
浜岡原発で再稼働審査に不正データが用いられていた問題。中部電力は14日、会見を開きました。
会見は、経営陣の謝罪から始まりました。

中部電力 林欣吾社長
「広く社会の皆さまからの強い不信を招いたことについて、改めて、深くおわび申し上げます。これらの経営責任を明らかにするため、私は今月末をもって辞任することにしました」

中部電力 勝野哲会長
「経営責任を明確にするため、会長職を辞任することにしました」
そして、悲願でもある原発再稼働の審査への申請も取り下げます。
中部電力 林欣吾社長
「信頼性に重大な疑義が生じている状況において、従前の申請を維持することは適切ではない」

発端となったのは、浜岡原発3・4号機の安全対策をめぐるデータの改ざん・捏造です。
中部電力 林欣吾社長
「安全性の根幹にかかわる“基準地震動”策定において、不適切行為を繰り返し行っていたことは、原子力事業者として、決してあってはならないこと」
基準地震動とは、原発の敷地で起こりうる地震の最大の揺れです。これに耐えられる設計であるかが、審査をクリアする絶対条件となっています。
過去に起きた地震などから計算された20通りの地震波から、最も平均に近いデータが代表波として、基準地震動に用いられます。ところが、中部電力は、これを故意に小さくしていました。
例えば、2018年から行われていた手法では、都合のいい小さい地震波を“代表波”として設定。これに合わせるように、残りのデータを捏造していました。


1976年に営業運転を開始した浜岡原発。
工業地帯が広がる東海エリアの旺盛な電力需要を支えてきました。
5基ある原子炉のうち、1・2号機は老朽化に伴い廃炉へ。
問題の3・4号機は、東日本大震災以降、国の要請により、15年以上にわたって停止。再稼働に向けた審査が進められてきました。

津波対策として、巨大な防波壁を建設するなど、投じてきた安全対策費は約2800億円。さらに、南海トラフの震源域でもあるため、数千億円規模の追加費用がかかる見通しです。
ちなみに、停止中の3・4・5号機が動けば、約2500億円の収益改善を見込んでいて、再稼働は、中部電力の大きな経営目標になっていました。

中部電力 林欣吾社長
「経営の観点からすれば、経営自体が法令やルールよりも、当社の論理を優先する考え方を是正してこなかった」
14日、250ページ以上に及ぶ、外部弁護士による調査報告書が公表されました。そこで指摘されたのが、独自の正当化理論。

中部電力 林欣吾社長
「目標について、厳しいトーンになってしまったのでは」
253ページに及ぶ報告書で指摘されたのが、浜岡原発の再稼働を進めることを背景とした“独自の正当化理論”。つまり、“不正をしていても、自分たちは正しいことをしている”という考え方です。

例えば、本来のルールに沿わない基準地震動の選定方法も『安全性に問題はないとし、早期再稼働を目指すにはやむを得ない』と考える傾向があると指摘しています。ほかに、基準地震動の算出などを行う原子力土建部に宛てた内部通報もありましたが、『設定条件を審査資料に記載すべき』との声に対して『もし、浜岡をあきらめるリスクを自ら顕在化させるということであれば、ご指摘のような記載もしますが』と。つまり、『記載すれば、再稼働をあきらめることになりかねない』と、圧力をかけるようなメールが、責任ある人物から送られたり、相談者の人格を非難するやりとりもありました。

元原子力規制庁幹部、長岡技術科学大学・山形浩史教授は「自分たちこそが専門家で一番よくわかっている。規制庁の審査官を見下した部分もあったのでは」と指摘します。
この独自の正当化理論が生まれた背景として、報告書では、経営陣からの発言も挙げています。

3年前の社内報での林社長の年頭挨拶では『とりわけ浜岡原子力発電所の再稼働が不可欠です。基準地震動の確定などを着実に進め、早期再稼働に向けて最大限努力していきます』と、再稼働が“重要な経営目標”だと社員に周知されています。
現場の原子力土建部に対しては、直接、強い言葉もありました。

2018年、当時の社長・勝野氏からは『審査スケジュールが尺取り虫のように遅れる』と。これは当時、基準地震動が決まらないことで、再稼働の審査が何度も先送りになっていることを表現しています。2022年、ある取締役からは『今までの時間軸でやったら、もう時間切れ。それをわかっていながら、もっとやれないのか』という発言もあったといいます。

14日の会見で、林社長は「経営層が実情を理解しないまま原子力土建部を叱責したことが圧力として作用し、不適切行為の要因の1つになったとも指摘されており、深く反省しております」とした一方で、取り下げた再稼働の申請については「徹底的に企業体質を見直し、生まれ変わることで、再申請を目指す。決して再申請をあきらめたものではない」としました。

山形教授は、今後について「中部電力が『もう嘘をつかない』と言っても信用できるのか。再稼働の審査を再申請するにしても、数年単位になるのでは」と話します。
