
日本は、中国とどう対峙していくのか。大越キャスターが、日本の対中外交の最前線を担う金杉憲治駐中国大使に聞きました。
【画像】「ソフトパワー訴えていく」“台湾有事”発言以降の日中関係…金杉駐中国大使に聞く

金杉大使が中国に赴任したのは、3年前のことです。
大越キャスター
「中国の北京の地を踏んで、人と会い、話を聞き、ここで起きているものを見ると、日本にいて考えているものと違うなと。考えているだけではダメだなと。来て会って、話をすることが大事だと思った」

金杉憲治駐中国大使
「やはり、我々は正常化バイアスというのか、自分の見たい、あるいはこうであってほしいというのを見てしまうところがあります。私自身も来てみて、日本の方がいろんな分野で、まだまだ工業製品や生産力が上なんだろうと思って来たが、実際、来てみると、そんなことはない。中国のイノベーションのスピードと規模感というのが、自分の想像をはるかに超えていた。それが私の実感」
広まる“中国標準” 急速な技術革新

AIを搭載したロボットの大会は、その象徴です。
金杉憲治駐中国大使
「例えば、日本で同じような形で、ロボットが火を吹くときは、恐らく称賛よりも批判のほうが多くなる可能性がある。中国では、称賛をしつつ、若干、笑いも起きるという形です。新しい分野で、多少のリスクは取りながら、進んでいく国民性が中国にはある」

大越健介キャスター
「リスクを取る国民性プラス、国家の方針もそういうことだということなのでしょうか」
金杉憲治駐中国大使
「国家の方針もそうですし、中国をいま支えているのは製造業の力。そのもとで作られたシステムや製品が、世界に広まっていくなかで、“中国標準”が徐々に、世界でシェアを占めていく状況が生まれてくる可能性があると思います」
軍事力拡大…安保上の懸念は
中国軍は、去年、3隻目の空母を就役させ、活動領域は太平洋のより東へと広がりました。最新の防衛白書は「軍事力の質・量を広範かつ急速に強化している」と指摘しています。
金杉憲治駐中国大使
「幸い、いま、日本と周辺の同志国との関係は、非常にいいものがあると思います。韓国との関係もいいですし オーストラリア・インド・フィリピン、その他、ASEANの国との関係も非常にいいということなので、安全保障的な観点からも、同志国との関係をしっかり深めていく。いま、日中関係は非常に難しいですけれど、本当に多くの国の大使が応援してくれています」

大越健介キャスター
「日本も防衛力の強化ということを国の方針として掲げ続けています。そうしたことに対する懸念は聞かれないですか」
金杉憲治駐中国大使
「中国が『新型軍国主義』と日本を批判していますが、我々、大事だと思うのは、日本がやることをしっかり透明性をもって、各国に説明していくということで、透明性を持った安全保障政策を、これからも追求していく必要はある」
“台湾有事”発言以降の日中関係

中国のSNS『Weibo』に金杉大使が投稿した動画。
中国各地の料理をリポートしたり、日本の武道を紹介したりと、対日感情の改善につなげようと始めたWeiboのフォロワーは、いまや28万人を数えます。

しかし、中国政府は、去年11月以降、態度を硬化させたまま。きっかけは、台湾有事をめぐる高市総理の発言です。

高市総理(去年11月)
「(中国が)戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても“存立危機事態”になりうるケースである」
中国は、台湾問題に、日本が軍事的に関与する可能性を示唆したと受け止めました。台湾問題を「核心的利益の中の核心」と位置付ける中国にとっては容認できないことです。

金杉憲治駐中国大使
「去年の11月以降、私も含めて大使館員は、中国の政府関係者アカデミア、中国のビジネスマンの方に会うのが、非常に難しくなっています。例えば、私が地方に行くと、それまでは地方の指導者に表敬をして、日本のことをよろしくお願いしますと言えたんですけれども、地方に行っても、地方の指導者に会えないという状況が続いていて、非常に歯がゆい思いがあります。本来であれば、こういう難しいときだからこそ、対話をするというのが望ましいことですし、それが中国に求めていることですが、残念ながら、いまのところ、意味のある対話が中国との間では持てていない」
大越健介キャスター
「11月には中国でAPEC首脳会議が行われます。一つの、日中関係が改善される契機になろうかと思うのですが」
金杉憲治駐中国大使
「なかなか率直に申し上げて、楽観できる状況ではない。ただ、せっかくそこに機会があるわけですから、そこに向けて我々は、外交資源を使いながら、少しでも日中関係が安定するように持っていきたいと思います」
「ソフトパワー訴えていく」
期待を寄せるのは、中国政府が渡航自粛を呼びかけてもなお、毎月約40万の中国人が日本を訪れていることです。

金杉憲治駐中国大使
「日本に行く人たちの話を聞くと、食べ物・日本の地方の魅力・アニメ。日本の良さというのが、よくわかっている人たちですので、日本人として、日本のソフトパワーには自信を持って、しっかり訴えかけることは、引き続き、必要だと思います」
大越健介キャスター
「こうした状況下にあっても、中国からそれだけの方が日本に来てくれるということを考えれば、日本の側も中国の良さを含めて、アグレッシブに積極的に、中国に対して向き合う必要があるのではないかと思った」

金杉憲治駐中国大使
「やはり中国がどういう状況かをしっかり認識したうえで、日本として対応していくことが不可欠だと思いますので、アメリカも、いま、この瞬間で言えば、日中関係がもっと安定している方がいいと思っている。政府同士の関係というのは、いろいろと問題がありますけれども、対話や交流が粛々と進んでいく関係が、日中関係でできたらいい」
