
原発政策の宿題“核のごみ”の最終処分場。新たな候補地に東京都の南鳥島が浮上し、波紋が広がっています。一方、フィンランドでは、まもなく政府が認可し、世界で初めて運転が始まる見通しです。
【人口2000人の離島が揺れる】「核のごみ」処分場に南鳥島が浮上 小笠原村で説明会
最終処分場「オンカロ」稼働へ
フィンランド南西部の町エウラヨキ。稼働すれば“世界初”の施設が地下にあります。

立田祥久記者
「今エレベーターに乗り込みました。433メートル下までエレベーターで向かいます。すごい、気圧の変化を感じますね。耳に違和感があります。一気に下っているのを感じます。ここから先、歩いて専用の車両まで向かいます」
目的の場所は、まだ先にあります。
立田祥久記者
「迷路のように入り組んだ地下通路を今、車が走っています。到着しました。この場所に核廃棄物を埋めることになっています。ひんやりと冷たいですね。この先の坑道が、実際に放射性物質を埋めることになる坑道です。足元を見てみますと、水が溜まっているのが分かります」

ここは核のごみの最終処分場『オンカロ』。フィンランド語で「洞窟」や「隠れ家」を意味します。地下の硬い岩盤や地震の少なさから、最終処分に適した場所とされています。

フィンランドでも活用されている原発。そこから出た、強い放射線を放つ核燃料を金属製の容器に閉じ込め、地下の穴に埋めていきます。深さ400メートルを超える場所で、放射能が安全なレベルに下がるのを待ちますが、かかる時間は“10万年”です。
住民の信頼カギは「情報公開」
核のごみが足もとで眠り続ける、住民にとって迷惑施設のはずですが、批判的な声はほとんど聞かれません。その最大の理由が、事業者の徹底した情報公開です。
地元住民(30代)
「申し分のない設計だと思います。耐用年数が極めて長く、安全対策も万全です」

エウラヨキ町議会元議長 ベサ・ヤロネン氏
「説明会に来る人も昔ほどいなくなり、安全性への不安はなくなったようです。“透明性”が信頼の要です」
事業者は、オンカロの建設が決まってからも20年以上、地元への丁寧な説明を続けてきたといいます。

電力会社『TVO』ボールダリエル社長
「フィンランドは問題解決の可能性を示しました。ただ、それには時間や徹底した努力が必要です。技術研究だけでなく、対話や信頼も不可欠です」
“核のごみ”問題 日本の現状は
一方、原発の稼働から60年が過ぎても、核のごみの行き先が決まらない日本。使用済み核燃料からウランやブルトニウムを取り出した残りが、いわゆる“核のごみ”となります。その最終処分は、フィンランド同様、地下に埋めて放射能が下がるのを待つ方法です。

その処分地を決めるまでには、文献だけの調査、現地でのボーリング、地下の調査など、3段階の調査があり、自治体への交付金もあります。これまで、いくつかの自治体が調査に手を挙げてきましたが、住民の理解を得られないところも。北海道の寿都町では、賛成派と反対派で町が二分。アンケート調査では、7割の人が「人間関係が悪化した」と答えています。
寿都町 片岡春雄町長
「原発政策は国の政策。最終処分も国の政策。一首長・知事の責任があまりにも重すぎる。責任は国が取るべき」
新たな候補地は“絶海の孤島”

そうした声に答えるように、国が主導した初めての候補地が浮上してきました。本州から2000キロ離れた“絶海の孤島”南鳥島です。島の面積は約1.5平方キロメートル。国境警備を行う海上自衛隊や、気象庁の職員などが常駐しますが、一般の住民はいません。
赤沢亮正経済産業大臣
「小笠原村・南鳥島は全島が国有地。長年にわたり国策にご協力を賜っている」
国は調査にあたり地元の理解を求めますが、南鳥島には一般の住民がいないことから、同じ小笠原村で人が住んでいる2つの島が、その地元になります。約2000人が暮らしている父島。「ボニンブルー」と呼ばれる、青く透明な海が広がります。最も特徴的なのが島の生き物たち。独自の生態系は「東洋のガラパゴス」と呼ばれ、2011年には世界自然遺産にも登録されました。
1200キロ離れた“地元”では
ここから1200キロ離れているとはいえ、同じ小笠原村で浮上した核のごみ問題に、住民は。

父島で生まれ育った 高野一海さん
「自分はガイドもやるんですけど、その視点からだとやめてほしい。小笠原村これだけ広いけど、同じ1カ所と思われても仕方ない」
原発からの電気とは無縁の島で、文献調査はすでに始まっています。小笠原村と経産省所管のNUMOが3月に開いた説明会。
経産省 資源エネルギー庁担当者
「政府として南鳥島で処分を行うことを決定したわけではありません。あくまで可能性のある場所の1つとして、まずは文献調査をさせていただきたい」

説明会に出席 上滝有一さん
「本当に大丈夫なのか。もっと話を聞きたい。別に反対ではないんですけど、あまりにも一方的な話だけで進められちゃうのが嫌だ」
求められるのは「丁寧な説明」
小笠原村の渋谷村長も国やNUMOに対し、住民への丁寧な説明を求めています。

小笠原村 渋谷正昭村長
「地層中心の調査をNUMOさんがこれから行うわけですから、その結果もNUMOさんは村民に広く説明してください。そういう中で理解が深まり広がり、それぞれが判断する材料を持てる」
今、日本にある核のごみは1万4000トン相当。電力需要を背景に、原発の稼働が今後も増えていけば、核のごみはさらに生まれ続けることになります。
“国主導”で初の候補地が浮上
核のごみの最終処分場を決めるまでには3段階の調査があります。文献から火山や活断層などを調べる『文献調査』、現地でボーリングなどを行って地質を調べる『概要調査』、地下に施設を造って直接、断層や地下水を調べる『精密調査』、3つの調査で約20年かかるとされています。

今回の小笠原村は、自治体が手を挙げるのではなく、初めて国が主導して調査が始まりましたが、渋谷村長は取材に対して「国は、より多くの自治体に調査を申し入れて、本当の“適地”を見出してほしい。1人でも多くの国民に、この問題を“我がこと”として考えてほしい」と話していました。
