
注目されていた米中首脳会談。前日は異例の歓迎ぶりが目を引きましたが、いざ当日を迎えた首脳会談では、いわゆる“頭撮り”と呼ばれる冒頭発言は公開されず、その内容についてもアメリカ側の発表は一切ありません。煌びやかなおもてなしの裏でいったい何があったのでしょうか。
“友好の使者”パンダ外交発動
“サウスポーティコ”と呼ばれるホワイトハウスの南玄関。ショーの始まりのようなアナウンスと共に、トランプ大統領夫妻が姿を見せました。習近平国家主席夫妻を出迎えるためです。


11月の中間選挙を前に支持率が低迷するトランプ大統領。今回の中国との一連の外交日程は、存在感をアピールする絶好の舞台でもあります。習主席を乗せた車が到着すると、両首脳は握手を交わし、そのまま歓迎式典のスピーチに臨みました。

アメリカ トランプ大統領
「習主席と私は、両国のより良い未来を切り開いていく。習主席、彭夫人、歴史的な訪問に改めて感謝する。アメリカへようこそ」
対する習主席。“友好の使者”と位置付けるジャイアントパンダが近く、アメリカに到着することを明かしました。

中国 習近平国家主席
「今日はいいニュースを共有したいと思います。数日後『平平(ピンピン)』『福双(フーシュアン)』がアトランタ動物園にやってきて、米国の皆さんにお披露目します。米中両国の友好を推進し、手を携え、さらに美しい世界を築きましょう」
米メディア“排除”影響が表面化

友好ムードを演出したかったトランプ大統領にとって、パンダは大きな成果です。しかしこの式典。
ホワイトハウスのYouTubeでは中継されましたが、FOXニュースやCNNといった、アメリカの主要なテレビ局では中継されませんでした。トランプ政権がCNNなどを取材から排除したことに抗議して、各局がホワイトハウスでの取材をボイコットしているからです。

成果を誇示したいトランプ氏にとっては、排除が裏目に出た格好。肝心の首脳会談は、中国の国営メディアが撮影したわずかな映像しか配信されていません。

AP通信 写真記者
「普段なら記者以外に写真班やテレビクルーが並びますが、今回は異例の写真撮影のみでした。ただ両首脳は上機嫌で、トランプ氏は習氏に身ぶりを交えたり、中国記者団を『礼儀正しい』と持ち上げていました」
中国国営新華社通信によれば、習主席はトランプ大統領に対して、台湾独立に反対する正しい立場を堅持するよう求めたといいますが、トランプ大統領がどう応じたかは分かっていません。

アメリカ トランプ大統領
(Q.会談の感触は?台湾も議題に?)
「いい会談だった」
「同盟国」発言に習主席が呼応か
ただ、中国は勢いづいたようです。その後の晩餐会では習主席から、日本にとって気になる発言が飛び出しました。

きっかけは、午前中に行われた歓迎式典で、トランプ大統領が発したこの言葉。
アメリカ トランプ大統領
「共通の利益の追求によって、両国民は広大な海すら乗り越え、第2次世界大戦では同盟国にもなった」
アメリカの大統領が中国の指導者を前に、米中を「同盟国」と表現するのは極めて異例のことです。そもそも当時、アメリカと同盟関係にあったのは現在の中華人民共和国でなく、国民党の蒋介石が率いた中華民国です。
しかし、米中が手を取り合って日本に対抗したというのは、高市政権を「新型軍国主義」と位置付けて批判を強める今の中国にとって都合の悪い話ではありません。約10時間後に始まった晩餐会で習主席はこう訴えました。

中国 習近平国家主席
「80年以上前、中米両国の国民は肩を並べ、日本軍国主義の侵略者に立ち向かいました。抗日戦争期間中、中国の軍人と民間人は数百もの米軍パイロットを救出し、数十万の命の代償を払いました。血と戦火の中で築かれた友情は、必ずや世代を超えて受け継がれていくでしょう」
米中首脳会談に先立って、中国に関する日本側の立場をトランプ大統領に伝えていた高市総理。一連の発言について問われると…。

高市早苗総理大臣
「米中会談についてのお尋ねですが、これは“第三国間のやり取り”で、その逐一について私からコメントすることはありません」
発言狙いと日本への“影響”
トランプ大統領と習主席の一連の発言について、アメリカの外交政策に詳しい、慶應義塾大学の森聡教授に聞きました。

慶應義塾大学 森聡教授
「トランプ氏は中間選挙を控え、中国側による大豆や牛肉の購入などの経済的見返りを求めていて、習主席の気分を良くさせてディールを引き出す“演出”をしようとしたと見ている」
一方の中国は。

慶應義塾大学 森聡教授
「第二次大戦で米中が共に軍国主義の日本と戦ったというナラティブ(物語)は、中国の“常套句”になりつつある。中国側には“米中が仲間で、日本に問題がある”という見方をトランプ氏に刷り込みたい思惑があり、この機会を利用したのではないか」
今後、日本への影響はどの程度あるのでしょうか。
慶應義塾大学 森聡教授
「米中が経済分野で取引し、関係を安定させると、日本にも決して悪いことばかりではない。一方で、台湾への武器売却の先延ばしなど、安全保障分野で、アメリカが中国の要望を受け入れる事態が続くと、中国から台湾の平和と安定を維持するアメリカの意思が弱まっているとみなされ、日本を含むアジアの安全保障に好ましくない影響が出る」
