
病院で働く犬「ファシリティドッグ」をご存知ですか?
都内の小児病棟で働くアイビーは、手術室の前まで付き添ったり、治療に寄り添ったりと、闘病中の子どもたちの心をケアし入院生活を支えています。
一方、現在国内の病院で導入されているファシリティドッグはわずか8頭。なぜ普及が進まないのか?ファシリティドッグのもたらす効果とその現状を取材しました。
【画像】手術室の前まで一緒に…闘病中の子ども支える「ファシリティドッグ」国内にわずか数頭 なぜ普及進まない?
闘病中の子どもに勇気 病院で働く犬「ファシリティドッグ」
東京都立小児総合医療センター。小児がんや心臓病など、専門的な医療を必要とした子供たちが入院しています。
ここにはある大人気の“職員”がいます。

ラブラドール・レトリーバーのアイビー。
ファシリティドッグと呼ばれ、闘病中の子どもとその家族の心を癒し、入院生活を支えています。

ファシリティドッグは、病院内で落ち着いて活動できるよう、子犬の頃から特別な訓練を受けています。
となりにいるのはパートナーの大橋真友子さん。
ハンドラーとしてアイビーと共に暮らし、常にペアで活動しています。

ハンドラーは、病院内で犬と共に活動するための研修を受けた臨床経験のある医療従事者です。
そんなアイビーと大橋さんのペアとなら、犬が苦手な子でも自然と一緒に遊べるようになることが多いといいます。
ハンドラー 大橋真友子さん
「吠えたりしませんし 噛んだりしないし 急に動いたりということもないので」
ハンドラー「大きいわんこちょっと怖い?」
入院患者「うん」
ハンドラー「アイビーは大丈夫?」
入院患者「うん」
保護者「アイビー優しいもんね。」
小児医療の現場で大きな課題となっているのが「入院する子どもの心のケア」
ソーシャルワーカーなどを含む医療チームの設置や、家族の付き添い環境の改善に向けた取り組みなど、その支援の在り方は今も模索が続いています。

そんな中この病院ではファシリティドッグを導入し、大きな変化があったといいます。
アイビーがこの日向かうのは、入院したばかりの男の子のもと
ハンドラー 大橋真友子さん
「病棟内に感染症を持ち込まないようにということで、病棟と病棟の間で体拭きをします。」

ハンドラー 大橋真友子さん「やっほ~。アイビーベッドに乗せてもいい?」
りくくん「うん…」
ハンドラー 大橋真友子さん「まだ何もやらないよ!まだ先生来てない、アイビーしか来てないから」
11歳のりくくん。長期の治療が必要となり、今回初めて入院することになりました。この日行うのは、骨髄注射の治療。
ハンドラー 大橋真友子さん
「アイビー、ジャンプオン!(ベッドに飛び乗る)、ダウン(伏せる)」

アイビーは添い寝をして治療を応援します。
りくくん(11)「アイビー、あったかいなあ」「はぁ…」
ハンドラー 大橋真友子さん「緊張してるね。」
「アイビー、スナグル(顔を胸元にのせる)」
りくくん(11)「おお」

りくくんの母
「入院してから不安で不安で毎日泣いてたんですけど、 アイビーを見て笑顔がちょっとずつ出てきたりして、すごい救われました。アイビーに。」
アイビーが付き添うのは、治療だけではありません。
このあと手術を控えた、6歳のあきちゃん。生まれた時から何度も心臓の手術を受けてきました。

手術までの時間、一緒に遊んですごし…
あきちゃん(6)「アイビーの横にいきたい!」
手術室までの道のりも一緒です。

あきちゃんの母「行ってらっしゃい」
あきちゃん(6)「うん、ばいばい。アイビー、行くよ!」
ハンドラー 大橋真友子さん「アイビーは一緒に行きま~す」
お母さんはここでお別れですが、アイビーは手術室の前まで行きます。

あきちゃんの母
「今までは、入院かとかね、一人で寂しいとかってなってたんですけど、手術の辛さとか不安よりも、会えることを楽しみに、 手術までが待ち遠しいじゃないですけど、そんな風な心境の変化はあった」
子どもや家族のこころのケアを担うファシリティドッグ、今や唯一無二の存在になっているといいます。
東京都立小児総合医療センター 山岸敬幸院長
「治療そのものが痛いものとか辛いものって多いですよね。
説明だけではなかなかうまくいかないところも、ファシリティドッグの心理的サポートといいますか、支援があれば乗り越えられる」
国内わずか8頭 「お金の問題…」 ファシリティドッグの現状
しかし、現在国内で働くファシリティドッグはわずか8頭。必要とされている一方で、導入は限られています。
(Q:なぜ広まらない)
東京都立小児総合医療センター 山岸敬幸院長
「やはりお金の問題が一番大きいかなというふうに思いますね。」
導入までの準備費用に、犬の育成費やハンドラー研修費等でおよそ1,600万円、
その後の運営費にもハンドラー人件費や犬の飼育管理費、定期健診費等で年間およそ1,200万円かかります。
そして、その費用の多くは現在クラウドファンディングなどによる寄付で支えられています
どんな時も子どものそばに 更なる普及へファシリティドッグ
2019年の活動開始から、アイビーが寄り添ってきた子どもは500人以上。
その中には、何年にもわたって共に歩んできた子どももいます。
ハンドラー 大橋真友子さん
「たっちゃん久しぶり~!」

12歳のたっちゃん。4歳の頃から、再発・再再発による入退院を繰り返してきました。アイビーがデビューしたときから約7年の付き合いです。
ハンドラー 大橋真友子さん
「アイビー、ラップ(両前脚をひざにかける)
乗れるようになっちゃった。小さい子にはやらないんだけど。初めて会ったの4歳だもんね」
たっちゃん(当時5歳)
「アイビーとおさんぽ~!」

散歩をしたり、一緒に寝たり、手術に付き添ったり…
(Q:アイビーはどんな存在)
たっちゃん(12)「嫌なときにいてくれると、そういう気持ちがなくなる。大切な犬。」
たっちゃんは去年、病気が寛解しました。
こども達にとってかけがえのない存在になっているアイビー。

この病院では患者やスタッフの反響を受け、今年の春から2頭体制での運営を決めました。
ハンドラー 大橋真友子さん
「人がいくら言っても動かなかった子がアイビーが行ったら動き始めたとか、治療が辛くて笑わない子がアイビーが行った瞬間にすごい笑顔を見せてくれたりとか。人間じゃできないことをいっぱいやってくれてます」
