
少子化が進む中国では、官民を挙げて「婚活」を推進している。親が子どもの結婚相手を探す「代理婚活」も盛んだが、それでも若者たちが結婚に踏み出せないのは、なぜなのだろうか。
【画像】“婚活ビジネス”悪質業者の一例 同様の経験をした人が100人以上
未来に希望を持てない若者たちが集うという中国版「トー横」とは?
違法業者の摘発強化を発表
中国では婚活ビジネスが活況のなか、悪質業者も登場しているようだ。
中国の地元メディアによると、高層ビルが立ち並ぶ中国南西部の貴州省にある再開発地区には、280社以上の婚活業者が集まっているという。
この場所には他の省から出稼ぎに来ている男性が多く、主にそうした男性と貴州省の女性をマッチングさせているという。中には「最短3日~7日で結婚できます」とうたう業者もいる。
では、業者の紹介で結婚したらどうなるのか。
男性は女性に結納金を払うほか、男性も女性も業者に手数料を支払う。手数料は、男性の場合、お見合いできる人数によって約32万円~約235万円に上るケースもあるという。
江西省出身の男性・Aさんは、お見合いで初めて会った女性と5日後に婚姻届を提出。女性に結納金として約300万円、業者に手数料約170万円を支払ったという。しかし3週間後に女性が消息を絶った。名前以外の情報はすべてうそで、結納金も手数料も戻ってこないという。
Aさんによると、同様の経験をした人が100人以上いるという。
背景には、借金に苦しむ女性が業者と共謀し、結婚と離婚を繰り返すことで、結納金をだまし取る実態があるという。
これに対し、中国当局は7月、調査や違法業者の摘発を強化すると発表した。
「慢就業」が増加
一方で、結婚したくてもできない人が増えている背景には何があるのだろうか。若者の就職難がそもそもの背景にあるという。
中国国家統計局が公表した8月の全国都市部の失業率は5.3%だが、16歳~24歳に限ると18.9%と、現在の集計方法では最も高い水準に並んだ。
失業率が上昇している背景に、中国の産業の変化があるという。
イギリスのガーディアン(7月13日)は、匿名の専門家の話として、今、中国では電気自動車や半導体、ロボットなど、高付加価値を生む先端産業を中心とした成長モデルへ移行していて、大学で学んだスキルと労働市場が求めるスキルの間にミスマッチが生じていると報じた。
また、中国経済の減速が雇用市場をさらに阻害しているという。
かつて中国経済をけん引した不動産業界では、今年の新卒採用求人数は前の年に比べ40%減と縮小傾向。今年度の国家公務員の採用試験の倍率は74倍と、狭き門となっている。
こうした中、厳しい競争を諦めて、卒業後、大学院進学などで就職を延期する「慢就業(まんしゅうぎょう)」が増加しているという。
AIが雇用を阻む?
そして中国政府が導入を進めるAIで、若者の雇用がさらに悪化する可能性もあるという。
中国では、産業の高度化に貢献できる人材を増やすため大学の定員を拡大している。そのため大学卒業者数は、今では10年前の約1.7倍となる1270万人となった。
こうした中、ロイター通信(6月17日)によると、中国政府は、来年までに主要産業でAI導入率を70%まで高めることを目標に掲げている。
米シティグループ(4月16日)は、AIによって代替されるリスクの高い職種は、雇用全体の9.6%に相当する約7000万人と試算している。
「掛壁」とは?
こうした中、未来に希望を持てず、レールから外れてしまった若者たちが集う場所があるという。
そこは、中国南部・広東省広州の繁華街で、夜通し若者たちが集まってくるという。
朝日新聞(9月28日)によると、競争から外れ孤立した若者がSNSを通じて集い、中には市販薬の過剰摂取、いわゆるオーバードーズを繰り返す若者もいて、東京・歌舞伎町の「トー横」に似た状況だという。
こうした若者たちを指す「掛壁」と書いて「コワピー」という言葉がネット上で広がっているという。
サウスチャイナ・モーニングポスト(9月16日)によると、「コワピー」とは、もともとは壁に掛けられたまま使われない物を指す言葉だったが、最低限の収入で生活している若者を表す言葉に変化しているという。
こうした若者たちの行動に対し、中国の最高人民検察院は「少年非行の予防と統制を促進するための検察監督の強化」を打ち出し、「薬物や窃盗など未成年者に関わるあらゆる事件を効率的かつ効果的に処理する」と発表している。
SNSに悲観的、反体制的なコメント急増
一方で、SNSでも希望を持てない若者たちの声が広がっているという。
ニューヨーク・タイムズ(9月7日)によると、中国のソーシャルメディアを調査研究しているグループの調査で、今年に入ってSNS上で、自身や社会に対して悲観的なコメントや反体制的なコメントが急増しているという。
例えば、ホームレスが生き延びる方法を解説する動画に、「2026年の若者にとって必須科目になるだろう」といったコメントがされた。また、「中国共産党は世界最高の政党だ」という投稿のコメント欄には4万件以上も泣き顔のスタンプのコメントが投稿された。
9月18日には対策として、中国でインターネット規制を担当する国家インターネット情報弁公室は、「未成年者の健全かつ安全なインターネット利用を確保するための規則」を発表。策定の理由として、「AIによる仮想の友人や恋人など、ネット依存への対策が必要だ」としている。
どうなる?日中関係
日中関係の改善はあるのだろうか。日本国際貿易促進協会の会長として北京を訪問した岩屋毅前外務大臣は、9月28日の王毅外相との会談に続き、9月29日に何立峰副首相と会談した。
会談後、岩屋前外務大臣は「経済交流、民間交流については中国側は後ろ向きではない、むしろ前向きであると受け止めた」と語った。
(2026年10月1日放送分より)
この記事の画像一覧
