
土石流の要因だろうか、世界の氷河で崩落の危機が指摘されている。さらに海の氷も減少しているといい、巨大津波のリスクがあるという。
ネパール土石流 氷河と岩盤が崩壊
ネパールと中国の国境地帯で土石流が発生した。なぜここまで大規模な土石流が起きたのか、その原因を見ていく。
先月30日に中国当局が発表した分析結果によると、原因は氷河の崩壊にあるとしている。
中国側は、ネパール側の標高約5200メートルの氷河が崩壊し、氷河と岩盤がまとまって標高約4000メートルまで落下したという。
なぜ氷河と岩盤が一緒に崩落していったのか。
CNNはイギリスの専門家の話として、氷が地中や地表で土壌や岩石などの隙間をつなぎ止める接着剤のような役割を担っていおり、その氷が縮小すると不安定さを増し、突然、崩壊する可能性があると伝えている。
また、ネパールの地質学者・ウプレティ氏は「いつ崩壊してもおかしくない氷河は数多くある」とし、崩壊が起きれば「空から津波が降ってくるような状況になる」と指摘している。
氷河が年々減少 その影響は?
今回のような災害は他の地域でも起きる可能性があるという。実は、氷河は世界中にあるという。
そもそも氷河とは、雪が氷の塊となり重力などで少しずつ動いているものを指すが、氷河はオーストラリアを除くすべての大陸にあり、その数は27万を超えるという。
代表的なものとしては、フランスとイタリアの国境に位置するアルプス山脈の最高峰モンブランやヒマラヤ山脈にあるネパールと中国の国境に位置する世界最高峰エベレストにある氷河、それからアンデス山脈を構成するアルゼンチン南部にある世界最大級のペリト・モレノ氷河、そして日本にも富山県の立山連峰などに氷河がある。
ただ、氷河は年々減少している。
同じ場所から撮影したヒマラヤの氷河の写真を見ると、白い部分が減少し、山肌が露出している部分が増えていることが分かる。
イギリスの科学誌ネイチャーによると、温室効果ガスの放出を続けた場合、今世紀半ばには年間で最大4000個の氷河が消失するという。その場合、生活用水の減少など市民生活にも多大な影響が出るという。
拡大する氷河湖 決壊、洪水のリスク高まる
こうした氷河の崩壊以外に注意が必要なのは、氷河湖の決壊だという。
そもそも氷河湖とは、氷河から解け出た水などによって形成された湖のことを指す。
氷河が解けて水量が増えていることで氷河湖の拡大が急速に進み、いつ決壊するか分からない状況だという。
また、過去には氷河湖の決壊による洪水被害も起きている。
1994年、ブータンで標高4500メートルに位置するルゲ氷河湖が決壊し、濁流は約90キロ下の村の橋や水車などを破壊し、20人以上が亡くなったという。
科学誌ネイチャーはこうした氷河湖の決壊が今後も増えると予想していて、世界で1500万人に氷河湖決壊による洪水の危険性を訴えている。
アルプスでは氷河崩壊前に避難
ただ、過去にはこうした災害を予測することで難を逃れた地域もあったという。それはアルプス山脈で起こった。
去年5月、スイスのアルプス山脈で氷河が解けて大規模な地滑りが発生した。
しかし、ナショナル・ジオグラフィックによると、氷河崩壊が起きる9日前に避難していて、避難した住民や家畜に被害はなかったという。
では、なぜ9日前に避難することができたのか。
去年に入ってから氷河の上の斜面からの落石が目立つようになっていたため、住民や科学者などが監視をしていたという。そこから崩壊の兆候を察知したことで、危機を逃れることができたという。
北極圏での異変 写真にくっきり
北極海の氷が急速に減少していて、これによる“巨大津波”発生のリスクも指摘されている。
北極圏に位置するノルウェーのスバールバル諸島。その60年前の姿を写した写真を見ると氷河が確認できるが、それから約60年後、2024年に同じ角度から撮影した写真では氷河がなくなっていて山の全貌が見えている。
さらに、同じ島を撮影した約110年前の写真では氷河が見えるが、2002年になると氷河で隠れていた山が見えている。そして2024年になると氷河がさらに減って、ほとんどなくなっているのが分かる。いかに氷河が急速に減っているのかが分かる。
アメリカの国立雪氷データセンターによると、北極海に浮かぶ氷の量は1979年以降、年間で平均約7万4000平方キロ減少しているとの推計を発表している。これは北海道の面積の約9割に相当する広さだという。
また、コロラド大学は、早ければ来年の夏にも北極海の氷がほとんどすべて解けてなくなると予測する研究データも公表している。
フィヨルドでの津波による揺れ 地球規模で観測
そして氷が解けることで巨大な津波が起きた例があるという。
2023年9月、世界各地の地震観測所で「これまでにない奇妙な揺れ」を観測したという。通常の地震とは異なる非常にゆっくりとした振動が9日間にわたって地球規模で観測されたという。
この揺れの発生源をたどっていった先にあったのが、グリーンランドのフィヨルド地帯。フィヨルドとは氷河が解けた後にできる複雑な形の入り江のことを指す。
ではフィヨルド地帯で何が起きたのか。
アメリカの科学誌サイエンスによると、温暖化によって、フィヨルド沿いの山にある氷河が薄くなり、斜面が不安定になった。その結果、大量の岩や氷が山の斜面から真下にあるフィヨルドの水面へ一気に崩れ落ちた。この衝撃で、最大約200メートルの巨大な津波が発生した。さらに、フィヨルドは非常に複雑な地形をしているため簡単に波が外へ出ていかないということで、フィヨルドの中で何往復も波が揺れ続けたという。その結果、振動が地球規模で観測されたとみられているという。
この揺れが確認された前と後のフィヨルド地帯の写真を見比べると、奥にあったはずの岩や氷河がなくなっていて、手前の辺りも欠けている。おそらく地滑りを起こし、海に落下したとみられている。
このように海の氷が解けると何が起きるのか。名古屋大学の西村浩一名誉教授によると、まず海の氷が減少すると、これまで氷に当たっていた太陽光が直接、海に当たることになる。そうすると海水温が上昇し、また海の氷が減少するという悪循環に陥ってしまうと指摘している。
(2026年9月2日放送分より)
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