
各地でクマの出没が相次ぐなか、人間の怖さを教えた上で山に帰したクマが、再び集落に現れ、捕獲されました。クマの保護か、それとも住民の安全か?行政はいま、難しい判断を強いられています。(7月25日OA「サタデーステーション」)
クマ被害 男性語る「恐怖の一部始終」
河川敷に設置されたセンサーカメラに映っていたのは、木に登るクマの姿。
仙台市内の住宅街をながれる川の周辺で、今月から出没情報が相次いでいました。
25日、周辺でクマが一頭捕獲されました。
近隣住民
「本当に安心しましたね。小さい子どもも家にいますので」
今週は、東北以外でも出没が相次ぎました。
クマに襲われた男性
「目が合って。クマだと思ったんですよ」
奈良県・下北山村に住む男性は先月、自宅離れにあるトイレから出たところを
約150cmのクマに襲われました。
クマに襲われた男性
「逃げても追いつかれたら嫌だと思って部屋に入った。入ってすぐ台所なんですけど、台所に入ったら一緒にバーンと入ってきて」
「防ぐに防ぎきれず、結構やられていましたけど」
「もう本当にだめかなと思って。メガネごとバーンとやられて目は無事だったんですけど」
「自分も叫んだんでしょうね。うわーっと言ってたら、ふっと力が抜けたクマが勝手口から出ていった」
男性は、耳や頭・手に傷を負いました。
クマに襲われた男性
「全部縫ったんですよ。鼻とか左耳もそうなんですけど、ちょっと段になってますよね」
「ここは縫ったあとが残っちゃった感じ」
村では、23日にクマが2頭捕獲されました。
今週2回クマの侵入被害に遭った男性
「人の気配を感じたのか。(クマが)このドラム缶かいてましたね」
冷蔵庫がクマに荒らされたといいます。
今週2回クマの侵入被害に遭った男性
「クマに冷凍庫変形させられて、ガチっと閉まらんようになってしまった」
20日にもクマが一頭が捕獲されました。
このクマは、9日にも一度捕獲されていて、11日たって再び現れたことになります。
どうして同じクマが捕獲されることになったのでしょうか。実はこのクマ、「学習放獣」を実施したクマでした。
“人間の怖さ”教える「放獣学習」 クマ目撃急増 奈良は方針変更
「学習放獣」とはどのようなものなのか?
20年以上学習放獣に携わってきた 兵庫県立大学 横山真弓教授
「唐辛子スプレーをかけたりとか、要は嫌がらせを行って、クマに人間は怖い。あるいは集落は怖いと学習させて放獣するという被害対策」
学習放獣は、主に西日本で行われてきた対策で、紀伊半島のような個体数が多くない地域でクマの絶滅の回避と、ヒトへの被害軽減を両立するために行われるものです。
20年以上学習放獣に携わってきた 兵庫県立大学 横山真弓教授
「やはり若い個体ですね。ただ人里が怖くて、おどおどしながら出没していた状況ではおそらく効いていただろうと」
奈良県を含む紀伊半島地域に生息するツキノワグマは、環境省のレッドリストで絶滅のおそれのある地域個体群とされています。
そうしたことから、奈良県ではこれまで、他の動物のわなにかかるなどしたクマは学習放獣を施して山に帰すことを基本としていました。
ところが、去年10月、奈良県はクマの保護管理計画を改定。
捕獲した地点によって、原則殺処分。もしくは、学習放獣を行った上で、再度捕獲した場合には殺処分とするとしました。
保護重視から管理へ。なぜ変更になったのでしょうか。
奈良県の検討委員会の座長でもある横山教授は。
20年以上学習放獣に携わってきた 兵庫県立大学 横山真弓教授
「この数年集落内に出没するという事例が徐々に増える傾向にあるということでしたので」
奈良県内でクマが目撃された件数の推移をみてみると、近年急増していることがわかります。
20年以上学習放獣に携わってきた 兵庫県立大学 横山真弓教授
「このまま増える方向にどんどん行ってしまうと危険ですよね、という議論の方が多かったと思います」
一方で、紀伊半島のクマの数は約460頭と推定されています。
20年以上学習放獣に携わってきた 兵庫県立大学 横山真弓教授
「完全に絶滅の危機が回避されたとは言いにくいですね」
「判断が難しいものがずっと積み重なってきたというところです」
安心した生活を取り戻すために、私たちができることはあるのでしょうか。
20年以上学習放獣に携わってきた 兵庫県立大学 横山真弓教授
「ただ殺処分をして安心ということではなく、引き寄せている要因は何か。それをどうしたら取り除けるか。そういう議論をしていかないと同じ事が繰り返されてしまう」
「やはりクマを引き寄せる要因をしっかりと取り除く。そういった努力が必要になって来ると思います」
