
人型ロボットをはじめとする『フィジカルAI』は、中国社会での実用化も目覚ましいスピードで進んでいます。見るもの驚きの連続。その先に待ち受ける社会は、どのような姿なのでしょうか。
【画像】100m走“人類超え”が次々と『世界ロボット大会』300社が集結“フィジカルAI”最前線
社会実装されるロボットたち
中国の首都・北京。3000年の歴史をもつとされる都ですが、この10年でその光景は大きく変わりました。

大越健介
「びっくりした。ロボットが店員をやってます」
その象徴が、至る所で活躍するロボットの存在です。
大越健介
「人型ロボットが実用化されている現場です。コンタクトレンズを販売しています。スマホでオーダーします。今、支払い終わりました。あ、すぐ動き出した」

ここでは通販用のコンタクトレンズを取り扱っています。ロボットに棚出しを任せると、とにかくミスがないといいます。
大越健介
「品物を収めて、これを配達員が取りに来て、配達して終了という流れです。人の手は一切かかっていません。正確無比で疲れ知らず。24時間頑張るんです。このロボット君は」
100m走“人類超え”が次々と
到来したロボットの時代。この日、目の当たりにしたのは進化の速さでした。

ロボットの選手宣誓
「人類の理想を掲げ、技術の力を発揮して、イノベーションの帆を揚げ、全ての人々の夢を築き、知性で競い、未来を切り開く。これを誓います」

火花を散らしながら繰り広げられていたのは、2056台のロボットたちによる運動会です。100メートル走のエキシビションでは…。
アナウンス
「選手3人は準備完了です。“最速のロボット”を競う試合はいよいよスタート」


大越健介
「速い!9秒39!?ウサイン・ボルトなんか完全に超えちゃった。いきなり人類超え」

タイムは9秒39。この後の本戦でも、複数のメーカーのロボットが次々と人類最速を上回っていきました。ちなみに、去年の大会の優勝タイムは20秒を超えていたので、わずか1年ですさまじい技術革新を遂げたことになります。
人間の脳+ロボットの身体

こうしたロボットを支えるのが、フィジカルAIと呼ばれる技術です。人間の脳のように周囲の状況を認識・判断し、身体を使って現実世界で行動するAIです。つまりロボットとAIの融合。今回の運動会では、スポーツだけでなく社会生活に必要な動作を競う種目も数多くありました。しかも、リモコン操作ではありません。

11歳
「去年と比べてロボットが進歩しました。自主制御と関節の動きがだいぶ良くなりました」

9歳
「宿題をやってくれるロボットを開発したいです」
大越健介
「ものすごい技術が会場で見られるんでしょうが、それを担う人たち、新しい人材が生まれてくる。それを子どもたちが見て“自分もつくってみたい”となって、次々に発展が続いている」
熾烈な開発競争 次世代産業の要

フィジカルAIは今、世界中で開発競争が繰り広げられる次世代産業の最前線です。先週、上海市場に上場した人型ロボットメーカー『ユニツリー』の上場直後の時価総額は約10兆円に達しました。一瞬で世界的な巨大企業の仲間入りです。

ユニツリー 王興興CEO(36)
「5~10年後にはロボットを家庭に持ち込み、求められるタスクの80%を遂行できる段階にしたい。それが意味するのはロボット産業の“転換点”です」
フィジカルAIなどに関して中国で動くお金は、インフラ整備も含めると今後500兆円を超えるとも言われています。製造、倉庫・物流、飲食・小売、医療・介護、災害救助に防災など、リスクの高い仕事、担い手の少ない職種も多く、広がりは無限大です。

その活用先は安全保障分野も含まれます。中国、そしてアメリカにとってフィジカルAIは今や重要な国策の1つです。

中国 習近平国家主席
「人工知能(AI)などのハイテックは新興事業で若者の事業であり、中国式近代化・強国建設・民族復興の偉業とつながっています」
次世代の主導権を握るのはどちらの国なのか。
アメリカ トランプ大統領
「アメリカは未来を支配する。それが目標だと言い続けてきた。中国に対する優位を保つ」
300社が集結 最先端をその目で


300社を超える関連企業がこの日、展示会に大集結しました。最先端に触れられるチャンスは貴重です。今は第4次産業革命の最中。展示会で目立ったのは創業3~4年の新興勢力の多さでした。星動紀元=ロボテラは、清華大学発のスタートアップ企業です。

星動紀元
「『車が来たら多くの人が失業する』工業革命の時、言われました。実際は違っていて、馬車夫は“運転手”になりました。フィジカルAIは生産において過酷な労働や、労働環境がひどくて人間に向かない現場で使われ、職業が変化したり、新たに生まれる職業も出てきます」
「技術は全人類のもの融合すべき」
ただ、人類がこの技術を使いこなせるかには疑問が残ります。

大越健介
「ここに来て驚きと共に、少し不安にかられることもありました。AIがこれだけ人間に近い動きをするとなると、いずれどこかで人間が生き延びていくために、AIとの“共存”を真剣に、中国やアメリカだけではなく、日本も含めて世界が考えなければいけない。そんな時が迫っているのでは」
覇権争いの最前線でもあるフィジカルAI。政府系企業のブースにいた技術者は。
大越健介
「“AI人工頭脳”の技術はアメリカが発展しているそうです。アメリカと中国という2つのAI大国は、競争しながらお互い高め合っていくのか、どこかで融合して、お互いを取り入れ合って人類の発展に役立てていくのか」

北京人形机器人創新中心
「将来的に両国は必ず融和をするでしょう。ヒューマノイドロボットは1つの国のものではなく、全人類のものです。各国の技術は融合すべきです」
大越健介
「最先端の仕事に取り組んで、毎日充実していますか」

北京人形机器人創新中心
「オフコース。この業界に従事している人は皆ラッキーです。時代がチャンスを皆に与えてくれたのです」
国策で開発社会実装の“現実味”
大越健介
「中国が国の大方針としてAIの開発を進める中で、特に人型ロボットの分野は国民の目に分かりやすいし、中国得意の製造業とも相性が良い。そうしたことも相まって、まさに国を挙げた熱狂の中にあると感じました。このスピードで行くと、ほんの数年後には、業種によっては、自分の隣で一緒に仕事をする存在が、実はAIであるという時代もやってくるのではないかと実感しました」
フィジカルAIでは、中国とアメリカが世界をリードしていますが、その現状について、日本でAIロボットの開発研究をする東京大学大学院・松嶋達也特任助教に聞きました。

フィジカルAIの開発と言っても、【AI開発】【ロボット開発】【社会実装】など様々な分野での研究が必要になります。
AI開発:AIの頭脳、データ学習
ロボット開発:部品の開発、完成品の組み立て
社会実装:サービスの発案・提供
中国は、社会実装につながる分野の開発が進んでいます。一方、アメリカはAI開発の分野でリードしています。中国は、どういった労働が人間に代わってできるかを市民生活に取り入れて研究している段階にあります。
東京大学大学院 松嶋達也特任助教
「アメリカ、中国のAI技術者の中では、開発データを囲い込むのではなく“共有すること”で、さらなる技術発展につなげる動きもある」
米中2強“開発競争”実態は

研究者レベルでは横のつながりがあるということですが、“国レベル”で見ていくと、それぞれ独自に他国との連携を進める動きがあります。
アメリカは去年、AIの技術開発などを友好国同士で安定して行う国際的な枠組みを設置しました。ここには日本を含む20以上の国と地域が参加しています。中国は、AI分野のルール作りでも世界をリードする目的で、ロシアなど約30カ国が参加する国際機関を設置しました。
人間との共生課題は
アメリカでは、AIが暴走して勝手にサイバー攻撃をするといったことも起きています。現実の社会に対応できるAIロボットの研究開発を進める、早稲田大学・尾形哲也教授に聞きました。
早稲田大学尾形哲也教授
「AI技術の進歩は止まらない。新しい技術の有効性を認識して、同時に“共通のルール作り”を進めていかないといけない。例えば軍事転用の可能性。そういった危険性の認識や悪用の防止策を世界共通でまとめる必要がある」
