
広島に原爆が投下されてから81年。6日午前に平和記念式典が行われた。過去最多の121の国と地域が参列したが、世界各地で戦火が続く今、平和への訴えは世界に届くのだろうか。
「核抑止」の理論に疑問
去年まで広島県知事を務めた湯崎英彦さん(60)は、広島から世界の要人に平和の声を発信してきた。
広島市佐伯区出身。1990年に東大法学部を卒業して通商産業省(現経済産業省)に入省した。2009年に広島県知事に初当選し、その後4期16年務めた。
在任中の2016年にはオバマ大統領がアメリカの現職大統領として初めて広島を訪問。また2023年にはG7広島サミットが開催。当時、バイデン大統領やG7の首脳を広島県の代表として迎えた。
湯崎さんは「核抑止」の理論に疑問を投げかけている。実はこれまで何度も核戦争につながる危機があったという。
そもそも核抑止とは「核兵器の報復能力と破壊力によって各国が核攻撃を行うことを抑止するという考え」だが、湯崎さんは去年の平和記念式典で「核抑止も80年間無事に守られたわけではなく、破綻寸前だった事例も歴史に記録されている」と演説した。
実際に1962年には、「キューバ危機」と言われる、ソ連(当時)がキューバにミサイル基地の建設を始めたのを発端に米ソが核戦争寸前にまで至った、軍事危機が起きたこともある。
さらに、ニューヨーク・タイムズによると1983年にはソ連の早期警戒システムが、アメリカから5発の核ミサイルが発射されたとの警報が鳴った。
しかし、ソ連側の当直士官がこれを5発だけで戦争を始めるわけがないと誤った警報だと判断し、核による報復攻撃を行わなかったことで核戦争への突入を回避したことがあった。
後にこれは、衛星が雲の先端に反射した日光をミサイルと誤認した警報だったことが判明したという。
核兵器の現在
現在の核弾頭数について見ていく。核軍縮の構図が変わりつつある。
まず、世界の核弾頭数の推計を見てみると、現在の総数は1万2187発で、去年に比べて54減っている。
その内訳を見てみると、アメリカ、ロシアという大国も去年に比べて数は減っている。一方で、中国、フランス、インド、北朝鮮では増えているという現状がある。
そして、核兵器の増強の動きは広がりつつある。3月、フランスのマクロン大統領は「これからの半世紀は核兵器の時代だ」と述べ、保有する核兵器の弾頭数を増やすと表明した。さらにヨーロッパにフランスの「核の傘」を広げる構想も示唆した。
さらに中東でも、先月22日、アメリカのエネルギー省がアメリカとサウジアラビアが原子力協力協定に署名したと発表した。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、必要と判断された場合、サウジアラビア国内にウラン濃縮施設を建設する内容が盛り込まれているといい、核拡散のリスクを懸念する声も出ているという。
ドローンなどでコストが下がっているといわれるが、一方で核兵器にかける支出は増えている。
核兵器廃絶国際キャンペーン=ICANによると、2025年の世界の核兵器関連支出の総額は、およそ18兆7500億円で、前年比19%増加した。
特に支出が多い3カ国は、アメリカがおよそ10.9兆円、中国がおよそ2.1兆円、イギリスがおよそ2兆円となっている。
AI×核兵器で暴走も?
近年、急激に進むAIの軍事利用。核兵器とAIによる暴走がリスクになっている。
先月、「チャットGPT」を手掛けるオープンAIは、開発中のAIモデルが暴走し、2社のシステムにサイバー攻撃を仕掛ける事故が起きたと発表。さらにその翌日、今度は、米国のAI開発企業アンソロピックも一部のAIモデルがテスト中にインターネットに接続し3社のシステムに侵入していたと発表した。
オープンAIの事例では、インターネットから隔離された環境でテストを行っていたが、AI自らが脱出する方法を発見。新興AI企業2社のシステムに侵入したという。
また、イギリスのキングス・カレッジ・ロンドンの教授が2月に公表した論文によると、オープンAI、アンソロピック、グーグルそれぞれが開発するAIに核保有国の指導者の役割を演じさせ、「外交で圧力をかける」「通常兵器で攻撃」「核による威嚇・使用」など、複数の選択肢から行動を選び、相手と駆け引きを繰り返す対戦をしたところ、シミュレーションの結果、AIは、すべての対戦で核による威嚇が行われ状況が不利になると核兵器の使用をためらわなかったという。
21回の対戦のうち、核が20回使われ、うち3回は核兵器の撃ち合いとなる全面的な核戦争にまで発展した。またどのAIも「譲歩」や「降伏」の選択肢を一度も選ばなかったという。
AIのリスクに関して国連でも警鐘が鳴らされている。
国連では、去年10月、AIによって核兵器が意図しない形で使われる事態などを防ぐため、核兵器を統制するシステムに人間による管理と監視を維持するよう求める決議案が出された。国連の採決では115カ国の賛成多数で採択。しかし、アメリカなどの核保有国を中心に8カ国が反対した。
日本は「AIのもたらす機会とリスクのバランスを考慮した」として棄権した。
(2026年8月6日放送分より)
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