれば、 組織対応として課題があった可能性もある。結果として、逃走や新たな犯罪につながるリスクは避けなければならない。警察としては、事実関係を早急に整理し、身柄を確保することが重要になる」としています。
