
アメリカ軍は6日連続でイランへの攻撃を実施したと発表した。トランプ大統領は新たな攻撃目標にも言及しているが、戦闘終結に向けた協議はストップしてしまうのだろうか。
【画像】トランプ大統領が追い求める…イランを屈服させる“銀の弾丸(シルバー・ブレット)”とは?
アメリカとイランの戦闘が再び激化する中、トランプ大統領はピックアックス山を新たな標的に挙げた。トランプ大統領はイランを屈服させる“銀の弾丸”を追い求め、失敗したとの指摘がある。どういうことなのだろうか。
新たな標的にも言及
アメリカは、再開した攻撃をどこまでエスカレートさせる考えなのだろうか。
CBSニュース(14日)によると、10日付でトランプ大統領はアメリカ議会に「軍事行動は7月7日に開始された」と通知した。これはいわば、停戦「終了」宣言にあたる。
この「議会への通知」は、どのような意味を持つのか。
アメリカの「戦争権限法」では、軍事行動の開始を議会に通知すれば、大統領はその後、議会の承認なしに60日間、つまり今回で言えば9月上旬まで武力行使できるとしている。
そして、再びイランへの攻撃を開始したアメリカ軍は、日本時間17日まで6日連続で攻撃を実施している。
こうした中、トランプ大統領は新たな標的にも言及している。ネット番組のインタビュー(13日)で、「我々はピックアックス山を破壊する」と発言した。
このピックアックス山は、イラン中部のナタンズ周辺に位置し、科学国際安全保障研究所によると、地下100メートルほどの場所に核関連施設を開発しているとの疑惑があるという。
では、これを標的とした場合、どのような攻撃になるのか。
ウォール・ストリート・ジャーナル(3月11日、今月16日)によると、去年のイラン核施設への攻撃で使用したバンカーバスター(地中貫通弾)でも破壊が困難と見られている。そのため、完全に破壊するには、地上作戦が必要との見方もあるという。
苦しい中間選挙に?
トランプ大統領は、このままでは苦しい中間選挙を迎えることになるかもしれない。
アメリカのガソリン小売価格は2月のイラン攻撃開始後に急騰したが、和平交渉の報道が相次いだ5月下旬から下落傾向となっていた。しかし、停戦が終了したことで再び上昇している。
トランプ大統領はイランとの紛争が終結すれば、ガソリン価格は「すぐに下落する」と繰り返し主張してきたが、こうした状況により11月の中間選挙で大打撃を受ける可能性が指摘されている。
では、イランとの戦闘継続をアメリカの世論はどう見ているのか。
経済誌のエコノミストなどが、7月10日~13日に実施した世論調査によると、「今すぐ戦争終結すべきか」という問いには65%が「はい」と回答。「いいえ」の15%を大きく上回った。
このように、戦闘終結を望む声が多いにもかかわらず、なぜトランプ大統領は再び戦闘を拡大しようとしているのか。
背景には、トランプ大統領の“あるジレンマ”があるのではないかという。
「覚書」に伝統保守からも批判の声
先月17日、アメリカとイランが結んだ14項目の覚書には、「イラン産石油の禁輸解除」「イランへの制裁の全面解除」「凍結資産の解除」「イラン復興資金3000億ドル」などが盛り込まれていた。
CBSニュースなど(6月17日~19日)が先月行った世論調査では、この覚書について「互角」と見る人が41%、「アメリカに有利」と見る人が22%、そして、「イランに有利」と見る人が37%に上った。
この覚書については、共和党の伝統保守からも批判があり、トランプ大統領の盟友とされ先週急死したリンジー・グラハム上院議員(当時)は自身のSNSに「(覚書の内容は)ナチス政権のドイツに経済支援をするようなものだ」と投稿。第1次トランプ政権の副大統領、マイク・ペンス氏も自身のSNSで、「核開発や弾道ミサイル計画の解体に一切言及しない妥協策だ」と指摘していた。
歴代政権の対イラン戦略
トランプ大統領はイランを屈服させるための“銀の弾丸”を追い求め、失敗したとの指摘がある。“銀の弾丸”とは、何なのだろうか。
トランプ大統領のこれまでの対イラン戦略を振り返る。
今年1月、イランで拡大していた反政府デモをめぐり、トランプ大統領は「非常に強力な選択肢を検討している」と述べ、デモへの弾圧が強まれば、軍事介入する可能性を示唆した。しかし、イラン政府が弾圧を弱めることはなかった。
2月末、イランへの空爆を開始。その直後、最高指導者だったハメネイ師(当時86歳)を殺害した。しかし、狙っていたイランの体制転換は起きなかった。
その後、イランがホルムズ海峡の封鎖に打って出る中、4月中旬、イランの石油輸出に打撃を与えるため、アメリカ中央軍はホルムズ海峡の逆封鎖に打って出た。それでも、イランがひるむことはなかった。
こうした状況について、アメリカのシンクタンク「クインシー研究所」のイラン専門家・パーシー氏は、レポートの中でトランプ政権が“銀の弾丸(シルバー・ブレット)”を探し求めてきたとの表現を用いて説明している。
この“銀の弾丸”とは、もともと不死身の狼男を倒す武器とされ、「難問を一撃で解決する夢のような手段」の例えに使われる。
つまりトランプ政権は、「アメリカが優位性を維持し妥協することなくイランを屈服させることができる、ありもしないような一手」を探し求めてきたのだという。
実は、これはトランプ政権に限ったことではなく、イラン革命以降47年間続く、アメリカの病理だとレポートは指摘する。
歴代のどの政権、どの政党も、“銀の弾丸”を追い求めた結果、イランとの外交のチャンスや出口戦略を逃してきたという。
さらに、トランプ政権の取った一手は、体制転換どころか、イラン国民の団結をより強固にするものだったという。
イラン国民 団結強固に?
今月執り行われた前最高指導者ハメネイ師の国葬について、イラン側は4000万人以上が参列したと誇示しているが、ロイター通信(6日)は、「テヘランに集結した弔問客たちは、アメリカとイスラエルによるイラン崩壊の企てが失敗に終わったというメッセージを送ったのだ」と伝えた。
イランは戦争で弱体化した姿どころか団結し、今後の展開を自分たちで形作ろうという決意に満ちた姿を見せたという。
(2026年7月17日放送分より)
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