
今月、北朝鮮の金正恩総書記が「国境線を難攻不落の要塞にする」と発言した。南北の軍事境界線付近では、北朝鮮兵らによる新たな動きが確認された。
軍事境界線付近で動きか
まずは、軍事境界線付近の動きについて確認する。
韓国メディアの「中央日報(19日)」は、韓国軍筋などの話として、今年3月から今月までに軍事境界線の北側、約1.4キロの開城(ケソン)市郊外で整備・造成中の軍用道路で作業した北朝鮮の兵士の数が、1日あたり3000人から5000人に及び、去年の2倍以上に増えていると報じている。作業内容は道路の補強に加え、鉄柵の設置や地雷の埋設なども行われているという。
また、河川などの地域で工事を準備するため、資材を運搬する動きも確認されており、軍事境界線付近の全域を要塞化している可能性が高いと分析している。
さらに、軍事境界線の近くにドローン基地が建設されている可能性も指摘されている。
ドローン基地も建設か
韓国メディアの「NKニュース(20日)」は、北朝鮮の麟山(インサン)にある漏川里(ヌチョンリ)空軍基地で、新たな建設作業が行われていると報じている。この基地は、軍事境界線の北側約48キロに位置し、前線の目と鼻の先の位置している。この空軍基地では先月、建設労働者の宿舎とみられる建物が新設され、周辺一帯で既存建物の取り壊しも行われているという。空軍基地を現代化する事業の一環である可能性が指摘されている。
この空軍基地の現代化は、何を意味するのか。
「中央日報(24日)」によると、北朝鮮はウクライナ侵攻を続けるロシアへの派兵などと引き換えに、ドローンの関連技術を入手しているとされる。「NKニュース(20日)」によると、多くの基地をドローン基地に転換する可能性があると報じている。
23日には、小泉進次郎防衛大臣も「北朝鮮からドローンが向かってくるという事態も非現実的なことではない」と危機感を示した。
こうした一連の動きは、金総書記の意向を具現化したものだとみられている。
2023年12月、金総書記は、韓国と「敵対的な国家関係」にあると表明。朝鮮半島統一を目指す従来の政策を転換したとみられている。
そして今月17日、金総書記は「南部国境を守る部隊を強化し、国境線を難攻不落の要塞にする」とし、「思想と信念で祖国を守らなければならない」と強調、引き締めを強める姿勢を示した。
“視察”にも変化が…
また、金総書記は軍事だけでなく、経済にも力を入れる動きを見せている。
北朝鮮の国営メディア「朝鮮中央通信(先月3日)」によると、金総書記は先月3日、平壌に新たに開設されたカー用品店やペットショップなどを娘のジュエ氏とともに視察したという。
韓国メディアの「ニュース1(先月17日)」によると、金総書記の公の場での活動内容に変化が見られているという。従来は軍需工場など軍事分野の視察が中心だったが、最近では住宅団地や文化施設などの「建設現場」への視察が増えているとされる。
朝鮮労働党機関紙の「労働新聞(3月24日)」によると、北朝鮮の今年の予算方針について、軍事費の割合は横ばいとするのに対し、経済分野は前の年と比べて5%以上増やすとし、軍事に加えて経済を重視する姿勢が鮮明になっている。
「ニュース1(先月17日)」は、韓国の対北朝鮮関係筋の話として、金総書記が従来は軍事的威厳や革命性を強調していたのに対し、最近では住民の生活水準や利便性に配慮する「民生型指導者」としてのイメージを強めようとしていると伝えている。
こうした予算拡大の背景には、いわゆる“ロシアマネー”が使われているという。
背景に“ロシアマネー”
金総書記は巨額の“ロシアマネー”を背景に、軍事だけでなく経済にも力を入れており、「民生型指導者」とのイメージを演出しようとしているという。
韓国メディアの「連合ニュース(3月16日)」によると、北朝鮮は2024年10月から、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの派兵を行っており、これまで4回にわたり約2万人を派遣してきたという。また派兵以前から、銃弾や砲弾、ロケット砲、自走砲、弾道ミサイルなどの軍需物資をロシアに輸出しており、韓国政府系シンクタンクの報告書では、これらの軍事支援によって2023年8月から2025年12月までの間に、北朝鮮は日本円で最大約2兆3000億円の収益を上げたという。
また、北朝鮮が派兵と武器輸出の対価をすべて回収した場合、国際社会による対北朝鮮制裁が「無力化される」と警告している。つまり、制裁によるダメージが“ロシアマネー”によって相殺されるおそれがあると指摘している。
中国側に思惑も?
そして「連合ニュース(20日)」は、韓国政府関係者の話として、中国の習近平国家主席が今月末か来月初めに北朝鮮を訪問する可能性が高いと報じた。実現すれば7年ぶりの訪朝となる。また韓国政府関係者は、習主席が訪朝を通じてアメリカと北朝鮮の間を仲裁するのが目的ではないかと話している。
一方で、訪朝を巡っては、懸念も指摘されている。
「中央日報(22日)」によると、韓国政府では、習主席の訪朝によって「日米韓」と「中露朝」という冷戦的な対立構造が定着することへの懸念が強まっているという。
(2026年5月27日放送分より)
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