
インドのモディ首相が、中東情勢による石油価格の急騰に対応するため、在宅勤務を促し海外渡航の自粛などを呼びかけた。インド国民からは反発の声が上がっている。
数十台の車両を率いてパレード
中東情勢に伴うエネルギー価格の上昇を受け、日本政府は21日に7月~9月の電気・ガス料金の支援に向けて、今年度予算の予備費から約5000億円を支出する調整に入った。
世界的に石油などの燃料価格が高騰する中、インドではモディ首相が10日、国民に対し燃料消費量の削減を呼びかけた。
「私たちは義務を最優先とし、果たさなければならない。その一つが、ガソリンとディーゼル燃料を節約することだ」
石油のほとんどを輸入に頼っているインド。1991年、湾岸戦争による原油価格が高騰した時、外貨不足に陥り深刻な経済危機を経験した。
今回、再び中東情勢によって原油価格が高騰する中、モディ首相は演説で国民に燃料消費量の削減を呼びかけた。
地下鉄など公共交通機関の利用促進や、不要不急の海外渡航の自粛に加え、食用油、肥料などの使用削減。さらにコロナ禍で普及した在宅勤務も促した。
しかし、この演説のあとに出席した寺院の記念イベントで、燃費の悪い車に乗りパレード。国民へ燃料の使用削減を呼びかけた後の出来事で、数十台の車両を率いるモディ首相の姿はSNSで拡散され、国民の反感を買ってしまった。
「金の買い控え」も
中東情勢の混乱を受け、インドの石油事情が危機的状況となっている。
世界3位の石油輸入国であるインドは約90%を輸入に頼っていて、その半分近くが中東からの輸入となっている。イギリスメディアによると、イラン情勢の悪化によって、中東からのインド向け原油供給量は2月と比較して、情勢悪化後の3月には61%急減したという。
こうした状況を受け、インド国営石油会社は15日、4年ぶりにガソリンと軽油の値上げを発表。それぞれ小売価格を1リットルあたり約5.1円引き上げ、首都のニューデリーでは約156円から161円になった。
インドの担当相は「原油価格の高止まりが続けば、小売業者はわずか3カ月で約1兆6500億円損失の恐れがある」と警告している。
石油のほかにも、インドの外貨不足に大きな影響を与えるものとして、モディ首相が国民に呼びかけたことがある。それが金の買い控えだ。一体、どういうことなのか、取材した。
モディ首相
「1年間は金や金製品を購入しないことを決意しなければならない。これは我々の愛国心に対する挑戦であり、外貨を節約するためにこの挑戦を受け入れなければならない」
金の消費量が世界第2位のインドは、そのほとんどを輸入に頼っている。金や原油の国際取引は、アメリカドルなどの外貨で行われることが多いため、高騰する原油の調達のために金の輸入を抑える必要があるのだ。
その影響は、こんなところに出ている。
宝石店オーナー
「最も影響を受けるのは職人たちです。インドには3000万人近くの職人がいますが、すでに苦しい状況で、さらに多くの職人がムンバイから故郷へ戻ることになるかもしれません」
インド国民にとって、金とはどんな存在なのか。
都内でインド料理店を経営するチャンドラニさん。インドでは結婚式などに金は欠かせないもので、親から子へ受け継いでいくものだと話す。
「結婚したら、その時に渡してあげる」
「(Q.その後も受け継がれていく?)そういうことです。その人々も、その次の世代にわたしていく」
さらに、インドでは人の強さを表現する時にも金が使われるという。
「何にぶつかっても何に出会っても『自分が変わらないことができれば』と。そういう意味で『金みたいな心を持つ』と」
「計画性のない発言」
チャンドラニさんは、インド人にとってどれほど金が欠かせないものなのか話してくれたが、金を巡ってまた別の動きも出ている。
13日にインド政府は、金の輸入時にかかる実効税率を6%から15%に大幅に引き上げた。インドでは年間11兆円規模の金が輸入されていて、輸入関税を引き上げることで、外貨流出を防ぐ狙いがあるとみられている。
そしてインドの現地メディアによると、この決定を受けて、金価格が10グラムあたり約1万4000円上昇したという。
首都・ニューデリーの宝石店店長は「インド人が金を買うのをやめることはあり得ない」とし、「まず政府が雇用を作ったり、他の選択肢を用意したりする責任がある。計画性のない発言で真に受けていない」と朝日新聞の取材に答えている。
(2026年5月22日放送分より)
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