
関東を中心に、長時間にわたる大量の雨をもたらした台風25号。土砂崩れなどにより、これまでに千葉県と神奈川県で7人が死亡、5人の行方が分かっていません。川が氾濫した千葉県佐倉市などでは、今も水が引かず、市民生活が困難にさらされています。
【画像】土砂崩れ多発…大雨“長時間”で被害拡大か 台風から一夜経っても水が引かない原因は
川が氾濫 茶色に染まった街
千葉県佐倉市。台風25号は街の様子を一変させました。

朝比奈剛士
「21日の大雨の影響で氾濫が発生した高崎川です。川からは茶色い水があふれ、道路との境が分からない状態です。周辺の道路や駐車場では、窓ガラスの下まで浸水している車もあります」
JR佐倉駅から約240メートル離れた高崎川。この川が氾濫し、街が一面冠水。消防などのボートが孤立した住民の救助に回っていました。
朝比奈剛士
「小さな子どもを抱えた家族でしょうか。ボートで救助されていきます。大人の腰の高さほどまで浸水しているので、子どもを連れての避難は難しいと思われます」

JR佐倉駅の北側のエリアは、飲食店や金融機関、病院、住宅などが混在する場所です。
荒井理咲子
「JR佐倉駅へと続く道です。小道から水が流れ出てきています。かなりその流れが速く、川の流れのようになっています」
あっという間に浸水“畳浮く”
浸水被害があったエリアの住民が撮影した映像。水の深さは車のタイヤが完全に隠れるほどまでに。濁った水で路面の状況が分からず、出るには危険です。

撮影した住民
「家がもうこんな感じ。終わっています」
家の中は床上まで水浸し。畳が浮いた状態です。
荒井理咲子
「4名の救助隊員を乗せた水陸両用のバギーが、大きく冠水した地域へ入っていきます。この後、冠水した場所へ入っていきます」

浸水のスピードは、かなり速かったといいます。
自宅が浸水 藤崎衛さん
「最初はちょろちょろ水が出ているだけかなと思ったら、あっという間に水が流れ込んできて。あっという間でした」
(Q.この状況は)「初めて。20年以上経ちますけど」
自宅は床上まで水が上がってきたといいます。
自宅が浸水 藤崎衛さん
(Q.水が入ってくる様子はなかった)「なかった。雨戸を閉めていて、水は入ってこなかったと思うが、下から多分、水が上がってきて、畳がぷかぷかしている状態」

ボートで救助“復旧めど”立たず
冠水した住宅街ではボートでの救助が続きました。
荒井理咲子
「船に乗って1名が救助されています。横にいる救助隊員の腰の辺りまで水があります」

母親を迎えに来た娘が、消防に助けを求めました。
救助された女性の娘
「朝はここまで水があったので、迎えに来たが入れず、どうにもならなくて。ほっとした。本当にレスキューの方、本当にありがたい」
救助された女性
「まだ停電している。ブレーカーを下した。トイレのスイッチを入れてもつかなかった」
川の近くにある飲食店も被害に。
やきとりいしい 塚本千里さん
「ここも今朝まではひざのちょっと上くらいまで。ここが冷蔵庫。うわ臭い。ここまで水が来てしまっている」
(Q.少しにおいが。この中のものは)「廃棄だね。しょうがない」

冷蔵庫5台、冷凍庫3台、製氷機1台が使えなくなりました。この地で40年以上になりますが、これほどの被害は初めてのことだといいます。
やきとりいしい 塚本千里さん
(Q.復旧のめどは)「立っていない。皆からメールが来るが、いつになるか分からないと」
普段の姿を取り戻すには時間がかかりそうです。
荒井理咲子
「午後5時半です、この3時間で30センチほど水が引きましたが、依然として町の至る所で冠水しています。排水作業は進んでいないようです」

市によると、国交省と連携し、23日以降に排水用のポンプ車を入れる予定だということです。
大量の土砂が街へ ロバも…
君津市では、小櫃川沿いのエリアに大量の泥が流れ込みました。

延増惇
「君津市内にある中古車展示場です。21日に襲った猛烈な雨によって土砂がのみ込みました。展示場の車は土砂に半分以上浸かっているものもありますし、ほとんど頭しか見えないぐらい土砂に埋もれているものもあります」
「恐らく道路だったと思いますが、大量の土砂に覆われていて原型をとどめていません。白い車は土砂に埋もれて抜け出せなくなったのでしょうか」

建設会社の事務所では車3台、重機1台が水没しました。
相川建設 相川祐一社長
(Q.ガレージに沢の水が流れ込んでいる)「うん」
(Q.1日経っても止まらない)「止まらないです」
(Q.会社の営業的には)「できないです。車も重機もだめ。重機も車も動かない」
ペットのロバも生き埋め状態となりました。

相川建設 相川祐一社長
「潜っちゃって動けない状態になってて。皆でびちゃびちゃになって、やっと上げてくれた。衰弱してます」
泥は住宅にも…。
浸水被害に遭った住民
「10年くらい前にもあったが、家には入らなかった。今回は特別」
市原市では高齢者施設が孤立状態となっています。
長雨で土砂崩れ多発“孤立”も
延増惇
「市原市の高齢者施設につながる道路には大量の土砂が堆積していて、道が寸断されています」
施設には入居者160人、職員20人の合わせて180人。食料は3日分あるということで、県の土木事務所が土砂の撤去作業をしています。
千葉県では土砂崩れによる被害も相次いでいます。
朝比奈剛士
「大量の土砂が流れ込み、家が押しつぶされた状態になっています」

鴨川市では80代の男性と女性、それぞれ1人が亡くなっています。その他の自治体でも土砂崩れによる死者が確認されていて、千葉県での死者は5人、2人の行方が分かっていません。
土砂崩れは神奈川県でも…。
朝比奈剛士
「住宅の1階部分は土砂で完全に埋まっていて、車も横転しています」

2階建てアパートの1階部分に土砂が流れ込み、20代の女性と連絡が取れていません。近くの住宅にも土砂が押し寄せました。
近隣住民
「初め地鳴りが聞こえた。ゴーという音で。大地震かなと思ったんだよ。すごい音と揺れで」
(Q.何年住んでいる)「五十何年だね。こんな大きなの(土砂崩れ)初めて」
「玄関横に隣の家が寄りかかってきて。これは土砂崩れなんだ」

神奈川県では2人が死亡、3人が行方不明となっています。
1日経っても…水引かぬ市街地
(Q.佐倉市の水位が、なかなか低下しないのはなぜですか)
佐倉市は、千葉県の内陸部に位置し、近くには印旛沼があります。印旛沼を管理する水資源機構によると、高崎川は印旛沼に流れ込んでいて、その印旛沼の水位が下がらないということです。
なぜかと言うと、印旛沼からの排水は東京湾と利根川にポンプを使って行われていますが、今回、予想を超える雨量だったため、排水能力の限界を超えてしまったということです。大雨に備えて事前排水を行いましたが、排水が追い付かない状況で、今後、どれくらいのペースで水位が下がっていくのか、予測するのは難しいということです。
記録的大雨 原因は『沿岸前線』
(Q.なぜここまで長時間にわたって大雨が続いたのでしょうか)
台風の接近に伴って、伊豆諸島や千葉、神奈川など沿岸ほど活発な雨雲がかかり、記録的な雨量となりました。
原因は3つあります。

台風が東に向きを変える地点『転向点』では、台風のスピードが遅くなります。転向点は高気圧の縁から偏西風に乗り換えるタイミングです。例えると、電車の乗り換えに時間がかかるように速度が遅くなり、雨雲が長時間かかりました」
また、台風の発達のピークと関東に近付いたタイミングも重なりました。さらに日差しがなく、雨が降ったことで内陸に冷たい空気がたまり、東京と沿岸の勝浦で気温差が大きくなりました。この冷たい空気と暖かい空気がぶつかって局地的な前線『沿岸前線』ができて、海沿いを中心に大雨となりました」

(Q.沿岸前線の予想は難しいですか)
先月の千葉豪雨の時も沿岸前線が発生しましたが、こういった局地的な現象ほど予想が難しいです。沿岸前線は平野と海がある所で発生しやすいので、全国どこでも起きる恐れがあります。
土砂災害というと山間部で起こるイメージも強いですが、今回、神奈川や千葉などでの被害が目立ったのは沿岸前線の影響ということになります。
土砂災害多発その理由は
土砂災害の状況を詳しく見ていきます。
番組が複数の自治体に確認したところ、神奈川県では少なくとも117件発生しています。横須賀市では住宅に土砂が流れ込み、住民の70代男性が死亡、妻は行方不明です。三浦市では住宅の1階部分に土砂が流れ込み、住民の30代女性と連絡が取れないなどの被害が出ています。

千葉県では少なくとも88件発生しています。鴨川市では複数の場所で土砂崩れが発生し、80代女性・80代男性が死亡、70代男性・60代男性が行方不明などの被害が出ています。

(Q.土砂災害が多発した理由はなんですか)
土砂災害のメカニズムに詳しい、東京都市大学の佐藤剛教授によると、今回の千葉などで起きた土砂崩れの原因として、このようなことが考えられるとしています。
表面に水を通しやすい土の層があり、その下に水を通しにくい硬い岩盤の層があります。雨が降ると、土の層と岩盤の層の間に水が溜まります。この水が飽和する、つまり増えすぎると、土の層がウォータースライダーのように流れてしまう。これが土砂崩れの仕組みだということです。

佐藤教授は、8月の千葉豪雨の時点で、すでに地面が緩んでいた可能性もあり、さらにその後も雨が降り続いたことで、土砂崩れが起こりやすい状態になっていたのではないかと分析しています。
土の中の水分量を見ても、まだ千葉県を中心に地盤が緩んでいるため、天気が回復しても、土砂災害には十分な注意が必要です。
