KIN DA SHER ROCKと聞いて何をイメージするか。2001年に開催された『B-BOY PARK』MCバトルで準優勝を手にしたラッパーか、もしくはミュージックスクールでレジェンド・フリースタイル講師として教壇に立つ姿か、あるいはらーめん店「AFURI」のカップ麺のパッケージに大々的に写っている職人か――。

他にも渋谷「club bar FAMILY」で20年続くイベント『BIG』を主宰する人物であったり、YouTubeチャンネル「ニートtokyo」に出演した際、タトゥーが刻まれた背中を披露し「ポイントはありますか?」の問いに「ないんですよ」と即答した実直な人柄、という複数の候補はあるが、聴く者との距離感によって、その印象は変わるだろう。
齢44。実にキャリアは四半世紀を数える。本来であればその数字に少しぐらいのあぐらをかいても構わないものの、KIN DA SHER ROCKは至って謙虚だ。
その背景をたどると、活動当初から日本語ラップの“シーン”と呼ばれる、いわば昨今の“界隈”的な概念にコンプレックスを抱いていたことに行き着く。
「ラップのスタイルがポップだと笑われたり、たとえ言われなくてもそういう目で見られているんじゃないかという不安があったり、常にウジウジしていたところがありました。
本当は『キャリア25年だぜ!』って堂々と言いたいけど、徐行したり迷走したり寄り道もたくさんした。でも、今が一番ちゃんと前に進めている気がします」
(KIN DA SHER ROCK)
彼が話す“今”を考えるうえで大きな転機となったのは、2021年にリリースしたシングル「アイデンティティ」だ。
同作以降も継続的に作品を発表し、そのセカンド・ヴァースで「ピークはまだこれからかもね」とラップしていたことを思えば、この新作EP『nice party』へと続く現在地をすでに予告していたようにも思える。
そんな今作は沼津出身の気鋭DJ/ビートメイカーのWATMAN BEGINZが全曲を手がけ、KIN DA SHER ROCKの現在の心境に呼応するようなエモーショナルでメロディアスなトラックを紡ぎ出している。
「昔からDJのパーティやイベント、ラッパーやシンガーのライブ、とにかくクラブイベント・カルチャーが大好きだったので、40代になった現在進行形の素直な気持ちをリリックに投影しました。『あの頃はよかったね』もたくさんあるけど、『これからだ』という思いもあります。
自分が年齢を重ねたからなのか、ジャンルやシーンという概念が曖昧になってきた時代性なのか、ようやく最近になって控えめすぎるマインドから解放された気がしてます」
(KIN DA SHER ROCK)
“ピークはこれからだ”と堂々と言える男、もはや「2001年の『B-BOY PARK』MCバトルで準優勝」という聞き慣れた肩書きは不要だ。これまでに複数存在したKIN DA SHER ROCKのイメージを「nice partyな男」へ更新する一作。
自らを縛り上げてきたマインドからの解放を、現在のキャリアだからこそ響かせられる言葉と音楽で堂々と宣言している。
(佐藤公郎)

●作品情報
KIN DA SHER ROCK 『nice party』 (GOLD CHILLIN')
2026.10.2(Fri.)Release
Tracklisting
01.nice partyは続いて
02.I hope
03.on & on to da break down
04.夢の果てなら feat. MEL
05.that’s me
All tracks produced by WATMAN BEGINZ
All lyrics by KIN DA SHER ROCK
track 4 : lyric by KIN DA SHER ROCK, MEL
track 5 : chorus by BAMBOO
Mixed & Mastered by SRAD studio
Jacket design by YOTS
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