
フランス南西部を襲った未曽有の山火事。首都パリの面積の4倍にあたる4万2000ヘクタールもの森林を焼き尽くし、火の手はワインの聖地・ボルドーの中心部からわずか15キロの距離にまで迫りました。一時は22万2000人もの住民が避難を余儀なくされるという、緊迫した事態に…混乱の中、多くの住民が身を寄せたのは自治体やボランティアが運営する避難所でした。会場に一歩足を踏み入れると、そこには、日本にも通じる「互助」の温かい光景が広がっていました。
(パリ支局・辻村周次郎)
【画像】仏ボルドーの山火事 ペット同伴も可能 巨大避難所の「助け合い」と「プライバシー」
「日用品」から「子どものおもちゃ」まで 手厚い物資支援
ボルドーから北に8キロほど離れた「見本市会場」。普段はボルドーワインの販売イベントなどで賑わう広大な会場が、1万人を収容する避難拠点へと姿を変えていました。
避難所の中には、果物やヨーグルト、栄養補助食品や飲料水が用意されていて、誰もがいつでも手に取ることができます。周辺の自治体やボルドー近郊の商業施設などからの無償提供、フードバンクの備蓄によって賄われているといいます。
水を取りに行きづらい人のために、ボランティアの人が会場内を歩いて回る姿も。さらに、離乳食やティッシュなどの日用品や、着の身着のままで逃げてきた住民のために、サイズ別に整理された衣類や靴が無償で配られていました。
真夏の大規模避難 ペットにも優しい受け入れ態勢
ボルドーでは最高気温が41度に達する日もあり、熱中症など避難者の健康面が心配されましたが、元々が大型イベント会場だけに空調設備は万全で、快適な室温が保たれていました。
トイレや仮設シャワーもあり、要介護の高齢者のためには専用スペースが用意されています。医療ブースや労働に関連する相談ブースのほか、心身の疲労を和らげる整体ブースや、子どもたちのおもちゃコーナーなど、細やかな配慮が行き届いていました。
何より印象的だったのは、ペットに対する手厚い態勢です。ケージやペットフードが無償で用意され、会場内では、犬や猫を抱いた家族連れが寄り添って過ごしていました。
会場の片隅にはインコなどが入った鳥かごが集められ、猫が自由に動き回れる専用スペースもありました。「ペットは家族の一員」。人間に対するケアと何ら変わりがありません。
秋田犬と一緒に避難生活を送る11歳の女の子は
「家がどうなってしまうのか不安だけれど、ボランティアの人たちがすごく優しい」
と、少し安心した表情を見せ、母親も「外部から来たボランティアの皆さんのおかげで、前向きに乗り切れています」と、感謝を口にしていました。
整然と並ぶ簡易ベッド 課題は「プライバシー」の確保
しかし、助け合いの温かさを感じる一方で、過酷な避難生活の現実も垣間見えました。会場を見渡すと、キャンプ用の簡易ベッドがズラリと並んでいます。開設初日の夜はわずか6人だったという避難者が、避難指示エリアの拡大に伴い、3日目には約7000人にまで急増。別の避難所からやむを得ず移ってきた住民も多くいました。
運営担当者は「ベッドを集めるだけで精一杯でした」と話し、軍からの支援なども受けて、ようやく数を揃えられたといいます。
ここで問題となるのが「プライバシー」です。日本の避難所でよく見られるような段ボールの仕切りやパーテーションは一切ありません。

周囲から寝顔や横になっている姿が丸見えに…ある高齢女性はこう話してくれました。
「避難は一時的なので仕方ありません。一人になりたいときは、自分の車に移動しています。着替えも車の中で済ませています」
また、ペットの「鳴き声」を問題視する人もいました。ある高齢男性は
「鳴き声が気になって眠れないので、夜寝るときは静かな車に移動しています」
と明かしました。
しかし、長引く車中泊は、精神的なストレスだけでなく、エコノミークラス症候群などの健康リスクも懸念されます。
スマホの充電のために順番待ち?充電スポットが不足
さらに、現代ならではの課題もありました。
「充電スポットはあるにはあるけれど、数が圧倒的に足りません。避難生活がここまで長引くと思っていなくて、準備してこなかったのが悔やまれます」
20代男性は少し疲れた様子で手元のスマートフォンに目を落としました。情報の遮断が避難者の不安をさらに増大させることにもつながります。モバイルバッテリーなどの事前の備えや、万が一を想定したシミュレーションがいかに大切かを、改めて痛感させられました。
自治体の連携とボランティアの人たちの善意で運営されるフランスの避難所。食事や手厚い支援が住民の心を救う一方で、長期化する場合の様々な課題にどう備えるか。検討する余地がまだまだありそうです。
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