フェンシング・加納虹輝に聞く体格差を埋める2つの技術 黄金期にこそ伝えるべき 松岡修造「器が違う」

 2年前のパリオリンピックで、日本勢がメダルラッシュを見せたフェンシング。今、世界選手権が香港で開催されています。

 今回注目されるのは、男子エペの加納虹輝選手(28)。パリオリンピックで金メダルを獲得した加納選手は、昨年の世界選手権でも頂点に立ち、世界ランキング1位です。

 その加納選手が今、力を注いでいるのが「未来へつなぐチャレンジ」です。

体格差を埋める技術

 黄金期を迎えている日本のフェンシング。

 パリオリンピックでは、金メダル2つを含む5つと過去最多のメダルを獲得しました。

 その中心にいるのは、エペの加納選手。個人で日本初の金メダル。去年の世界選手権も制し、世界のトップを走り続けています。

 しかし、加納選手の一言は衝撃でした。

「このままいくと、我々世代が引退した後、必ず衰退するんですよ。それはもうほぼ確定事項であるんじゃないかなと僕は思っている」

松岡修造さん
「フェンシングは日本が強い。これが常識になりつつあるんですよ。衰退を感じるんですか?」

加納選手
「ずっと感じています。大学生、高校生に、我々が今まで培ってきた世界に戦えるエペの技術が伝わっていないと思う」

 次の世代まで伝わっていない技術とは。

 その背景にあるのが、海外の選手との体格差。強豪ひしめくヨーロッパ勢の平均は190センチ近く。その差を埋めるために日本人が培ってきた技術が伝わっていないというのです。

加納に聞く「2つの技術」

松岡さん
「不利をどうやって埋めましたか?」

加納選手
「剣を触る。それからフットワーク」

 この2つの技術、どんなものなんでしょうか。

 まず「剣を触る」、実際に説明してくれました。

加納選手
「剣を触ってあげると、相手はこっち側に行くことになるんですよね」

松岡さん
「僕は攻めれないので、こっち側から行こうとします」

加納選手
「この状態の時にまっすぐ行けば、僕が勝ちます。動かし始めている時に、バンとはいれば僕の勝ち」

 剣を触るとは、相手の剣を押さえ、遠回りさせること。こうすると、加納選手は最短で突くことができるのです。

 そしてもう1つ「フットワーク」。

「基本フェンシングは自分の距離というものがある。自分が届く距離、その距離で攻撃に行けばだいたい突けるだろうという距離があるんですね。遠くからちょっと近づいたり、離れたりすると、相手自身が自分の距離を分からなくなる」

松岡さん
「フットワークで相手を惑わす。距離感を分からなくさせる」

加納選手
「エペは相手の動きを誘導するか、いかに誘うか」

松岡さん
「誘うのうまいですね」

加納選手
「そうですね(笑)」

一人一人に指導

 次の世代に伝わっていない技術。加納選手は日本の危機を前に行動を起こしています。

 その場所では、選手およそ80人が集う、20歳以下(ジュニア・カデ)を対象とした合宿。加納選手が3日間みっちり指導します。中には世界一の技術を求めて参加する外国人選手の姿もありました。

 取材をしていると、加納選手のこだわりが見えてきました。

加納選手
「いいよ、聞きたいことあったら」
選手
「攻撃の出方が分かりやすいと言われる」
加納選手
「分かりやすいね。全部同じテンポでいくからだよ」

 その後も、小柄な選手に、女子選手も、なんと一人一人と剣を交え、言葉も交わします。

 現役の世界チャンピオンが、惜しげもなく世界一の技術を伝えているのです。

 さらに、次の次の世代までも見据え定期的に学校巡りも。

 金メダリストが自ら動くことで、いま未来が変わり始めています。

松岡さん
「教えることで、得られるものは?」

加納選手
「いつも考え直すきっかけになる。教えていると、より自分で深く理解できる。あと一つ、勝ち続けないといけない。成績を残し続けないといけないなと思う。勝てなくなって教えるわけにはいかないと思っているんですよね。自分の影響力は今しかないと思うので、現役のうちに子どもたちに教えて、現役のうちにやれることをやっていく」

松岡さん
「プレッシャーは与えられたほうがいい?」

加納選手
「そうです。何があっても勝ちます」

「器が違う」

徳永有美キャスター
「キャンプもすごかったですけど、小学校の子たちはああいうの一生忘れないですからね。いい体験になりますよね」

松岡さん
「加納さんと話していて、同じアスリート、日本人としてすごく誇り高く感じました。それは彼自身が技術的には世界一ですよ。でもやっぱり器。貫禄が世界一だなと」
「合宿に僕も行きました。本当に丁寧に1人ずつ教えているんです。しかもライバルの国に対してです。僕ははっきりぶつけました。何で現役でここまでするんですかと。加納選手は『いや違うんだ。教えていく中で、言語化していく中で、自分がたくさんの気づき。ライバルが強くなる=日本が強くなる。未来を考えたらプラスなんですよ』と。器が違うなと思いました」

大越健介キャスター
「最後の言葉感動しましたね。技術が伝わるのは時間がかかるとすれば、自分がトップに居続けなければ、勝ち続けるんだという決意が素晴らしいなと感じました」

松岡さん
「世界選手権あります。そしてロスもある。はっきり言います。勝ち続けて!」

(2026年7月24日放送分より)

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