世界の「掃除」のあり方について、実際に現地へ赴き取材を重ねた朝日新聞「GLOBE」編集部中川竜児記者が、各国の特色や日本の掃除文化の歴史、そして最新の進化について解説した。
中川記者が取材した国の一つが、東アフリカのルワンダである。ルワンダには「ウムガンダ(共同奉仕)」という独自の制度があり、毎月最終土曜日の午前中、18歳から65歳までのすべての国民が地域活動に参加することが義務付けられている。街頭のゴミ拾いや草刈り、インフラ整備などを住民が共同で行う。ウムガンダの時間になると、店は営業を一時停止、車もどうしても必要な通行以外はできなくなる。
ルワンダは「アフリカで最も清潔な国」とも称されるほどの美観を保っている。現地を訪れた中川記者は、この制度が単に街を綺麗にするだけでなく、1994年に起きたジェノサイド(大虐殺)という悲劇的な歴史を乗り越え、国民の連帯感やコミュニティの絆を再構築する重要な役割を果たしている実態を報告した。
一方、北欧のスウェーデンからは、世界的な広がりを見せる新しい掃除のスタイルが紹介された。それが、ジョギングをしながらゴミを拾う「プロギング(Plogging)」である。これはスウェーデン語の「拾う」を意味する言葉と英語の「ジョギング」を組み合わせた造語で、同国が発祥の地となっている。健康のための運動をしながら、同時に目の前にあるゴミを綺麗にしていくという、環境保護とスポーツを融合させた合理的なアプローチである。中川記者は、この活動が個人の健康維持だけでなく、楽しみながら街の清潔さを保つという現代的な価値観として、世界にポジティブな影響を与えている現状を伝えた。
イタリアでは、犬のフンの放置を防ぐために導入されたユニークな取り組みを取材した。オーストリア国境沿いのある街では、犬のDNAを登録し、落ちているフンがあったらどの犬のフンかを特定する仕組みが導入された。ただ、登録料は約2万円で飼い主持ちのため物議をかもし、いまは「凍結」状態だという。
ひるがえって、世界から「綺麗好き」「清潔」と評されることの多い日本についても、中川記者はその意識のルーツに迫った。日本人が元々生まれつき清潔好きだったのかというと、必ずしもそうではないという。徳島大学の川端美季准教授への取材を交え、近代化の過程で「日本人とはどういう国民なのか」を定義していく中で、毎日お風呂に入ることが「欧米諸国よりも優れた美徳であり、良き国民の証である」として、教育などを通じて後天的に刷り込まれ、形成されてきた意識であるという側面を指摘した。
そうした日本の掃除文化は、現在、深刻な人手不足を背景に新たな進化を遂げている。国土交通省のアンケートによると、外出先でトイレを利用する際に最も重視されるのは「清潔さ」である一方、しゃがんで作業をしなければならないトイレ掃除は肉体的な負担が大きく、担い手不足が深刻化している。この課題に目をつけた東京の「アイウイズロボティクス」という企業は、自動で洋式便器を掃除する「トイレ掃除ロボット」を開発した。中川記者は、近いうちに勤務先や外出先のトイレでこうしたロボットを目にすることが当たり前になるかもしれないと、技術による省力化の現状を伝えた。
世界各地の清掃事例を踏まえ、中川記者は、まずは自分の身の回りから取り組むことの大切さに言及した。スウェーデンの「プロギング」の参加者が語った「ゴミを拾いながら、自分自身もゴミを捨てないよう意識づけていきたい」という姿勢を受け、そもそもポイ捨てをせず、物を綺麗に使うことで掃除の手間自体を減らしていくという視点が示された。
(朝日新聞/ABEMA)


