
日本全国のシカの生息数が増えたことで、土砂災害が起きやすくなっているとの指摘があります。現場で何が起きているのか。今週行われた調査に同行しました。
シカ、20年で2倍の頭数
奈良公園でおなじみのシカ。10年前は1200頭ほどでしたが、年々増え続け、現在は1600頭を超えました。そのため、公園を抜け出したシカが市街地や住宅地で、相次いで目撃される事態となっています。
奈良公園だけではありません。環境省は、全国のシカの数はここ20年でおよそ2倍に増えたと報告しています。
増えすぎたシカは、ある災害を引き起こす一因となっています。それが土砂崩れです。一体どういうことなのでしょうか。
九州大学 大学院農業研究院
阿部隼人助教
「シカが全部ここ草を食べ尽くした。山を覆うぐらい全部食べちゃう」
草食べ尽くし“山が丸裸”
今週、九州大学の阿部さんが、宮崎県にある大学の敷地の林で土壌調査を行いました。
「これシカの足跡」
「シカがこの地面に生えてる葉っぱを食べて、雨が降って土がえぐれて根っこが浮き出て樹木が弱って、そこに台風なり雷などが来た時にとどめを刺す」
シカが、山に生えている植物を食べ尽くすことで、土がむき出しになる「裸地化(らちか)」を引き起こすといいます。
裸地化が進むと、山が水を蓄える力が弱まり、水が流れやすくなって土砂崩れが発生しやすくなります。
「雨でちょっとずつ土が削れるのは間違いなく起きています。本当に丸裸のハゲ山みたいになると、大雨時に一気に流れ出ることがなくはない」
実際、過去には滋賀県と岐阜県にまたがる伊吹山で土砂崩れが起きました。
おととし7月1日、滋賀県米原市で雨が降り、土石流が発生。大量の土砂が複数の家屋や道路に流れ込みました。
その後、15日、25日にも雨が降り、土石流が発生しましたが、いずれも災害を引き起こすほどの大雨ではありませんでした。
短期間に3度の土石流という、異例の事態。その後、「シカによる食害が土石流を引き起こした」と結論付ける論文が発表されました。
各地でシカ対策
こうしたシカによる被害は、日本全国で起きています。
北海道で撮られた映像です。山を駆け抜けていくシカの集団。
ここではシカによる食害で、貴重な野生ワサビの生息地が絶滅してしまったそうです。
こうした被害を減らそうと、各地でシカ対策が始まりました。その一つが…。
阿部助教
「有力なやり方が柵ですね。シカが入れないように森林を覆って食べられないように守る。柵の中は守られて、シカにとっての食べ物が残っているので入ろうとトライはするが、高く柵を置いたり、下から潜って入れないように作ったりすると、柵の周りは入ろうと頑張るけど入れないのでどっかで諦める」
土砂災害のあった米原市でも、この対策が取られています。
阿部さんは、土砂崩れなどの原因は「シカだけではなく複合的なもの」という考え方を持っています。ただ、草木が減少する山の劣化は私たちの生活に直接影響を及ぼすと、警鐘を鳴らします。
「森林が劣化したような場所が増えてしまうと、そこから(飲料水など)いろんなサービスを受け取っていたものがなくなる。得られる恵みというのもなくなってしまうということ」
(2026年7月18日放送分より)
この記事の画像一覧
