ネパール土石流現場 生存者の救出相次ぐ 奇跡の救出劇 生死分けたポイントは?

ネパール土石流現場 生存者の救出相次ぐ 奇跡の救出劇 生死分けたポイントは?
この記事の写真をみる(7枚)

 ネパールの土石流現場では、発生から1週間以上が経ち生存者が救出されるケースが相次いでいる。“奇跡”ともいわれる救出劇の背景にある、生死を分けたポイントとは。

【画像】氷河崩壊を予兆させる出来事が

捜索活動の鍵は最新機器

生存者が救出されるケースが相次ぐ
拡大する

 氷河が崩落したとみられている地点の周辺には、多数の水力発電所があり、多くの発電所が土石流の被害に遭っている。

 「トリシュリ3A水力発電所」には全長4キロを超えるトンネルがある。土石流発生から10日目の今月4日、ここで作業員2人が救出された。この発電所には、まだ2~3人の生存者がいる可能性がある。

 そして翌日には、そこからほど近い「アッパートリシュリ1水力発電所」で、49歳の中国籍の男性作業員が救出された。

 また同じく5日に、水力発電所ではないが下流に位置するヌワコット郡の住宅で、64歳の女性も救出された。

 このほかラスワガディ発電所は、46人が生存しているという情報がある。

 大きな被害を出した今回の土石流だが、捜索や救助活動には数々の最新機器が投入されているという。

数々の最新機器を投入
拡大する

 代表的なものの1つが「ドローン」。現地メディアによると、熱を検知するカメラで生存者を捜索。AIを搭載し被災者と会話し、その要望を操縦者に伝えることも効果を出している。人が入れない場所などに救援物資や医薬品を運搬する役割も担っている。

 また「音響探知機」も活用しているという。これは生存者が発する微細な音などを検知して位置を特定するというもの。水力発電所のトンネルから生還した2人の作業員の発見にも貢献したという。

 さらにロイター通信によると、インターネットを使ったメッセージアプリがトンネルでの捜索活動などで使用されている。「前線部隊」に専門家や当局者らの「後方部隊」が逐次アドバイスを送り、発電所の見取り図などのデータも共有していたという。

 では、トンネル内での生死を分けたポイントは何だったのか?

飲み水と酸素がポイント
拡大する

 飲み水について、現地メディアは、トリシュリ3A水力発電所から生還した作業員の家族の話として「トンネル内に漏れ出る水を、着ていた服で濾過(ろか)して飲んでいた」と報じている。

 そしてトンネル内の酸素について、BBCによると、救助隊は作業員の呼吸を助けるため、トンネルに掘削機で穴を開け、コンプレッサーで空気を送り込んだという。

崩落発生前に予兆?

氷河崩壊を予兆させる出来事が
拡大する

 土石流の原因ともいわれる氷河の崩落には、予兆があったという情報も出てきていて、警報システムに課題も指摘されている。

 イギリスの科学誌「ネイチャー」によると、そもそも多くの氷河や岩盤の斜面は、少しずつ移動し続けているという。

 災害発生数日前の衛星データを分析したところ、崩落前の数週間、崩落場所付近の氷河の一部と岩盤斜面の移動スピードが加速していたとみていて、これが懸念すべき予兆だったのではないかと指摘している。

 また、山岳地域における災害リスクなどを研究する専門家団体「ハイリスク」が公表した報告書で、崩落発生の数日前から、氷河の解けた水が茶色に変色したり、岩盤の亀裂が拡大したりと、「氷河崩壊を予兆させる出来事がいくつかあった」と指摘している。

 また、ネパールの警報システムについて課題を指摘する声もある。

下流では命が救われた例も
拡大する

 ロイター通信によると、ネパール側は複数の地点にセンサーを設置していたが、そのすべてが流されたため、早期警報システムが作動せず、結果として警報発表に遅れが生じたという。

 過去には、警報がなくても住民が助かった例もある。

 去年5月、スイスのアルプス山脈では、氷河が解けて大規模な地滑りが起きた。

 ただ、「ナショナル・ジオグラフィック」によると、ここでは住民や科学者などが監視を行っていて、落石など氷河崩壊の兆候を察知したことで、住民は氷河崩壊の9日前に避難できた。日常的な監視が功を奏したという。

 また、今回の土石流では、ある校長の機転で命が救われた例もある。

 ネパール中部にある高校の職員に、上流に住む親族から土石流が発生したと一報が入った。校長が全員を高台に避難させ、生徒約900人と教職員16人は全員無事だった。

中国との情報共有に課題は

 ネパールと中国との情報共有に課題も指摘されている。土石流発生の3カ月前に両国の専門家らが会合を行っていた。

氷河の監視 広範な協力要求をしていたが…
拡大する

 ロイター通信によると、5月にネパールは中国の当局者や専門家と、洪水や氷河の災害リスクなどに関する会合を開き、中国側に氷河の監視について、より広範な協力を要求していた。

 この会談後、ネパール当局者はロイター通信に「中国から十分な情報が得られなかった」と明かしていたという。

 こうした中国の対応へ批判も出る中、中国側は先月29日に声明を発表し、「中国の専門家チームは重要な情報をネパール側とタイムリーに共有してきた」と主張している。

(2026年9月7日放送分より)

この記事の画像一覧
外部リンク
この記事の写真をみる(7枚)
このまま画像を見る
続きは広告を見た後にご覧いただけます
クリックして広告を見る