
熊本地震から4日で1週間が経ちました。しかし、支援の手が十分に届いているとは言えないのが実情です。地域の拠点までは物資が来ていても、その一歩先が遠く、被災者一人ひとりのもとへなかなか届かないという例が多くあります。避難所からホテルなどへの2次避難が始まる一方で、水の確保に苦労する現場も今なお少なくありません。
【画像】“あと1歩”届かず…山積みの支援物資『マンパワー不足』課題に 熊本地震から1週間
ホテルへの2次避難始まる
震度6強を観測した八代市では、ホテルなどへの2次避難が始まりました。
避難した人
「(避難所は)夜もよく眠れないですからね。しっかりプライバシーが保たれて過ごした方がいいのかなと」
しかし、多くの人はいまだ不自由な暮らしを強いられています。
避難住民7500人超
爆発事故で従業員7人が亡くなった『イオンモール熊本』。店舗前の歩道には、花束や飲み物の入ったペットボトルが置かれていました。

献花した人
「今日で1週間なので」
(Q.テナント従業員の関係者)
「違うが、毎週(イオンに)行っていた。かわいそうすぎて」

最大震度7を観測した地震から4日で1週間。関連死を含めた死者は38人となりました。4日午後6時時点で、住宅の被害は1万3000棟を超えていて、7500人以上が避難生活を送っています。
住民
「公費解体の前に自分で片付けようと。屋根が落ちているので、中の物が取り出せない」
公費解体とは、自治体が建物の解体や撤去を行う仕組みのこと。しかし、公費解体を待っていては生活の再建が進まないという声は少なくありません。その上、この暑さ。被災地は4日も35度以上の猛暑日となる地点が相次ぎました。

住民
(Q.地震から1週間)
「何から手をつけていいか分からない。どうしようもない」
衛星データ捉えた“変化”

今回の地震、衛星が捉えたデータの解析からも、震源の南東側で地面が大きく動いていたことが浮き彫りとなりました。

国際航業RSソリューション部 鎌形哲稔部長
「表層での変化が大きなところほど、しま模様の境界が短くなっていく、狭くなっていくというような特徴を持っています。特に平野部の所でしま模様が成立しなくなっているので、この辺りで大きな変状が起こっていることが予測されます」
断水被害続く4万戸超

午前7時半の宇城市役所。列を作っているのは罹災(りさい)証明書の発行を求める人たちです。
市民
「朝の3時半くらいから並んでいる。私の家はほとんど全壊に近いようなものなので、これからの生活をどう立てていくかを考えると、罹災証明書がないと安心できない。計画ができないので」
公費解体を始め、公的な支援を受けるためには罹災証明書が必須。ただ、市が1日に対応できる人数には限りがあります。

市民
(Q.何時から並んでいた)
「5時半。遅い方」
総理官邸では政府の対策会議が開かれました。3日に現地へ入った高市総理。集まった閣僚を前に、こう指示を出しました。

高市早苗総理大臣
「今回の視察では水に関する要望を多く伺った。給水車の派遣などプッシュ型の支援を継続・加速して、緊急度の高い避難所や医療機関などを中心に、確実に水をお届けしてください。8月末までに全ての被災地域で完全に断水が解消されるよう、全力で取り組んでください」

国土交通省によれば、4日午後4時時点で八代市、宇城市、甲佐町、氷川町の合わせて4万4000戸で断水が続いています。このうち甲佐町では、早ければ今月上旬に解消することが見込まれていますが、残る自治体は月末までかかる見通しです。
医療現場「一番の問題は水」
八代市の農家を尋ねました。

農家
「日中はここで片付け。半年…1年はかかるかな」
(Q.この一週間何も変わっていない)
「状況は変わっていない」

稲を植えた田んぼは今が一番、水の必要な時期。ところが、断水が続いたことで地面は干からび、ひび割れているところもあります。
農家
(Q.このままの状態が続くと)
「たぶん枯れるんでしょうね。全滅かもしれない」

病院への影響も深刻です。県内では54の医療機関が被災し、そのうち50の医療機関に水が届いていません。氷川町にある地域の拠点病院では、給水車から敷地内にあるタンクに水を入れる作業が続けられていました。病院には熱中症とみられる症状を訴える人がひっきりなしに搬送されてきていて、給水車が命綱です。

八代北部地域医療センター 吉田光宏院長
「幸い停電がなく、医療活動は継続していたが、断水で貯水していた受水槽の水が1日半で枯渇してしまった。そのまま断水が続けば病院機能がダウンし、いったん病院の機能を停止しようと思っていたが、定期的な水の補給で業務は継続できている状態」
県南部で高度医療を担う病院は、4日から外来の受付を再開しました。

荒井理咲子アナウンサー
「こちらの病院では地震発生以降、取りやめていた外来診療を段階的に再開しています。1週間ぶりということもあって、訪れる人も多いということです」
男性(70)
「先週、入院する予定だったんですけれど、4日に来て、入院の打ち合わせや手術の打ち合わせをしてきたところ」
(Q.どんな病気で入院する)
「すい臓がん。今度は抗がん剤治療に入るということで」
ただし、今はまだ全ての治療に対応できるわけではありません。

消化器内科 千代永卓部長
「まだ内視鏡診療が不十分な状態。胃カメラや大腸カメラを使った処置ができていないが、それも数日以内にと目指しています」
(Q.数日以内の再開のためには水が必要)
「水が今一番の問題ですね。洗浄で」
山積みの支援物資 課題は…
八代市では新たに、避難所で新型コロナウイルスの感染者も確認されています。

今も雑魚寝を強いられている宇城市内の避難所でも、水が大きな問題となっていました。

家族4人で避難(20代)
「胃腸炎がはやりそうなので消毒お願いしますと声掛けがあっても、こまめに手を洗うこともできない」
60代
「3日からシャワーは自衛隊が準備していたのですが、まだ全員は入れていない状態」

また、避難生活を送る人からは、食料や飲み水が足りていないという声も上がっています。しかし、物資自体はあります。訪れたのは宇城市役所に隣接する多目的施設では、水などを入れた段ボールが倉庫に次々と運び込まれていました。ところが、ここから先、避難生活を送る人たちに配送できるめどが十分に立っていません。
市は現在、新たに支援物資を送ってこないよう呼び掛けています。なぜこのようなことになっているのか。市長に話を聞きました。

宇城市 末松直洋市長
(Q.宇城市では物資の受け入れを一時停止している)
「今、保管場所も足りていないということで、新たに確保できているところから、また受け入れを始めようと」
(Q.物資がある中での課題は)
「(物資を)頂いていることは本当にありがたいこと。それを被災者に配るマンパワーが足りてないのが実情じゃないかと。例えば、これから来られるボランティアさんとか、その人たちに支援物資を運んでいただくことも、今後進めていかなければならない」
(Q.モノはあるが、それを届ける術が)
「(ないのが)もどかしいところ」
事情は他でも同じ。
所村武蔵アナウンサー
「氷川町役場の裏手にある文化センターです。支援物資の拠点となっています。ここから各避難所に物資が届けられています」

町は、他の自治体から応援に来ている職員のほか、民間企業などの力も借りてなんとか対応しています。
氷川町役場の職員
(Q.他の自治体や企業の応援があって、やっとできている状況か)
「その通りでございます」
(Q.既存の氷川町役場の人員では足りなかった)
「これはもう絶対足りてない。本当に助かっている」
“ITで被災者支援”専門家に聞く

デジタル技術による被災者支援を研究する、京都大学防災研究所の畑山満則教授に話を聞きます。
(Q.“マンパワーの不足”という声が上がっていますが、現場に入ってどう感じましたか)
京都大学防災研究所 畑山満則教授
「モノや人が足りなくなるというのが大災害だと思っています。そういう意味では、実際にモノがない、人が足らないというのは現場でも非常に強く感じました。ただ、ある所までモノは来てるという話もありまして、そういう所から本当に必要としているところに、モノを届けるという『ラストワンマイル問題』課題だと強く感じた次第です。西福寺は平時から地元の人たちの拠点として動いているということもあって、地元の人たちのネットワークがしっかりしていて、どこに助け・支援を求めている人がいるかという情報をしっかり抑えられている。そこに多くのモノが届けられて、実際に取りに来て、あるいは配布して、被災者の手元にモノが届いているというのを現場で見ました。ただ、ラストワンマイル問題というのは結局、モノが本当に欲しい人に届かないと、解決しないという問題だと思います。この問題を解決しようと思うと、どこに支援を求めてる人がいるのか。そして、誰がどのように運ぶのかという問題を解決する必要があると強く感じました」
(Q.『ラストワンマイル問題』あと残りの僅かな距離に届くまでの、あと1歩が大事だが、そこに問題が生じているということですか)
京都大学防災研究所 畑山満則教授
「はい。2016年の熊本地震の時も、私はこういう問題を追いかけていたのですが、やはりありましたし、能登半島地震でも強く感じたところです。この問題は、過去の阪神淡路ぐらいの時はなかなか顕在化しませんでしたが、近年の大災害では顕在化している問題ではないかなと思っております」

(Q.デジタル技術の活用について、10年前の熊本地震の時と比べて、今回変化はありますか)
京都大学防災研究所 畑山満則教授
「10年前は、デジタル技術を活用していただくのにハードルが高くてですね。紙で物事を進めていく形が多かったです。これに対して今回は、タブレットやスマートフォンなどを使って、最初から情報管理を前提に、全体の物資の管理や被災者ニーズをこなすことを考えられているのが目立ちます。我々も今回、八代市役所の方にスマートフォンを届けたのですが、そこではこれから災害ボランティアセンターが立ち上がって、保健師さんが健康状態のチェックなどをしに行く際に、スマートフォンを使ってデータを入れていく取り組みが始まろうとしています。そういうところは、2016年の熊本地震ではなかなか見られなかったところだと思っております」
(Q.人手不足=マンパワーの問題、ラストワンマイルの問題について、デジタル技術をどう活用していくべきだと考えますか)
京都大学防災研究所 畑山満則教授
「近年は、スマートフォンのデータから、どのぐらいの人数が、どの場所にいるかという情報が手に入るようになってきました。こういう情報を使うと、なかなか声を上げられない、在宅で被災されている方、あるいは車で避難されている方の場所がざっくりと分かるようになってきます。最後はマンパワーで探していくことが必要ですが、少ない人で効率よく、多くの声を上げられない人を探し出していくという形につなげられると思っております」
