
農林水産省が政府備蓄米の買い戻しを正式に決定しました。背景にあるのが「コメあまり」です。農家はコメの買い取り先が見つからないと訴えています。
新米「買い取れない」
栃木県さくら市のコメ農家、岡田農園の岡田伸幸さん。20ヘクタールの田んぼで「コシヒカリ」や「にじのきらめき」などを栽培しています。
「例年であれば8月中にコメの袋を(買い取り業者が)新しいのを持ってきて、令和8年産と書いてある袋に詰めていくというのが例年の流れだったんですが、今年はその袋さえ持ってこない。値段も付かないでどうにもならない」
間もなく収穫が始まりますが、総量100トンのうち今月末に収穫予定の60トンのコメについて、買い取り先がまだ決まっていないといいます。
一体、何が起きているのでしょうか。
「『にじのきらめき』という品種が、できれば引き取りたくないということで、ちょっとお断りをされている状態ですね。(業者に)コメが余っているということで、これから先の米価の予測も難しいということで、できれば買い取りしたくないというのが現状だそうです」
「(Q.聞いた時どう思いましたか?)いや、何も考えられないというか、どうしたらいいのということしか思いませんよね。手塩にかけて育ててきたこのコメたちが、誰の口にも入ることなく処分しなくちゃいけないというのは、ちょっと考えたくもないですよね」
いつも取引していた複数の業者から、今年生産したコメは早々に「買い取れない」という連絡が来たといいます。
「(Q.よりよい条件のところが見つかるまで収穫を遅らせるということは?)それはできないんですね。それをやってしまうと品質が著しく落ちてしまって、例えば乾燥しすぎて『胴割れ』といってコメが割れてしまうといったこととか、『刈り遅れ』といって熟しすぎて茶色いコメが混じってしまう」
「(Q.自分で倉庫を借りて保管して、どうにかするのは難しい?)できないことはないですけど、それなりに費用がかかってきますので、それをまた販売というかたちになると、今の値段(市場価格)から倍になってしまう」
「コメあまり」農家困惑
新米の取り引きは例年、岡田さんから買い取り業者に連絡し、価格や量を相談して買い取ってもらっていました。
コメ騒動でコメが不足していた去年は、収穫時期のかなり前の時点で業者から「高くてもいいから売ってほしい」という連絡が殺到しました。
しかし、今年は状況が一転。買い取り先が見つからないという事態に…。このままでは行き場のないまま、新米を収穫することになってしまいます。
「本当に行き場がなくなってしまって、どうにもならないという時には、在庫として抱えておくことはできないので。肥料として田んぼにまくとか、クズコメ同然の値段で販売するとか。私のところでは1俵(60キロ)当たりのコストが1万8750円かかるんですよ。なので、それ以下になってしまえば、私の手取りどころか貯金を切り崩して生活しなくちゃいけない」
コメ農家を16年続けてきた岡田さんも初めてだという新米の買い取り先が見つからない事態。その背景にあるのが、かつてない「コメあまり」です。
新米出回るも…倉庫に山
千葉県山武市にある倉庫の一角に積み上がっていたのは、去年産のコメ。米のたけやま・伊藤享兆代表はこう話します。
「この辺に置いてあるのが、すべて去年のコメになります。だいたい50トン程度の量が、まだ在庫として保管されています」
千葉県産を扱っている卸売業者の倉庫には、早場米の新米が入荷し始めた現在でも、去年産のコメが40トンから50トン在庫として残っていました。
どうしてこのような状況になっているのでしょうか。
「安い備蓄米や外国産米を買われた結果、一番高い去年産のコメが残ってしまった」
「やはり新米が出てしまったので、この去年のコメはなかなか売りにくい状況ではありますけど、私たちはこういった温度管理をした倉庫で保管していて品質を保っているので、少しずつ価格を下げて、新米との価格差をつけて販売していって、消化していくしかないかなとは思っています」
このように売れ残った去年産のコメを売り切るため、一部のスーパーでは、去年では考えられないほどの価格で販売されています。
コメ価格2000円台前半も
千葉県柏市のスーパーでは、令和7年産の銘柄米「ふさこがね」を税抜き5キロ1980円という低価格で販売しています。
来店客
「安いと思います。この値段だとあんまりないんじゃないですか」
株式会社三和 池田宗幸グロサリー部長
「この時期ですと、通常でもう古米はどんどんなくしていって、新米に切り替えていく。逆に言うと9月上旬だと、売り場に古米は極力ないようにするというようなのが毎年の流れですけれども。今、古米がどんどん原価が下がっているので、うちはまだまだ古米を販売している」
ここまでコメの販売価格が安くなった要因は、新米が出回る今の時期まで「コメあまり」の状況が続いているからだといいます。
池田グロサリー部長
「新米がどんどん入ってきているので、多分もう(古米の)売り先がないというような状況になっている問屋さんもあるので。問屋さんの余っているものに対して、うちとしてはこれくらいやる(引き受ける)という話をして、価格面の話をして(仕入れ値を)下げていただいている」
消費者は喜び
消費者にとって喜ばしいコメの販売価格低下。気になるのは、この低価格がいつまで続くのかということです。
来店客
「上がらないで今ぐらいでいてくれるとありがたいなというのは思います」
そうしたなか、政府は2日に備蓄米の買い戻しを正式に決定。去年生産されたコメ21万トンを対象に買い戻す方向で、農林水産省は今月中に手続きを始めるとしています。
(2026年9月3日放送分より)
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