
冷凍食品大手『ニチレイ』をめぐり混乱が続いています。ニチレイは、全国で約5000社が利用する国内最大規模の冷凍・冷蔵食品の物流網を持っていますが、サイバー攻撃を受けたことでシステム障害が発生し、その物流がストップ。影響は多岐に及んでいます。
【画像】「関係ないと思っていたら…」ニチレイ“サイバー攻撃”全国各地で広範囲に影響
スーパーに迫る“欠品危機”
ヤオヒロA-GEOタウン店 佐伯剛光店長
「現段階では売り場には並んでいて、3割くらいはニチレイのものが並んでいる感じです」

埼玉県上尾市にあるスーパー。から揚げやチャーハンなど人気の冷凍食品が並んでいますが、異変は見えないところで起きていました。

卸業者
「入荷がストップされちゃっている」
ヤオヒロA-GEOタウン店 佐伯剛光店長
「入荷ストップしちゃってるんですね。いつごろからストップされちゃっているんですか?昨日の納品分から?」
電話しているのは冷凍食品の卸業者。今後の仕入れ分から一部で欠品が発生する可能性があるそうです。
ヤオヒロA-GEOタウン店 佐伯剛光店長
「売り場をゼロにするわけにはいかないので、他メーカーで対応するというのがお客様に一番迷惑かからない形」

不安は消費者もまた同じです。週2回は冷凍食品を買うという女性は。
女性
「やはり食事は毎日のことだから、便利に使わせてもらっています。おいしいですよね。味も良くて。(食卓には)なくてはならない感じです」
スーパー大手の『イオン』などでも、冷凍食品など一部商品に欠品が発生していると発表しました。

影響は自社食品にとどまらず…
冷凍食品最大手『ニチレイ』を突如襲ったサイバー攻撃によるシステム障害。ただ、その影響は自社の冷凍食品だけにとどまらず、多岐にわたっています。
ケンタッキーフライドチキンは一部店舗で営業時間を短縮しました。

女性客
「子どもたちと集まるんで10ピースほど持っていこうかなと。(短縮営業は)困りますね。ここが大好きなの」
東京都内にある、この店舗では「希望通り食材の発注ができていない」としています。

大手回転ずしチェーン『くら寿司』でも寿司ネタなどが一部欠品。ただ、その食材はどれもニチレイが作っているわけではありません。ではなぜ、ニチレイのシステム障害が影響を及ぼしているのでしょうか。

食品インフラ支える“低温物流”

千葉県船橋市にあるのは、ニチレイが誇る物流センター。内部は“巨大な冷蔵庫”です。

ニチレイといえば、冷凍食品のイメージが強い会社ですが、実はグループ全体の売上の半分近くを占めているのが「低温物流事業」です。
それは、この“巨大な冷蔵庫”を拠点にしたビジネスです。

自社の製品だけではなく、日本中のあらゆる食品メーカーや流通業者に向けて、低温に保たれた広大な保管スペースを貸し出し、配送までを一手に担います。
ニチレイの歴史をひも解くと、創業は戦時中の1942年。国の食料を全国の冷蔵庫で管理する国策会社『帝国水産統制株式会社』として始まりました。戦後の1945年に民間企業『日本冷蔵』として再スタート。『ニチレイ』という名前はここから来ています。
食糧難を乗り切るため事業拡大を続け、全国に張り巡らされた“冷蔵ネットワーク”こそが原点です。今では、事業規模は日本国内で最大手。低温物流事業では約5000社と取引があるといいます。
食品の流通に詳しい専門家は、ニチレイの冷蔵庫に“依存せざる得ない状況がある”と話します。

流通経済大学 矢野裕児教授
「常温ではない温度管理ができて、動かせる物流事業者はそんなにはいない。コールドチェーンという形で管理システムを作らないといけない。デパ地下は企業がみんな違う。色んな惣菜店が入っているが、いちいち持っていったら大変なので、いくつか惣菜を売っているところ、あるいは生菓子を一緒に持っていく」
まさに、あらゆる食品の流通拠点。今、現場はどうなっているのか、従業員に話を聞くと。

ニチレイグループ関係者
「今は“手書き”で管理せざるを得ない状況です。保管場所がデータで確認できず、商品の“住所”が分からないような状態です」
「関係ないと思っていたら…」

ニチレイの柱となっている低温物流事業。その影響は大企業だけではありません。1日あたり10トンを超える量のキムチが作られる工場では。
高麗食品 黄成守工場長
「まったく他人事という感じで済ましていました。僕たち関係ないと思っていたので、念のために運送会社に確認したら『実はまったく動かせない状態なんです』って連絡が14日の午前中ですね」
ひたすら作って発送する。その冷凍専門の運送会社がキムチの保管に使っていたのが、ニチレイの倉庫でした。

問題は取り出せないだけではありません。冷凍用のキムチは作っても保管する先がないので、製造を取りやめました。

高麗食品 黄成守工場長
「これは僕たちの在庫なので、賞味期限が切れてしまうと、そのまま廃棄することになる」
問題はこれがいつまで続くのかということ。悩みは尽きません。

高麗食品 黄成守工場長
(Q.今動けなくなっているキムチは)
「(冷凍キムチが)1トンくらい動けない状態になっています。保管料とかが毎日かさんでいる感じです」
(Q.システム障害が長引けば会社としては)
「売り上げの損失もそうですけど、信頼を失うのが。お客さんから注文もらって届けられないというのが、僕たちにとって痛手になっちゃいます」
一方、姫路市の会社が高齢者施設などに提供している給食。食品が届かず、急きょメニューの変更を余儀なくされました。
ひでかつ給食 原真由美代表
「栄養価も考えているので、あまりにも違うものに変えるとカロリーオーバーになったり、栄養士は結構苦戦している」
“低温物流”17日から順次再開へ
ニチレイは15日に発表を行いました。

ニチレイ
「当社のサーバーがサイバー攻撃を受けた。個人情報などの保護を最優先とし、システムを遮断した。外部のセキュリティー専門会社と安全対策を講じ、7月17日より順次、業務を再開する」
(Q.17日から再開ということで、一安心と捉えていいですか)
隅田繁経済部長
「まだ完全に元に戻るとは言えない状況のようです。物流関係者に話を聞いたところ、17日から発注の受付が再開されて、18日からは商品の配送も再開する見込みだということですが、最初の1週間程度は受注や配送の量に制限するとニチレイ側から連絡が来ているということです。コンビニなどは商品の多くは約1カ月分の在庫があるということだが、スーパーマーケットの場合は商品も多く、1週間ほどしか在庫がない店もあるそうです。そういう店舗は冷凍食品やアイスなど一部商品が欠品する可能性もあるということです。
(Q.サイバー攻撃を受けて13日に遮断措置を講じ、17日に業務を再開するということで、停止は4日間に留まることになります。今回のサイバー攻撃はどんなものでしたか)
隅田繁経済部長
「複数のサイバーセキュリティーの専門家に話を聞きました。今回の攻撃が身代金要求型、いわゆる“ランサムウェア”の可能性を挙げる方もいれば、まだ分からない、分析が早いという見方をする方もいました。通常、ランサムウェアなどの攻撃を受けた場合は、復旧に非常に時間がかかります。過去にサイバー攻撃を受けた大手企業の方に話を聞くと、攻撃を受けた場合は社内のネットワークを全て遮断して、調べていくということです。その場合は、今回のように出荷を管理するシステムも使えなくなりますし、社内のメールも外部とつながらなくなる状態になったといいます」

(Q.今回、早期の復旧を見込んでいることに驚きますね)
隅田繁経済部長
「過去の例からすると、ニチレイの復旧はかなり早いケースです。ニチレイ側がかなり早い段階でシステムを遮断するなどの対策をして、被害が広がる前に手を打ったことが功を奏した可能性があると分析する専門家もいました。ニチレイは具体的にどのシステムが攻撃を受けたかなど詳細を明らかにしていません。これは今後、第2第3のサイバー攻撃をふせぐための標準的な対応だということです」
